翌日、いつもより早く登庁した滝本は 深見が作成した資料を改めて最初から目を通していた
(殺害された被害者はどの事件も最初に襲われた人たちばかりだな…まさか、初めから狙われていたのか…)
殺害された被害者のデータを確認した
「田所 潤 自動車会社エンジニア
    東 雅彦 薬品会社研究者
    名波 哲也 厚労省官僚
    木村 俊介 大学教授 専門は地質学か…」
二人だけは薬品つながりで関係はあるかもしれないが、エンジニアと地質学じゃ関連性があるとは考えられない 
(彼らの死によって 何らかの影響が出ている場合は そこに動機が見つかるかもしれないな、もう少し詳しく調べてみるか…)
滝本は 携帯を取り出した 
宛先は彼の〝私的な調査機関〟でもある 大葉探偵事務所の大葉所長である
「滝本ですが、大葉さんに至急 調べていただきたい件があるので 午後から時間つくってもらえませんか?」
大葉探偵事務所の所長 大葉 猛は 滝本が警察庁に入った当時の上司であり、滝本が今でも師として尊敬する人物だ
大葉も滝本と同じキャリア組だったが 三年前に突然 警察庁を辞め その理由を今でも滝本に話してくれることはない
「通り魔殺人の被害者の調査か?」
大葉の口からその言葉を聞いて 滝本は驚いた
「なぜ、わかるんですか 、何か大葉さんの耳にも入っているんですか?」
「俺の方からも 滝本に 話さなければならないことがあるんだ 俺が辞めたことにも関係があるからな…」
「私も なかなかそれが聞き出せずにいたんです 私が内調に出向した後だったので詳しい事情が気になっていました」
今回の件が 大葉が辞めた事が関係しているとわかった滝本は 深見が〝ある組織〟と言っていたことを思い出した 
(何らかの組織が関係しているとなると 相当 手強い相手かも知れないな)

滝本は 大葉との約束を夜に変更し 深見に同席させようと考えた

つづく