京都御苑内にある皇宮警察本部の京都護衛署。京都御所など皇室関連施設の警備を担う=京都市上京区
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京都御所を警備する皇宮護衛官=京都市上京区
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今春、騒動が相次いだ京都御所
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ドローンの無許可飛行に爆破予告-。今春、京都市上京区の京都御所で騒動が相次いだ。ドローン無許可飛行はサクラの撮影目的、爆破予告は虚偽電話で、結果的に被害はなかったが、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を間近に控えていたタイミングだっただけに、テロの警戒を強化していた警察当局の動きはすばやかった。実は御所を含む京都御苑は京都府警の管轄だが、御所の警備を担っているのは「皇宮警察」だ。今回の騒動でも府警の警察官だけでなく、皇宮護衛官も出動、連携して対処にあたった。知られざる皇宮警察の全貌とは。


中国人留学生がドローン無許可飛行  「サクラを撮影するために飛ばした」
3月30日、京都御所の直近で小型無人機「ドローン」を無許可で飛行させたとして、府警が4月27日に航空法違反で書類送検した中国人留学生の私立大1年の男子学生は、調べに対しこう説明した。当時、京都御苑内にある公園のサクラが見頃を迎え、多くの花見客らでにぎわっていた。


京都市内でドローンの飛行が可能な場所はほとんどなく、御苑内ももちろん飛行禁止だった。しかし、交際相手の女性と訪れていた男子学生は、サクラを上空から撮影しようと、持ち込んだドローンの飛行を始めたという。京都御所の上空を飛行させることこそなかったが、男子学生は花見客らがたくさんいた公園の上空を約2分間、飛行させた。この模様を目撃していたのが皇宮警察の皇宮護衛官だった。


御所に設置された防犯カメラで警戒中だった皇宮護衛官は、男子学生がドローンのリモコンを手に飛行させる様子を確認。すぐに出動して男子学生をその場に引き留め、皇宮警察からの連絡を受けた上京署員に引き渡した。ドローンは縦約30センチ、横約30センチで総重量約1・4キロ、カメラ付きの中国製。幸い事故はなく、無事に着陸させたが、もし途中で墜落していれば大きな被害が出る恐れもあった。男子学生は調べに対し「危ないと分かっていた」などと素直に答えた。


男子学生は昨秋に私立大に入学。今年に入って一時帰国した際に中国でドローンを購入した。3月17日に再入国し、嵐山(京都市右京区)や哲学の道(同市左京区)といったサクラの名所で複回飛行させたと説明した。 法令を無視した身勝手な犯行。府警は書類送検に際して「厳重処分」の意見を付けた。


爆破予告「思想的な背景は…」 「イスラム教徒の者なんですけど…」
ドローン騒動から1カ月余りが過ぎた5月11日朝、京都府警に1本の110番があった。イスラム教徒を名乗る男は続けて「今から御所に爆弾落とすんで。仕掛けたんで」などと告げ、電話を切った。京都御所を狙った爆破予告の電話だった。世界各地で凶悪な爆破テロが相次いでおり、事実であれば非常事態だ。ただ、内容的にいたずらの可能性が濃厚だった。


110番は公衆電話からかけられており、場所はすぐに判明した。近くの交番の警察官が駆けつけたところ、電話ボックスの脇に隠れていた京都市東山区の韓国籍で無職の男を発見。男は約300メートル走って逃げたが、警察官が追いかけて身柄を確保し、偽計業務妨害容疑で逮捕した。 男は調べに対し「爆弾はない」と供述したが、すでに府警の警察官や皇宮護衛官も出動、御所や周辺の捜索を実施してた。不審物は発見されなかっついて、京都府警幹部は「おそらくイスラム教徒ではない。何か政治的、思想的な背景がある事件でもなかった」と話す。「しっかり反省はしていた」という。

京都地検は6月2日男を不起訴処分にした。理由は明らかにしていない。


護衛署は全国4カ所に
2つの騒動で出動した皇宮警察とは、どんな組織なのか。皇宮警察本部は、天皇皇后両陛下や皇族各殿下の護衛のほか、皇居(東京)や京都御所など各地の皇室関連施設の警備などを専門に行う組織だ。明治19年、宮内省(当時)に皇宮警察署として誕生し、旧警察法の施行などによる変遷を経た後、昭和29年、新警察法制定に伴い警察庁の附属機関となり、現在の形になった。

警察署に当たる護衛署は東京の皇居内(吹上、坂下)と赤坂、そして京都の4カ所に置かれている。京都護衛署は、京都御苑内にあり、京都御所のほか、桂離宮や修学院離宮、正倉院などの警備を担当。火災に備えて消防訓練も行っている。勤務する皇宮護衛官は、皇族の護衛や皇室関連施設の警備を行う国家公務員。警察官と同様に刑事訴訟法の定める職務に従事できる特別司法警察職員だ。

京都御所殺人事件?

京都御所のある京都市上京区を管轄しているのは、京都府警上京署で、京都御苑内も同署の管轄。皇宮警察は御苑内の京都御所などの関連施設のみを管轄している。皇宮警察は基本的には警備を担当するが、例えば、京都御所の中で犯罪が起きた場合、逮捕などの事件処理をすることもある。事件の状況によっては、府警と合同で処理する可能性もあるといい、実際はケース・バイ・ケースで対応することになる。

皇宮警察は御苑内のパトロールも行っており、明らかな犯罪行為が目の前で発生すれば対応する。平成25年には、上京署と京都護衛署が連携し、京都御苑に逃げ込んだ容疑者の男をスピード逮捕したこともあった。

当時、女子大学生を狙った強制わいせつ事件が発生し、容疑者の男が京都御苑に逃走したため、上京署が同護衛署に連絡。すると、御苑内を巡回していた護衛署のパトカーが、容疑者と特徴の似た男がベンチで横になっているのを発見し、男をその場にとどめ、上京署に連絡、駆けつけた署員に身柄を引き渡した。上京署は後日、犯人逮捕に貢献したとして、関係した皇宮護衛官に感謝状を贈った。


連携強化へ

今回の騒動は、5月26、27両日に行われた伊勢志摩サミットの直前というタイミングで起こった。全国各地では警備体制が強化されていた。皇室関連施設であり、多くの観光客が訪れる京都御所の警戒も当然強化されており、府警と皇宮警察が連携を図りつつ対処した。

京都御所では今後、通年で一般公開が行われる予定だ。事前予約の必要性もなくなり、多くの観光客が訪れることが見込まれる。テロを警戒する警備の重要性も飛躍的に高まる。上京署は26年から、皇宮警察や地元自治会などで構成するテロ対策のネットワークを組織し、有事の際に速やかな対応をとれる体制をつくった。今回の騒動を踏まえ、さらに連携を強化するため、今年中の皇宮警察などとの合同訓練実施に向けて調整している。


http://www.sankei.com/west/news/160719/wst1607190002-n1.html



 
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