整体はスポーツ少年少女たちからお年寄りまでたくさんの人が集まります。
ドラッグストアでも整骨院を店舗内に導入しているところがあります。
左が整骨院で右が調剤薬局です。お年寄りの方が、薬を待つ間などにも利用できますね。
この店舗は北九州で高密なドミナントを築いているサンキュードラッグさんです。
サンキューさんは、地域のかかりつけ薬局として、将来的には半径500メートル以内に店舗を配し、お年寄りの方々が歩ける範囲で商品、サービス提供しようと考えています。
ドミナントとはチェーン戦略の基本のひとつで、同一エリアに複数店舗をつくって地域のカテゴリーあたり消費支出シェアを高める戦略です。サンキューさんは薬局なので、一世帯が年間につかう医薬品と化粧品支出のシェアを主としてとろうというものです。地域性はありますが、家計調査年報ベースでは、医薬品化粧品で一世帯年間10万円、調剤を入れるとさらに倍の20万円です。これを深掘りするわけです。
そのためには店舗の必要商圏人口を小さくし、なおかつ客数(来店頻度=リピーター)を増やす商品構成が必要です。
生活必需品の中で、もっとも購買頻度の高い商品は食品ですが、ドラッグストアの中でも、食品を強化することで客数を増やす方法をとる企業もありますが、サンキューさんは、調剤と健康関連サービスを付加することによって、既存の医薬品、化粧品、日用品プラス加工食品(*生鮮食品はありません)を扱っているドラッグストア店舗よりも、来店動機、購買頻度を増やそうとしています。
とくに今後は「調剤」におけるリピーターが見込まれます。糖尿病、高脂血症などの慢性疾患患者さんは繰り返し来店し、その都度生活必需品を買っていきます。ドラッグストアではこれまで食品で人を誘って、粗利の高い医薬化粧品を売るという方法が主流でしたが、「調剤」が客数をけん引する可能性が高まっています。
整骨院のほか、管理栄養士さんによる食事指導と健康管理サービスも開始して、人気を集めています。「スマイルクラブ」といって5店舗で導入しています。
ドラッグストアの来店目的は「健康で快適な生活維持」のための「予防」「初期治療」ですから、それにかかわるサービスをいかにうまく取り入れていくかということが、今後の企業戦略になっていきます。快適で健康な生活ができれば当然「ビューティ」への関心も高まります。
サンキューさんにかかわらず、地域の医療機関や介護施設と連携して、在宅医療サポートを新たなビジネスモデルとして考えているドラッグストア企業が増えています。そのためには「かかりつけ薬局」の中核を担う薬剤師さんの職能開発も重要です。
サンキュードラッグの平野健二社長は、業界でも数少ない次世代ドラッグストア経営モデルを提示、実践している人です。地域医療貢献のために、薬剤師が単なる処方箋処理屋さんではなく、たとえばアメリカのようにインフルエンザのワクチンを打ち、医師と連携して患者の在宅時の投薬状況モニタリングができる環境をいかにつくりだすか。その実現に心血を注いでいます。わたしもいつも勉強させていただいているのですが、平野社長の言葉で一番好きなのは、
「多店舗であることが顧客にとって個店に勝る価値を提供しなければチェーンの意味がない」という言葉です。
これからますます高齢化社会になる中で、地方では買い物難民と言われる人たちも出現しています。そういう状況の中で、ちかくに健康生活をサポートしてくれる店舗があると心強いでしょう。また安心して買える商品、サービスの提供、価格の安さなどなど・・チェーンはそのために継続的な活動を可能にするビジネスモデルを作り出さねばならないのです。
もちろん、逆も真なりです。
「個店であることが顧客にとって多店舗に勝る価値を提供しなければ個店の意味がない」。
チェーン店舗だろうが個店であろうが、自分たちが地域顧客の生活にどんな貢献をしたいのか。それが目的である限り、双方はともに社会にとって欠くべからざる店舗たりえるのです。
ときどき、チェーン店舗あるいは個店のどちらかに拠って立って一方を非難する類の人がいますが、次元の低い話ですね。
月刊MDで平野社長の連載を行っていますが、薬学の先生方にも大変好評です。春先に単行本としてまとめる予定です。