七戸ときどきラスベガス -25ページ目

七戸ときどきラスベガス

徒然なるままに…危険思想

丁度、ダニイル・トリフォノフやカティア・ブニアティシュビなどの若手ピアニストがそうなのだが、典型的なロシアン・スクールを受け継いだ、現代では最高峰と呼ばれるピアニスト。まず驚くことに彼らの爪が結構伸びている、ということと、真っ直ぐに伸ばした指で、指の腹でピアノを弾いているということである。

 

ドイツ発祥のピアノ教育が主である我が国日本では、どのピアノ教師も口を揃えて、“指の先で、手は丸めるように”という指導をする。確かに、古典派の楽曲では、手を丸めた奏法であるほうが、ピアノの前身の楽器に似た音色を得ることができるのだが、その奏法がすべての時代の楽曲において求められる音色を出してくれるかどうか、は疑問なのである。

 

東京の音大を卒業した後テキサスに留学し、最初についた先生がロシア人のヴラディーミル・ヴィアルド先生であった。先生はモスクワ音楽院でレフ・ナウーモフに師事し、コンクールでプライズ・ウィナーになった後、米国に移住している。先生が仰るには、手を丸めて指の先で演奏するは、音量にも音色にも限界があり、指を伸ばして演奏することでありとあらゆる表現が可能となるということであった。

 

20年も訓練してきたことを、今まで信じてそして身につけてきたピアノ奏法を否定し、その上真逆なことを身につけていく、ということは大変な困難であった。40過ぎた今でも、その新しい奏法が完璧に身についているか、といえばそういう訳ではない。

 

欧米に行けば、その時代に応じたアップデートされた情報・知識が身につく。ピアノ奏法のことも含めて音楽の分野では早期留学が勧められているのはこういう理由から、なのである。