それは突然の出来事だった
ある事件で任意同行を伝えられ
何も後ろめたいことがなかった神崎は
それを素直に応じた

その後、逮捕状を提示され
そのまま拘留となってしまった

刑事たちの取調べは 最初から神崎を
犯人と断定してのものだった

聞いたこともない話、疑惑と猜疑の数々
あり得ない物証や不思議な偶然の一致
完璧なまでに仕組まれたものだった

公判では 徹底的に無実を訴え争ったが
99.9%の有罪率は覆ることはなかった

警察も検事も証拠のみで立件する
それだけで彼らの〝仕事〟は成立するのだ

青天の霹靂の逮捕から 既に2年が経過
神崎は 今も〝あの日〟を思い出す

初めての留置場…
指紋の登録、被疑者としての写真撮影
DNAの登録もあった
所持品を領置の為 全て記録する

先客が数人 拘留されていた
窃盗、シャブ、傷害と様々だった
翌朝 朝の運動時に 顔を合わせた
内心 ビビりまくっていたのを思い出した

食事は思っていたより〝豪華〟だったが
揚げ物ばかりで 胃がもたれる
室内は冷暖房完備で薄着でいられた

検事調べのための移送が面倒だった
毎回、警察署から検察庁に連れられる
最初の〝送検〟などは 半日かかる

調べは 毎回、否認するだけだ
弁護士からは 黙秘を促されていたが
悔しさと腹立たしさから口を出してしまう
仕事柄 ディベートは苦手ではない
むしろ神崎にとっては最大の武器だ
検事などには 負けるはずがない

否認は、全てが長引かされる
先客が 続々と拘置所に移っていくが
神崎だけは、数ヶ月間 留置場に拘留された

刑事たちとは〝不仲〟だったが
留置管理課の面々とは親しかった
とてもその仕事の大変さがわかった

ドラマの刑事たちと違い
正義感のカケラもないと実感した
〝典型的な公務員ばかり〟
という印象しか残っていない

後でわかったことだが
全国的にも最低レベルの検挙率だそうだ
未解決の凶悪事件も少なくない

テレビドラマのようにはいかないらしい
多分、神崎が接してきた刑事たちでは
万引きや無銭飲食がお似合いだ
田舎の警察ではどこも同じだろう…

深夜に大暴れで留置された酔っ払いが
朝、居室で正座している
万引きや無銭飲食で入ってくる
〝ヘビーユーザー〟もいる
人間観察としてはなかなか面白い処だった

つづく