本日は、久しぶりに決算会見なるものに出席。

ネット時代にあって、数字の速報性はだんだん薄れていますが、ライブの持つ一問一答の面白さはやはりあります。


そうは言っても、行く価値のある決算会見とそうでないものがあります。

本日お邪魔した九州のコスモス薬品さんの第二四半期決算報告は、当然前者です。



月刊MD編集長(2代目)のブログ

宇野社長が、あまりマスコミにお出にならないということもあるのですが、今から10年近く前くらいにはじめてインタビューした折、それまでのドラッグストアでは常識であった、


1)営業時間延長

2)ポイント制


このふたつにまったく頼らないで業績は2ケタ増を続けていたところに大変興味を持ちまして、それ以来ずっと注目していたトップです。ドラッグストア業界はけっこう、ユニークなトップが多いのですが、宇野社長はその中でも飛びぬけているのではないかと思います。*つい最近、営業時間は1時間延長しましたが。でもまだまだ余力があります。


数字的なものは、新聞やネットにお任せしますが、この不況期にあって、

「20期連続増収増益」「過去最高益更新」です。


コスモス薬品はいわゆるディスカウント型の食品併設ドラッグストアです。

販管費率を下げ(業界の最高水準)、粗利益率を下げ(稼ぎ頭の医薬品を4ポイント落としました)、低価格を実現し、客数、売上を伸ばしています。*客単価はちょっと下がっています。


「ディスカウント」というと、低価格志向企業とひとくくりにされてしまいがちなのですが、厳密に言えば、「ディスカウント」とは自らの企業努力によって経費構造を下げ、低価格を実現することです。


原価割れによる低価格や、バッタ品回収による低価格や、生産者や中間流通企業が立ち行かなくなるような条件提示による低価格実現では、本来ありません。利益度外視の無理な低価格実現は、企業経営の源泉とも言える従業員、取引先が不幸になります。お客様はもちろんですが、近江商人の「三方よし」がなければ企業は社会的存在意義がありません。


コスモスさんはいろいろ大変な時期もあったと思いますが、正統派のディスカウント志向企業として徐々に体制を整えてきたと思います。


それでも「デフレ経済」下の勝ち組と言われ、いろいろなところから羨望と嫉妬のまなざしで見られるのですが、宇野社長は冷静です。


「買い控え疲れという言葉が出てきて、個人消費が上向きになりつつあるといわれていますが、それは一部の余裕のあるご家庭ではそうなんでしょうね」(宇野社長)。


厚生労働省の生活基礎調査(2009)によれば、

2010年の世帯所得平均は、530万円(世帯数4800万、世帯人数2.6人)となっており、1994年の664万円をピークに減少を続けています。


ちなみに、同調査による世帯所得構成比は、

200万未満は19%(910万世帯)

200-400万は27%(1300万世帯)

400-600万は19%(910万世帯)

600-800万は13%(580万世帯)

800-1000万は12%(580万世帯)

1100万円以上は10%(480万世帯)


です。年収400万未満の世帯は約46%の構成比になっています。これは近々50%を超えてきます。(吉田繁治氏のメルマガより)


小売業は、地域のお客様の「生活貢献」業とすれば、この現実から目をそらすことはできません。

もちろん、企業によっては、800万円以上の世帯に向けた生活貢献を志向するでしょう。それは企業の選択です。*年収でライフスタイルを類型化することはナンセンスですが・・。


「デフレを増長する低価格志向企業が跋扈するのがいけない」というアホなコメンテーターがいますが、大かたが既得権益の中で企業努力することもなく高コスト体質維持に努め、高い商品を売るのが仕事だった政府系企業か大企業の御用コメンテーターです。


ところでコスモス薬品の最大の競争力、企業としての武器はなんでしょうか?


「圧倒的な経費構造の低さによる低価格の実現」?


わたしもそう思っていました。これはウォルマート創業者のサムウォルトンの方法です。でもそれはツールのひとつにすぎないようです。


きょう、宇野社長は明言していました。


「自社競合(カニバリズム)を厭わない、高密ドミナントによるシェアの獲得を最優先する」だそうです。


実に恐ろしいほどの冷徹な戦略です。ランチェスターを地でいっています。

既存業界のなれ合い秩序など眼中になく、わが道を行っていますね。

九州地区326店舗の医薬品化粧品平均シェアは現在40%くらいになるそうです。


ではコスモスさんに対抗する方法はないのか?もちろんあります。

米国でウォルマートの隣で営業していても業績の伸びている企業はたくさんあるように。


コスモスさんが貢献していない、しきれていない生活領域はたくさんあります。同じ土俵で戦うから負けるわけです。


地域生産者とがっちり組んだ生鮮三品が強みのディスカウント企業の熊本のロッキーさん、調剤を武器に健康管理サービスを実践している北九州のサンキューさん、これらは、その代表でしょう。


コスモスさんだって、いまの形はおそらく「他企業と異なる価値の追求」を徹底化させたものにすぎません。


自転車のあさひの下田社長もおっしゃっていました。


ある商店街で、おもちゃ屋を最初開き、お客様はまったくこなかったそうです。すぐそばに躍進真っ只中のダイエーがあり、そこでおもちゃを持ってにこにこ帰る親子の姿を見るにつけ、悔しくてたまらなかったそうです。自分はどうすれば、お客様の生活に貢献できるのか、本気で考えなければ生き残れないと。


だから、下田社長も宇野社長も「客数=顧客支持」をなにより大事にしています。


そして、お二人の企業に共通する最大の武器は、


「徹底することで卓越する」


ということではないかと思います。ブレない経営者はほんとうに強いです。