この刑務所には、酒井のように
オレオレなどの特殊詐欺で
服役している受刑者も少なくない

軽い気持ちで受け子をやっていた人間は
捕まってからその罪の意識をもつ

窃盗や薬物とは違い判決は重い
初犯でもほとんどが実刑だ

窃盗などはそこそこな件数でも
執行猶予がつき
薬物も初犯ならほとんどが
執行猶予ががつく

もともと犯罪とは無関係だった彼らは
組織にまんまと利用されたのだ
高齢者を騙したとはいえ
ある程度は同情できてしまう

脅迫まがいの指示で動かされていた
とても弱い面もあるからだ

酒井は、真面目に働いてくれる
待ってくれている母親を
これ以上泣かしたくない…
彼の口癖だ

だからこんな世界でも彼は
じっと耐えて頑張れている

「あっ、またどこかで非常ベルが?」
ダダダダダ…

「酒井、拘禁者用のペットボトルにお茶を!」
「了解です〜」
保護室の仕事の要領を得た酒井は足早に
配膳室に飛び込んでいった

つづく