とても 手間がかかっていた1250番が
あとわずかで 満期釈放をむかえる

神崎も酒井も正直ホッとしてしまう
棟の作業が相当 軽減される

いつも髭面のわだちゃんだ
基本、入浴時に髭剃りが規則だが
頻繁に暴れて保護室に入る為 伸び放題だ

不定期にキレる
突然にキレる
いつのまにかキレる

他の受刑者と異なり 前兆なくキレる

そんな わだちゃんが社会に戻る
刑が終われば みんな戻るのだ

ここまで危険人物だと何らかの処置は
されるとは思うが 少し不安だ

此処には 屈強な警備隊がいてくれる
そして社会にはいない
四六時中 監視はできないだろう

慣れているはずの神崎にも不安がよぎる
また、戻ってくるだろうが
もしかしたら誰かが被害者となる

障害受刑者の人権も大切だが
近くにそれを気づかないまま 被害者に
なってしまう人々の人権も大切だ

要注意人物の出所時になると
神崎は 真剣に考えてしまう

何年か、何ヶ月か、もしかしたら 何日後かに
彼の名前を報道で聞く事になるかもしれない

彼の異常、病気は 治ってはいない
彼の刑期が終わっただけなのだ

つづく