アメリカは2日、米兵3人が死亡した先月のヨルダンの米軍基地攻撃への報復として、シリアとイラン領内にあるイラン関連の85以上の標的への攻撃を実施した。 アメリカ中央軍(CENTCOM)は、イラン革命防衛隊(IRGC)の精鋭部隊「コッズ部隊」や関連する民兵組織を標的にした空爆を行ったと発表した。

 

 ジョー・バイデン米大統領は声明で、「我々の対応はきょう始まった。今後も、我々が選ぶ時期と場所で継続する」と述べた。 この攻撃は、1月28日にシリアとの国境に近いヨルダン北東部の米軍基地「タワー22」がドローン(無人機)攻撃を受け、米兵3人が殺害され、41人が負傷したことへの報復。 ジョー・バイデン米大統領は、「イランの支援を受ける過激派武装グループ」の攻撃だとし、「報復する」と宣言。「アメリカが選ぶ時期と方法で、すべての責任者に責任を取らせる」としていた。 タワー22への攻撃は、「イラクのイスラム抵抗勢力」が実行を主張している。このグループは、イラン革命防衛隊(IRGC)から武器や資金、訓練を提供されている複数の武装勢力で構成されているとされる。 イランは一切の関与を否定している。

 

 ■アメリカから飛来の長距離爆撃機、標的を攻撃 CENTCOMによると、IRGCの精鋭部隊「コッズ部隊」や関連する民兵組織への空爆は、米国東部標準時2日午後4時(日本時間3日午前6時)に始まった。 アメリカから飛来した長距離爆撃機を含む多数の航空機を投入し、85以上の標的に対して125発以上の精密弾を発射したという。 標的には指揮統制施設や情報活動施設、ロケット弾、ミサイル、ドローン保管庫、民兵組織の兵站(へいたん)・弾薬の供給関連施設などが含まれるという。

 

 ■B1戦略爆撃機を投入 今回の攻撃にはB1戦略爆撃機が投入された。アメリカを出発し、空中給油を受けて現地へ向かった。 攻撃の具体的な詳細は不明だが、この爆撃機が使用されたことは分かっている。 南カリフォルニア大学のバーバラ・スター上級フェローはBBCに対し、B1爆撃機の使用はアメリカの「大陸間距離における殺傷力」を示すものだと語った。

 

 ■30分間で7つの場所を攻撃 米政府関係者は、空爆が成功したと考えるものの、被害状況についてはまだ調査中だとしている。 シリアで4つ、イランで3つ、計7つの場所を攻撃したという。これらの場所にはIRGCの支援を受ける組織を含む、85の個別の標的があったという。 アメリカはイランとの紛争そのものを求めているわけではないと繰り返し主張している。米政府関係者は、2日の攻撃の目的はIRGCらの軍事能力を低下させ、この地域の米軍基地への攻撃に終止符を打つことだとしている。 この日の攻撃に加わった米軍機はすべて、いまは安全な場所へ逃れているという。 アメリカは30分強の間に125発もの精密弾を使用した。 米政府高官の1人は、「攻撃は今夜終わるわけではない」と付け加えた。

 

 米国防総省のダグラス・シムズ統合幕僚監部作戦部長は、イラクとシリアでの報復攻撃について記者団に説明。当日の天候が攻撃を可能にしたことを明らかにした。 シムズ氏は、ここ数日は曇り空が続き、攻撃を実施するには難しい状況だったが、2日にはそれが一変したと語った。 また、「きょう攻撃した標的について、我々は非常に自信を持っている」と付け加えた。 シムズ氏は、アメリカは自分たちが攻撃した場所は、「(相手の)能力を低下させるうえでかなり重要な」場所だと「相当な確信を持っている」と述べた。 そして、「明日になれば(被害状況について)もっとよくわかるはずだ」と付け加えた。 

 

■「アメリカ人に危害を加えれば対応する」 バイデン米大統領は2日、報復攻撃について声明を発表した。 「本日午後、私の指示により、IRGCと関連する民兵が米軍を攻撃するために使用しているイラクとシリアの複数施設を、米軍が攻撃した」 さらに、声明発表の前に「これらの勇敢なアメリカ人の威厳ある帰還」に立ち会い、彼らの家族と話をしたとも付け加えた。 「我々の対応はきょう始まった。今後も、我々が選ぶ時期と場所で継続する」 バイデン氏は、アメリカは「中東あるいは世界中のどこにも紛争を求めてはいない」としつつ、次のように警告した。 「我々に危害を加えようとしているかもしれない、全員に知らせておく。アメリカ人に危害を加えれば、我々はそれに対応する」

 

 ■アメリカとイラン、「連絡とっていない」 米ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は、2日の攻撃は「一連の対応の最初の段階にすぎない」と述べた。 また、1月28日にヨルダンの米軍基地が攻撃を受けたことに触れ、「3人の兵士が死亡したあの攻撃以来、イランと連絡は取っていない」とした。 2日の標的については、民間人の犠牲を避けるため、そして「同地域の米軍関係者への攻撃に関連しているという、反論の余地のない明確な証拠に基づいて」選ばれたものだと強調した。

 

 ■米下院議長、バイデン氏の対応を批判 米下院のマイク・ジョンソン議長(共和党)は、「バイデン政権は、イランに対する宥和(ゆうわ)戦略が国際社会にとって悲惨なものだったと認めるのが、あまりに遅すぎた」と述べた。 そして、ヨルダンでの米兵の悲劇的な死には「明確で力強い対応が必要だった」とした。 ジョンソン下院議長は、バイデン政権は「1週間も保留にしてから、イランを含む世界に対し、我々の対応の本質を知らせた」と批判した。 ホワイトハウスは、報復の時期が遅れたのは悪天候だったからだとし、政権の対応を擁護している。 

 

(英語記事 US strikes Iran-linked targets in Iraq and Syria)