「神崎さん、斎藤のサラダ キャベツの芯ばかり
    にしてやりましたよ」
酒井がニヤニヤしながら囁いてきた
「ほどほどにしておけよ、ただでさえ虐め、
    疑われてるんだからな!」
神崎も内心(よくやった!)とは思ったが
調査中なので酒井には注意を促した

「今度は、彼奴の洗濯、汚物と混ぜてやろう
    かなぁ〜」
酒井は 徹底してやるつもりらしい

酒井の情報によると最初から イジメを理由に
就業拒否を計画していたらしく いくつもの
材料を斎藤は準備していたらしい
神崎と職員の大林が犬猿の仲と知った上で
今日を選んだようだ

室内用の作業材料を入れる時に神崎も 
斎藤の様子を覗いてみたが
しっかりと〝演技中〟だった
落ち込んでる演技は、アカデミー賞ものだ
彼の部屋だけ 照明を落としているようだ

あれで50年生き残ってきたんだから
安心はできないな、と神崎はそう実感した

「それより 彼奴が抜けた配食当番の補充は
    どうしたんだ?」
神崎がたずねると酒井は
「仲田さん、慣れてるから大丈夫じゃない
   すっか、自分が飛ばしたようなものだし」
 
今までも仲田のところは、何人も飛んでるから
誰もあまり心配しないらしい…

今回の件も 仲田が犯人だとわかっても
多分、直接お咎めはないだろうと
神崎は思った、直接証拠もない
過去の件も噂で終わっている

本当に 他人を虐める奴は、巧みだ
決して証拠を残さない、現場を見られない

イジメには、プロがいる
相当年季が入っていて 危機管理も凄い
刑務所には 
イジメのプロもいるが
イジメられのプロもいる
ただ、それだけだ

自分に火の粉が降りかかれば別だが
今回、つくづく思う
他人に干渉しないのが一番だと…

「明後日、ガリ(理髪)ですから 斎藤の頭、
    切れない刃を用意して刈ってやりますよ」
「頭、ガタガタにして 痛がるだろうなぁ」
酒井がニヤニヤしながら呟いている

神崎は懲りない酒井を見て
「こいつも イジメのプロの方だろうな…」
と一人納得していた

つづく