刑務所で暮らす日々は長く感じるが
娑婆で待ってくれてる人も長く感じるはずだ

刑務所の中にいると大切な人の事を
毎日でも思い出す 特に就寝時
刑務所の就寝時間は早い
夜9時に 就寝となり明かりが落とされる
真っ暗になるわけではないので
監視用の薄暗い電灯をいつまでも見つめる

大切な人の、愛する人の顔が
明かりの中から浮かんでくる
恋しくて、虚しくて堪らない夜を迎える

特に 手紙が届いた夜は感傷的になる
「待たせている」という罪悪感が
『もう二度と悲しませない…』
という心の誓いに変わるのに
そう時間はかからない

そんな想いだけがつのり続ける
募った想いを手紙に書きたいが
なかなか文章には 表現しきれない

神崎が 相談にのる彼らは皆
同じ想いだ、感謝を伝える、詫びを伝える
決して簡単な事でないからだ

「想いは 文字にしないと伝わらないぞ」
「思ったまま、感じたままでいいんだ」
「後悔は書くな、反省を書け…」
「待ち人の希望になるメッセージを…」

日曜の午後、今日も居室での
〝神崎手紙教室〟が始まっていた

つづく