建築と伝道 | 理想の住宅は閑静な一戸建て

理想の住宅は閑静な一戸建て

憧れる一戸建てで生活

旧城下町時代の面影を留める湖畔の町、近江八幡は人ロ六千人ほどの地味で多分に保守的な町だった。

しかし二十四歳の青年ヴォーリズはまたたく間に学生たちを持ち前のキャラクターで魅了したのである。

彼の住まいでのバイブルクラス(聖書研究会)には、最初の一週で四十五人、二週目には百十二人の学生が集まり、やがて三百人を数えたという。

ヴォーリズは写真や本を頼りに、身ぶり手ぶりで福音を説き、アリゾナの自然、コロラド大学の生活、健全な生活、高い理想・合理主義とアメリカの文明を語った。

そしてあるときには兄弟のように、学生とテニスに熱中し、音楽を楽しみ、ゲームに興じたという。

そのバイブルクラスはYMCA活動として結実し、そのための入幡YMCA会館を計画し、設計をヴォーリズ自身が暗中模索で仕上げ、建物は明治四十年に建った。

ここでこの出来ばえを論じようとするのではない。

必要に迫られて、建築の設計図なるものを初めて描いてしまったのであり、結果として素人建築家ヴォーリズの誕生となったのである。