「改めて調べてみる価値はあるな、それぞれ内々に調べてみるか」
滝本は事態を深刻に考え二人に向かって言った
「先ずは、被害者に共通点がないのはわかったが 事件当時、被害者がどのような立場だったのかを調べてみてくれ 殺害される理由が何かわかるかもしれないからな」
一連の資料を作成した深見に、もう一度調べ直すことを依頼した
「野山には 加害者たちの出所以降の足取りをできる限り詳細に調べて欲しい 関係機関には 現段階では この関連性は伏せてくれ」
「内々にといっても限度があるよ、少なくとも〝上〟には ある程度 報告しないとな」
野山が不安げに応えてきた

「いや、今回は それも避けてくれ 、どうも医療刑務所が絡む可能性がでてくると 管轄問題で揉めるからな、野山、お前だけで動いてくれ」
情報をまとめるには、現段階では分析が曖昧なところが多過ぎる 滝本は いつも以上に慎重に判断した

「世界的規模の組織という可能性はどうなんだ? 把握できているのは、米 英 独そして日本だけなのか…」
ここは重要だと考えた滝本が尋ねる
「最初の連絡では そうだが、現段階でも もう世界レベルだよ、米国だけでなく SISも既に動いてるらしい、うちが一番遅いんだ」
CIAとの腐れ縁がある深見は 半ば呆れながら応えた
「エシュロンの監視も継続中なのか」野山が聞く
「not guilty のヒット数は増えてるらしい、それも日本でだ」これも米国からの情報らしい

「狙われている人間が判らないから 対策ができないな、医療刑務所といっても出所者は少なくないはずだ 過去に遡って追跡するのは これは厄介だぞ」
出所者の足取りを調べる役割の野山は 既にウンザリしていた

つづく