■危うい安保論の拡大

 核兵器を持つことで敵国に攻撃を思いとどまらせる核抑止は、核開発の口実になっている。抑止論は核兵器廃絶の障害だ。

 核抑止に依存する安全保障は危ういバランスで成り立っている。永続する保証はない。だが核を容認する風潮は、その脅威を最もよく知る日本も無縁ではない。

 長崎市の田中安次郎さん(84)は最近、修学旅行生に被爆体験を語った時にショックを受けた。生徒に「日本も原爆を持たないと負ける」と言われたのだ。

 田中重光さんも中学生に「核を持たないで日本を守れますか」と問われた。「子どもたちは純粋。世の風潮に敏感だ」。危機感を覚えざるを得ない。

 折しも小泉進次郎防衛相は核政策について「タブーなく議論をしなければ、もはやどの国も一国で安全保障を確立することはできない」と述べた。被爆者団体が抗議の声を上げたのは当然だ。

 高市早苗首相は6日、非核三原則を将来も堅持すると明言しなかった。被爆国・日本の核政策が揺らいでいないか。

 核兵器がもたらすのは安全や平和ではない。破滅である。

 核のタブーは「核兵器を二度と使ってはならない」という国際的規範として定着している。被爆者の訴えによる成果であり、被団協はノーベル平和賞を受賞した。

 原点は広島、長崎の惨禍だ。81年前のきょう、長崎の街は焼き尽くされ、市民は命と家族、未来を奪われた。惨状を前に「二度と過ちを繰り返さない」と誓ったことを忘れてはならない。

 核廃絶を訴える役割を担うのは被爆者だけではない。被爆体験は次世代に受け継がれている。長崎平和推進協会の学生会員は100人を超えた。希望の芽を社会全体で育て、活動の輪を広げたい。

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