”朝日新聞”より↓
http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000841208030001
先見えぬ不安と負担と
放射線への不安から、福島県内に夫を残して県外に避難する「母子避難」。二重生活の経済負担は重く、精神的にも先が見えない不安を感じている――。朝日新聞が実施したアンケートから、そんな生活の一端が明らかになった(7月23日付朝刊一面)。避難時期や子どもの年齢からは「子どもを守りたい」という気持ちが数字に表れていた。
●「子を守る」切実な思い
「避難した時期」は東日本大震災が起きた昨年3月が41人。4月~6月は10人台だったが、夏休みの7月は38人と急増し、8月は45人、9月も22人と続いた。1学期の間に夫と相談し、準備を整えてから、夏休みを機に避難したことがうかがえる。
○未就学児多く
避難した子どもは、0~5歳の未就学児が多かった。小学生低学年でやや少なく、高学年でさらに少なくなり、中学生からは目立って少なくなる。
小さい子をもつ親ほど不安を感じていることや、転校を伴わないことが理由のようだ。福島市から山形県米沢市に避難している母親(43)は次男(11)、長女(6)と一緒だが、高校3年の長男(18)は夫と福島市に残る道を選んだ。母親は「県立高への編入は無理だし、本人も新しい土地で人間関係を作っていける気がしない、と言って避難を拒んだ」。結果として、家族が県内外に分断された。
郡山市から秋田市に長女(12)、長男(9)と避難している母親(41)は「習い事、部活、友人関係……。子どもなりに積み上げてきたものがある」。避難した当初は自らの判断がよかったのかどうか、気持ちが揺らいだという。
ただ、避難時に小学6年生だった長女も新しい環境に慣れ、秋田市の中学に進学し、新しい環境になじんでいる。
○一時金あれば
「福島に戻るとしたら心配なこと」を聞いた。「子どもの学校の問題」を挙げたのが125人、「子どもの友人関係」113人、子どもをめぐる環境についての心配ごとが回答の多くを占めた。
「二重生活による経済的負担」は月7~10万円が63人、5~7万円が60人で、合わせると半数以上を占める。なかでも負担が重いのは、夫や家族と会うための「福島との交通費」で、110人が回答した。
「改善が必要なこと」(複数回答)でもっとも多かったのは「生活一時金の支給」。148件が回答した。次いで「子供の教育・保育への支援」が124件、子どもが父親や祖父母と会うための「福島県との往復交通費」も101件に上っている。
◆キーマーク:母子避難アンケート
避難者の交流グルーブや支援団体を通じて6月以降に調査票を配布。222人の母親から有効回答を得た。避難先は19都道県に及んだ。山形県内からは「通勤できるため、夫も一緒」という回答も多く、参考にとどめ、集計には加えなかった。主な回答は7月23日付朝刊一面で紹介。28日付朝刊オピニオン面の耕論で「母子避難と向き合う」を掲載した。
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◎自由記述欄より
アンケートでは、訴えたいことを書いてもらう「自由記述」欄も設けた。
■怒りと不信
「後から後から『本当はこうだった』という情報ばかりで、うんざり」
「何が、どれが本当なのですか?」
もっとも多かったのは、政府の情報隠しや公表遅れに対する怒り、政策に対する不信の声だった。
「まさかここまで人間の命が軽く扱われるとは。経済活動のためには命など紙くず同然」。福島市から山形県川西町に避難した45歳は憤る。
関西電力大飯原発の再稼働には「信じられない」「とんでもない」の文字が並んだ。
■不安と悩み
将来への健康不安から、長期間の健康診断や甲状腺検査を求める記述も多かった。
「安住の地をまだ模索中。また引っ越しするにしろ子供の転校があり、子供が精神的にダメージを受けないか心配になります」。福島市から山形県米沢市に避難する39歳は、そう訴えた。
「強く願っていた2人目(の子)の夢を諦めようか悩んでいます」。妊娠・出産をあきらめる声もあった。「今は子供を授かる余裕などありません。避難者にも産める環境を整えて欲しい」と悔しがった。
■悲しみと嘆き
県内外に自主避難する母子への批判に、やりきれなさを感じている声も少なくない。
「避難者を理解してくれとは思わない。ただ事故の怒りを避難者に向けないでほしい」。肩身が狭い思いをしている様子がうかがえる。
「家族はバラバラの生活で、時々会いに来てくれる家族が帰る時、泣きながら追いかける娘の姿を見て、家族は一緒にいないといけないと強く感じました」。そう書いた母親(42)は来年、福島県内に戻ることにした。自宅はまだ全住民が避難している地域だ。「不安でいっぱいです。でも家族一緒なら大丈夫と信じて……」
別の母親(33)は「昨年から七夕の子供の願いは『放射能がなくなり、早くお父さんとおうちでくらせますように』です」と書いた。
■要望
除染、長期間にわたる健康診断や、高速道路無料化などの要望が多く、仙台市に避難する母親からは借り上げ住宅制度を求める声が多かった。
「避難したくても、仕事や金銭的な問題など事情があってできない人も多い」。ある母親は福島県内に残る母親や子どもたちを案じ、週末保養をはじめ精神的ストレスの軽減策、避難しやすい環境整備を求めた。