刑務所では職業訓練の募集が頻繁にある
溶接やフォークリフト、情報処理
理容、美容の資格、農業など多彩だ

刑期の長い者は 積極的に応募する
此処に居たくない者も少なくない
神崎が此処に来てから何人もが
職業訓練の為 対象の刑務所に移っていった

釈放後の就職のためというのが目的だが
それを真剣に考えて選ぶ者は少ない
今よりは環境が〝ましだろう〟と
此処から逃げたくて応募するのだ

規則では、職業訓練が終わればまた
此処に戻らなければならない

他の刑務所から戻った者の
お土産話は ほとんどが食べ物のことだ

刑務所は、祝日だけ菓子が配られる
受刑者の唯一の楽しみである
戻った者は、口を揃えて言う
「祝日菓子が、一袋出たぞ!」

他の刑務所は、菓子が普通に一袋出るらしい
此処は、薬代が経費負担となっているのか
駄菓子が二個配られるだけだ
大人が うま◯棒を配られて喜ぶ

こんな事が話題の中心になる

刑務所は、食べる事が最大の楽しみだ
献立表を皆、隅々まで眺める
だから職業訓練で他の食事も楽しみたい

酒井も もう五つも応募しているらしい
情報処理、農業、溶接、理容、介護

酒井、お前は一体何がやりたいんだ?
神崎は 酒井の背中に向かって呟いていた

つづく