「昨日の保護室の掃除 大変だったらしいな」
この刑務所には いくつかの保護室がある

神崎の担当の棟以外にも 独立した建屋で
何部屋かが使用されている
中には、長期滞在?もあり
定期的に それぞれ掃除に入るのだ

酒井と同室の衛生係がこぼしていたようだ
「自分のウン◯で 壁一面に落書きが
    あったらしく 全部落とすのに大変だった
    らしいっす! 運が悪かったのか…うん?
     いやいや 〝ウン◯〟がついてたんだ」

くだらないジョークで ひとり納得する

何もない保護室では、ウン◯も筆記用具となる
どうも身体の方は いたって健康体だ
いつも 健康的な〝モノ〟である

ここでの世間話は ほぼ〝ウン◯〟だ

神崎も汚れのひどい汚物の洗濯は
トイレの便器で十分洗ってから洗濯をする
ウン◯塗れも珍しくない

処方されている薬のせいなのか
お漏らしする者も少なくない

尿や便だけでなく 精子にも塗れて
目と鼻をやられた前任者もいた

ここに一年も務めれば
3Kだろうが 4Kだろうが どんな仕事にも
就けそうだ

辛い、汚い、危険、臭い、厳しい…
そして自由もない

少しでも 愚痴を漏らすと
「お前らは、自分で入ってきたんだ
    悪い事をするから 当然の報いだ!」
と怒鳴られるだけの日々だ

一年以上も務めている神崎にとって
ここの非日常が 
当たり前の日常になってしまった

酒井も 随分それらを理解するようになった
神崎より 刑期が残っている酒井には
これから頑張ってもらわないといけない

これからも どんな変り種が入所してくるか
わからない  もしかしたら手を焼いていた
常連組が舞い戻ってくるかもしれない

〝病気?〟が治っているとは考えられない

日本もそろそろ GPSの本格的導入を
考えた方が良いだろう
いつ、誰が被害者になるかわからない

「この中にいる間は 安心だが やはり…
    自分の家族のいる社会には守る術がない」
まるで バイオハザードだな

出たら 此の手の論文でも書いてみるか…
筆心のある神崎は最近、この体験、経験から
何か使命感のようなものを感じ始めていた

つづく