「神崎さん、炊場の川端 もうすぐ仮釈らしい
    すよ…やっぱりシャブは早いっすね」
日頃から酒井とは仲の良かった奴の話だ
「シャブは 出てからも薬物指導とやらがある
    から、最近じゃ皆んな半年だな」
「仮釈 半年は羨ましいっすね」
オレオレの酒井は、自分でもあまり期待はして
いないが、他人の仮釈には興味があるらしい
「でも再犯率高いからな シャブは…」
一部執行猶予が導入されるなど対策は講じて
いるようだが、薬物離脱は容易ではない

此処にいて 
「やめる」という言葉を聞いた事がない
ほとんどの人間は
「バレないように」を目指す

再犯率を課題にしているにしては
覚醒剤使用者と覚醒剤売人を
刑務所では、〝同居〟させている
これでは、互いに新規を獲得させるだけだ

新しい店が見つかり
新しい顧客が見つかる

神崎の耳にさえ
薬の品質や価格帯、産地、ルートの話が
自然と耳に入っている

〝出たら 何処で〟と具体的な会話もある

大麻などは もっと気軽に話される
薬物だけではない

窃盗に関しても 
儲け話が頻繁にやり取りされる
商品の換金ノウハウや隠し場所などもだ

互いの特技を活かした〝チーム〟も
できる勢いだ

半分素人の空き巣達が、窃盗団となる
刑務所は 反省しないものには
ある種の〝養成所?〟にもなってしまう

刑務所で知識と知恵を養うのだ

ほとんどの受刑者は 刑務所を
〝失敗して捕まった奴ら〟
〝バレて捕まった奴ら〟
の来るところだと思っている

彼らは知っているからだ
「悪いことをして 捕まっていない人間の数が
    刑務所にいる人間より多いことを」

つづく