今日 神崎の担当する棟に新入が
移送されてきた
今月に入って5人目の障害受刑者だ

「おぅ、島岡 また来たのか、少し娑婆で
    太ったんじゃないか…」
「元気そうだな、いくつになった」
「今度は 真面目に過せよ」
通るたびに職員が声をかける
ヘビーユーザーなのだろう

「今回は 10㎏は痩せたいですね」
気軽に応えている

刑務所にダイエットにきているみたいだ
今は 5月、冷暖房のない刑務所では
過ごし易い季節だ
しかし、これだけのリピーターなら
酷暑の夏も 厳寒の冬も慣れたものだろう

此処には 障害受刑者の出戻りは多い
再犯率も高いが
彼らにとって〝居心地〟も良いのだろう
彼らの症状を理解しているから
彼らも安心なのだ
世間のような蔑視もない
世間のような差別もない

ここは、症状に応じて〝区別〟されるだけだ
抗精神薬もしっかり管理の下 処方される

社会にいるより過ごし易い
満期になれば、酒と煙草を味わいに
外の世界へ〝一旦〟出るだけである
そして また戻ってくる

身寄りのあるものは、それでも
努力して〝病気〟を治そうとする

ホリじぃの言葉を思い出す
「俺にとって 此処は、娑婆より知合いが多い
   俺にとって 此処は、娑婆より友達が多い」
そんな『場所』なのだ
そんな『居場所』なのだ

つづく