※前回の続きです

 

夫の口から出てきた言葉。

「何もしてない」

その一言を、
私は必死に信じようとしていました。

信じたかった。

 

ここで全部を疑ってしまったら、
今までの16年が、

全部嘘みたいに感じてしまうから。


でも、

頭では分かっているのに、
心が追いつかない。

「ホテルに呼んだ」
「女の子とやり取りしていた」

その事実だけで、

もう十分すぎるくらい、
現実は重かった。


夫は言いました。

「本当に何もしてない」

その顔は、

開き直っているわけでもなく、
かといって誠実にも見えない、

どこか逃げているような顔でした。


私は、

何を信じればいいのか、
分からなくなっていました。

言葉なのか、
行動なのか、

それとも、

今まで一緒に過ごしてきた時間なのか。


「ねえ、本当に?」

何度も同じことを聞いてしまう。

自分でも、
しつこいと思いながら。

でも、

聞かずにはいられなかった。


そのたびに夫は、

「何もしてないって言ってるじゃん」

少しイラついたように、
そう返してくる。


(なんでそんな言い方するの?)

(私はただ、確かめたいだけなのに)


この時、
はっきり分かりました。

もう、

“同じ気持ちの夫婦”じゃない。


私はこんなに苦しいのに、
夫はどこか他人事で、

温度がまったく違う。


そして、

ふと頭をよぎりました。

(この人、まだ何か隠してる…?)


信じたい気持ちと、

疑ってしまう気持ちが、

頭の中でぐちゃぐちゃに絡まって、

息が苦しくなる。


このあと、

私はさらに踏み込んで聞くことになります。

もう、

引き返せないところまで来ていました。