--- 青柳いづみこ 「我が偏愛のピアニスト」/「ムジカノーヴァ」2007年10月号 http://ondine-i.net/column/column186.html
この一週間前に、ここNYでコンサートを聴いたばかりの海老彰子氏の言葉です。
もし音楽する動機が100%内発的で、他人や社会から認められても認められなくても、それは全く関係ないと言い切れる演奏家なら、この海老氏の言葉には反応しないでしょうね。
この言葉の中に一抹の悲しみが存在していることも感じないのではないでしょうか。そもそも初めから、自分以外の要素が全く無く自分のためだけに演奏しているわけですから。
しかし、音楽が聴衆がいて成り立つものである限り、そんなことは現実的ではないですよね。周りにいるでしょうか?自分だけが満足すればそれでいいと言っている演奏家が。。。
いますかね?いるのかな?いないでしょう?
NYには3つ音楽院(ジュリアード/マンハッタン/マネス)がありますが、練習室で練習していると、どこからともなく音楽性があって中身の詰まった音が聴こえてきて、まさしくガンガンに「花が咲いている音楽」に出くわすことがあります。
そんな時は、音楽の喜びを共有しているような気がしてとても幸せな気持ちになるのですが、それは練習室なわけです。
その音たちは「人が見ていなくても咲いている花」であり、その演奏家がこれから人に見られるかどうかは別問題の要素が確かにあるわけです。
が、まずは「人が見ていなくても咲いている花」を目指すべきでしょう。練習でできていないことが本番でできるはずもなく、人が見ていなくて咲けていない花が人が見るようになって咲く可能性は低いのではないでしょうか。
メンタルトレーニング理論によるゴールセッティングでは、人生、年間、月間、週間、毎日といった期間ごとに結果目標とプロセス目標を設定します。
結果目標ではある期間後にどういう自分でいたいか、プロセス目標ではその自分になるために具体的にどうすればいいか、を設定します。
それらを「一日の目標」に落とし込むまで自分の目標(課題) についてよくよく考えることになるのですが、それによって、課題ごとにそれは自分だけでできることなのかそうでないのか、その目標に対する自分のやる気は外発的なのか内発的なのか、自分の内と外を分けて考える意識が出てきやすくなります。
ゴールセッティングの狙いは、設定者の内発的やる気を高めることですが、またそれによって、内発的動機を軸にして外発的動機も上手く利用することもできるようになります。
◯◯ができるようになったら、褒美として◯◯を自分に与える、というようなことです。
ゴールセッティングは、内発的なやる気を高めることを考え方の中心に据えて、その上で外発的にやる気が出ること(報酬やコンペティション、オーディションなど)を利用するという流れが理想です。
私としては、「人が見ていなくても花を咲かせている」音楽家こそ、芸術の道しるべとなるゴールセッティングがこれからの芸術活動をもっと豊かにするために必要なのではないかと思っています。
我が偏愛のピアニスト/青柳 いづみこ

¥2,100
Amazon.co.jp