神崎の受刑生活も あと半年を切った
留置場、拘置所、刑務所と
いろんな出会いがあった
社会では決して巡り合わないような
人間ばかりだった

社会で最も最低な場所だが
友情が生まれることもある

強いられた同じ境遇で暮らしているうちに
互いの事を 打ち明けあって
少しずつ〝絆〟のようなものができてくる

多くのものを失くし、犠牲にした者同士でしか
わからない苦悩や苦労がある
新たな犯罪の仲間づくりになるから
規則では 必要以上に親しくなれない
しかし、ほぼ24時間一緒なのだ
同じ釜の飯を長期間食う

神崎にも 何人か〝此処〟で友情が生まれた
ビジネスの世界では 競争や戦いの日々が
多かった為、学生時代ぶりになる

彼らとは 社会でも助け合うことができそうだ
見栄も プライドも存在できない世界で
巡り合ったことは大きい

刑務所は『合縁奇縁』である

仮釈放が間近に迫ってきた神崎は
少し感傷的になって振り返っていた

つづく