リニアステッピングモータは、回転運動を介さずに直線運動を直接実現するアクチュエータであり、高精度な位置決めや繰り返し性が求められる装置に多く使われています。精密搬送機構、医療分析装置、電子部品の自動組立装置など、多様な分野でその特性が活かされています。

本稿では、リニアステッピングモータの「推力(トルクに相当)」と「速度」の関係、ならびに選定時に重視すべき要素について詳しく解説します。

1. リニアステッピングモータのトルク(推力)特性
リニアステッピングモータでは、通常の回転モータのトルクに相当するものが「推力(Thrust)」です。

低速域では最大の推力が得られ、安定した駆動が可能。

速度が上昇するにつれて推力は減少し、一定の速度を超えると脱調の危険が出てきます。

ピーク推力(最大)と連続推力(定格)を分けて理解し、運転時の負荷に見合ったマージンを確保することが重要です。

 



2. 速度特性と加減速制御
リニアステッピングモータは、与えるパルスの周波数によって移動速度が決まる仕組みです。

パルス周波数が高いほど速く動作しますが、推力が下がるため、負荷や慣性に対して無理のない速度設定が必要です。

高速域での脱調を防ぐため、スムーズな加減速制御(ランプ制御)を行うことが推奨されます。

マイクロステップ駆動を採用することで、より滑らかで振動の少ない駆動が可能になります。

3. 選定時の主なポイント
① 必要な推力と安全率の確保
駆動対象の重量、摩擦、傾斜などを考慮した上で、必要推力の1.5~2倍の安全率を見込んで選定します。
特に垂直駆動では、保持力(ホールディングスロスト)も重要です。

② ストロークと分解能
使用環境に応じた移動距離(ストローク)と、必要とされる移動精度(分解能)を明確にし、それに応じてステップ長やねじピッチ、マイクロステップの設定を選びます。

 



③ モータ形式の選択
使用目的に応じて、以下のようなモータ構造の選定も重要です:

キャプティブ型:ネジ内蔵で組込みが簡単。短ストローク向け。

非キャプティブ型:ガイド部は別途設計。長ストロークに対応。

リニアスライダー型:モータ一体型ステージ。高精度・高剛性。

④ 使用環境への適合
高温、多湿、クリーンルーム、粉塵環境など、使用条件に応じた防塵・耐熱・防水性を考慮します。

⑤ 駆動回路との整合性
ドライバとの組み合わせによって制御性や効率が大きく変わるため、電圧・電流定格、制御方式(フルステップ/マイクロステップ)に対応するドライバの選定も不可欠です。

4. 応用例
医療機器:試薬の微量送液装置、スライド搬送機構

電子部品製造装置:ピックアンドプレースステージ

分析装置・検査装置:光学レンズの位置決め、XYステージ

自動化機器:小型リフター、精密搬送レール

5. まとめ
リニアステッピングモータは、シンプルな構造で高精度な直線運動を制御できる優れたアクチュエータです。選定にあたっては、以下の点を十分に考慮することが重要です:

必要な推力と動作速度のバランス

ストローク長と位置決め精度

使用環境と制御方式への適合性

適切なモータとドライバの組み合わせを選ぶことで、装置の信頼性や寿命、操作性を大きく向上させることができます。