「保護室の掃除、悲惨だったらしいっす」
衛生班が 洗体の為 浴場に入っていくのを
眺めながら酒井が話し始める

「四方八方、壁中に ウン◯で落書き…
    なかなか落ちずに 大変だったらしいっす」
「それで こんな時間に 洗体なのかぁ」
〝洗体〟とは 汚れ仕事の後に限り
7分間のシャワーが許されることである

「今回は、割と〝読める〟内容の落書き
    だったらしく 感心してましたよ」
相変わらず詳しく情報を仕入れている
「そういえば 彼奴、もう満期釈放だぞ」
〝彼奴〟とは その保護室の住人である
薬物中毒で〝イカレテ〟しまっている

「娑婆に出れば 落書きし放題ですね」
酒井がふざけて言う
「あれは、野放しにしないだろう」
いくら満期釈放だとはいえ 神崎は
〝彼奴〟が 普通に街を歩く姿が浮かばない
此処で働き出して 一番 ウン◯処理を
させられた問題児だ
「娑婆が ウン◯塗れになりますよ」
「官も何か考えるだろう」
障害受刑者は出所時に『措置診察』を受け
その後 施設に入院となる者もいる

〝ウン◯マン〟は重度の中毒精神病なので
出所しても 施設に入院となるだろう

障害があっても軽度なら 家族の支えで
社会復帰も可能らしいが 大変だろう

「まぁ、これで俺たちの負担は軽くなるな」
いずれにしろ 作業面では助かるはずだ

どんな受刑者も満期がくれば社会に
〝戻される〟のだ
医療刑務所の出所は そんな面で 
少し考えさせられる

つづく