1年たった。ある午後僕は学校が終わっておばあちゃんの家に帰った。1個買えばもう1個は無料のカレーを食べながら、おばあちゃんの冗談を聞いていると、電話が鳴ったんだ。僕の事務所からで、7時までにロンドン・パレイディアム劇場まで来れないかというものだった。オリバー役の子が病気で、もう1人のオリバー(2つのグループがあるって言ったよね)はウェールズに住んでいるからその時間までには来れない。今夜だけオリバー役をやってくれないか?
もう1年もやっていなかったし、大人のキャストも皆新しい人たちばかりだった。でもそんなの大した問題じゃない!
僕が中心部に急いで、新しいフェギンのロバート・リンゼイといる間、本部は開演を15分遅らせた。新しいArtful Dodgerとはステージに出る前には2言くらいしか言葉を交わさなかった。1年以上オリバーの曲を歌っていなかった11歳の僕は、舞台袖でめちゃくちゃ緊張していた。でもステージに一歩出た瞬間、すべてが戻ってきたんだ。自分が大好きなことをやれて素敵な夜を過ごせたし、公演もうまくいった。
1週間後、同じことが起きた。この時はウェールズのオリバーが電車の遅延に巻き込まれて、もう1人のオリバーがまだ具合が悪かった。同じ行動をとって、また舞台にあがったよ。
その翌日、また3か月の公演に出てみないかと誘われて、僕はチャンスに飛び跳ねて喜んだ。2回目だったけれど、同じじゃなかった。1年前のときほどほかのキャストとうまくやれなかったんだ。ロバート・リンゼイの場所はBarry Humphriesになっていて、Dame Ednaはジムやロバートみたいに子どもたちと心が通いあっていなかったと思う。ショーが終わっても、最初のときみたいには誰もまだまだやりたい、って気持ちじゃなかった。絆がある人たちに囲まれる大切さと、仕事に没頭できるかどうかということを学んだね。でも、たいていは魔法のような時間を再現しようとしても、解けてしまった魔法を見つけるくらい無理なことなんだってわかったよ。
今でも自分がプロとして舞台に挑んだと思ってるよ。たぶんプロ意識強すぎたな。オリバー役をやるときは、第1幕から途中休憩までステージに出ずっぱりなんだ。ある夜、急ぎすぎて開幕前にトイレに行くのを忘れちゃったんだ。最初の曲が終わる前からオシッコに行きたくて。でももう戻るには遅かった。
我慢して、我慢したよ。でも第1幕は長いんだ。ちょっとでも隠れられるならステージでさっさとおしっこしちゃおうかとまで考えたよ。たぶん2分あればMr Sowerberryの柩の中にオシッコできた。でも僕は信じられないくらい優柔不断だから、考えてるうちにチャンスが終わってた。苦しかった。苦しかったよ!
どうやって“Where is
Love?”を歌って”Consider Yourself”が流れてる間ダンスできたんだろう。ナンシーがフェギンの隠れ家にやってきて”I’d Do Anything”を歌うまで1時間だ。もう僕は何だってできる状態になってた。その曲の最中にはステージの横に立ってアクションを見なきゃいけなかったけど、もう我慢できなかった。みんなの意識はDodgerとナンシーに向いているから、やるなら今だ…
読者のみんな、僕はオシッコをもらしたんだ。ロンドン・パレイディウム劇場のステージで。2000人以上が見ているところで。幸運なことに薄汚れた救貧院の服装だったから、たぶんお客さんの誰も気づかなかったはず。もしオリバーの顔に喜びにあふれた安心感が生まれたのを見ていなかったらね。
ステージでDodgerに囁いたよ。「ねえ、おもらししちゃった!」彼の顔を忘れないよ。超恥ずかしかったけど、これ以外に思いつかなかったんだ。ショーは続くし、僕はプロフェッショナルな子どもだったって言ったでしょ。
オリバーに対する情熱はあったけど、それは舞台そのものに対するものじゃなかった。勉強の傍らに仕事を続けたよ。カッコイイって思えた仕事のひとつが、「ジェダイの帰還」の再刊でコーラスをしたこと。もし君が僕の家に来たらスター・ウォーズの記念品がいっぱいあるのを目にすることができるし、どれだけ僕がスター・ウォーズに夢中かもわかると思う。
僕はStage誌に載ってたいろんなボーイズバンドの公開オーディションに行って、長い長いオーディションにも参加したけど、まだ若すぎた。そういうバンドの年齢制限は、いつも最低16歳。僕はまだ14歳とか15歳で、年齢をごまかすようなガッツもなかった。(君のことを言ってるんだぞ、ダギー・ポインター。)振り返ってみると、それでよかった。そういうオーディションは典型的なボーイズバンドのものだったし、例え合格して成功しても僕はハッピーじゃなかったんじゃないかなって思うから。
16歳でシルヴィアを卒業したけど、今でも人生でも最高の日々だったなって振り返る時があるよ。のちに僕の妻になる女の子と会ったから、ってだけじゃないよ。ジオヴァンナと僕は13歳の時に出会ったんだ。その頃僕は入学から4年がたっていて、Giはまだ入ってきたばかりだった。小さな集会室で椅子に座って、友人のジェイソンと新しく入ってきた子たちのうち、誰が僕たちのクラスに来るんだろうなんて話していた。ゴージャスな女の子が部屋に入ってきて…めっちゃイケてるってジェイソンに言ったんだ。
先生がその女の子に僕の隣に座るように言った。その子の苗字がアルファベット順で僕の隣だったから。僕に微笑んで彼女は言ったんだ。
「こんにちは。ジオヴァンナよ。でもGって呼んでいいわ」
「やあ」僕も微笑み返した。「僕はトムだよ。でもTって呼んでいいよ」
うん…超スマートな返しだね(ううん、全然)。
僕の話は恥ずかしくなるような言い回しばかりだったけど、その日の終わりにはジオヴァンナは僕の恋人になったんだ。長くは続かなかったけど。2日後僕はジェマ・ゴウルドと付き合いたくて彼女を振ったんだ。ひどいでしょ、でも本当。すぐに後悔したし、その後2年間は本当に彼女に夢中だった。いつもGiのことを考えていたし、クラスメートに何度もGiの話をしてバカじゃないとまで思われたよ。
彼女にとって新しい学校での最初の週に振ったりして、僕のせいでつらい思いをさせちゃったんじゃないかって、僕は最低な奴だって思った。2年間デートに誘い続けたよ。最終的には彼女が折れて、シルヴィアの最終学年できちんと付き合い始めたんだ。
学校を卒業したら、また別れた。Giはエセックスから通っていて、僕はHallow出身で、僕らにしたら何百マイルも離れていた。別れることが思慮深い大人のやることだって思ってた…実際にやるまではね。でもまた、2年間僕は彼女を取り戻そうと一生懸命になった。このときは他にも付き合った子がいたけれど、僕が必要としていたのはいつもGiだったよ。