「今日は 汚物処理が多かったから 大変だ
    日課表、伝票 追いつくかなぁ」
一日中 〝汚物部屋〟の掃除におわれ
事務作業が間に合いそうもない

棟の担当経理は そこで作業する受刑者の
1日の作業時間の伝票なども作成する
新聞、運動、入浴、医務や面会の有無で
時間をそれぞれ計算するのだ

神崎の棟は 人数も多く、出入も激しい為
全てを記入するには時間がかかる
しかし、刑務所は 残業ができないから
忙しい日は とてもハードだ

パソコンの表計算なら 簡単な事務作業も
手書きの伝票と電卓だけでは悪戦苦闘する

それでも統計や分析が専門の神崎には
慣れたものだが
〝普通〟の受刑者には容易ではないはずだ

この伝票をもとに 計算係が
報奨金の月額報酬を算出する

ようやく 1日分をまとめ終わった頃に
違反行為で移されてくる者がいると
工場伝票は 書き直しとなる

翌日の給食伝票も担当経理の役割だ
翌日に 何名の受刑者に何食 必要かを
炊事工場に発注する為である

A食、B食、C食がそれぞれ何名
軟食、刻み食、保護室が何名
複雑で大変な事務作業なのだ

仮釈放が近い神崎にとって
この事務作業の引継ぎが悩みのタネだ
電卓を前に悪戦苦闘する酒井が
頭に浮かんでしまう

(まずは、給食伝票から 教えるか…)
神崎は、酒井を呼びつけた

つづく