終電を逃して歩いて帰った時のこと。


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コンビニ前で中東の人であろうおじいちゃんが立っていた。


俺が通り過ぎようとすると、


突然おじいちゃんが会釈をしてきた。


確実に知り合いじゃないんやけど、無視するのもなんやし俺も軽く笑顔で返す。


すると


そのおじいちゃんがカタコトで話しかけてきた。




「モモ買わない?」


おじいちゃんは手元にコンビニの袋っぽいものを持っている。おそらく中にモモが入ってるんだろう。


俺が「いらない」とだけ伝えて歩き出すと、


おじいちゃんも歩いてついてきた。



これはめんどくさいパターンやぞ。

海外でも国内でも一言でも言葉を交わすと途端にオーマイフレンド!みたいなテンションになるヤツがいる。


このおじいちゃんもそーゆーヤツだと直感で思った。



案の定、


マイフレンドテンションで話しかけてくる。

おそらく他の通行人に無視ばっかされたから俺から返答があって嬉しかったんだろう。


「良いモモをみんなに知って欲しいんダヨ。これおいしいヨ」



確実にあやしい。

路上で深夜におじいちゃんがモモを売る意味がわからない。


俺はモモが嫌いだというわかりやすいウソをついて逃げようとするも食い下がる。


「果物で何がスキ?」



「梨かな」



「そーだヨーこれは梨みたいなモモだヨー」


すごいセールストーク。
ってかまずモモ嫌いって言ってるやん。俺の話も聞いてよ、だんなさん。



「女の人はスキ?」



「そりゃまぁ男やからな」



「オーマイガーこれはお尻みたいなモモだヨー」


いやいやそんなんおじいちゃんのさじ加減一つやんけ。

まず何歳くらいのお尻やねん。赤ちゃんと大人やったら天地の差があるぞ。



買う気はないが値段を聞くと、



「500円」


と微妙なボッタクリ感。


値段を聞かれて俺が買うかどうか悩んでると勘違いしたらしく怒涛の勢いで攻めてくる。


「モモ買ってくれたらボクはハッピーだヨーオッパッピーだヨー」


買っても買わんくてもおじいちゃんの頭の中はオッパッピーやん。



「モモを食べたらお肌がモモになるヨー」


そんなん嫌やし。

人間の肌が一番良いし。



「500円で今度の競馬で当てちゃうヨー」


もうすでに話がモモと関係ない。

思いっきりぶっちゃけトーク始めてるやん。




そんな会話をしている間に




俺は衝撃的なことに気づいた。





それは






おじいちゃんが手に持っているのが







モモではなくて







どう見ても








リンゴであること。



そこ一番大切やろおじいちゃん。



しかし俺は冷静にスルー。


ツッコミをいれたらまた同じようなアップルトークが始まるかもしれない。

「これは梨みたいなリンゴだヨー」と言い出すかもしれない。

モモでもリンゴでも俺の知ったこっちゃない。


俺がどうふりきるか考えてる時に、おじいちゃんが最後のヒトオシをしてきた。



「200円でどう?」


正直全くいらんけど


おじいちゃんも馬券買えてオッパッピー

俺も会話から逃げれてオッパッピー


それなら200円くらいいいかと思い、

払おうとする俺。





しかし、





そこで最大のハプニング。




おじいちゃんリンゴを握りながら力説するもんやから





リンゴに指がめりこんでグチャグチャ。









やってしまった感が思いっきり顔に出てるおじいちゃんが最後に一言。











「100円でどう?」





どんだけ競馬行きたいねん!