共有物に関する負担の求償;法的性質;ハイレヴェル~共有物に関する負担の求償;法的性質~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q いったん立て替えた共有物の費用の負担,について,他の共有者に請求します。
  この請求権は法的構成はどうなるのでしょうか。


誤解ありがち度 5(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ

↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

A 事務管理,民法253条1項,不当利得,という見解があります。事務管理という解釈が有力でしょう。

【共有物に関する負担の求償;法的性質;ハイレヴェル】
Qいったん立て替えた共有物の費用の負担,について,他の共有者に請求します。
この請求権は法的構成はどうなるのでしょうか。

A事務管理,民法253条1項,不当利得,という見解があります。事務管理という解釈が有力でしょう。

「共有物に関する負担」については,民法253条において規定されています。
1項では,「持分に応じ」負担を負うことが規定されています。
2項では,1項の義務が履行されない場合の対応が規定されています。
これは,共有者間での求償の趣旨です。
ところで,この「求償」ですが,法的構成・法的根拠について,いくつか見解があります。
平成22年の最高裁判例の判決文の解釈上,事務管理の構成を取っていると考えられます。
この判例により,現在は事務管理という構成が有力でしょう。
なお,この法的構成の違いによって,実際の有利/不利,が生じるということはないでしょう。

<共有物に関する負担の求償;法的構成>
1 事務管理;民法697条,702条
[判例タイムズ1317号 114頁](最判H22.1.19の解説)(後掲)
[判例タイムズ主要民事判例解説 別冊32号 108頁](最判H22.1.19の解説)(後掲)

2 共有の規定;民法253条1項
[平成24年 8月22日 東京地裁 平23(ワ)38676号 共有物分割等請求事件、共有持分管理費用立替金反訴請求事件]
[平成22年 1月 7日 東京地裁 平20(ワ)32088号 立替金請求事件]

3 不当利得返還請求権;民法703条
[平成22年11月15日 東京地裁 平21(ワ)31413号 不当利得返還請求事件]



[民法]
(共有物に関する負担)
第二百五十三条  各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2  共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

(事務管理)
第六百九十七条  義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
2  管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。

(管理者による費用の償還請求等)
第七百二条  管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
2  第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
3  管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。

(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

[判例タイムズ1317号 114頁](最判H22.1.19の解説)
(事務管理)
事務管理の成立のためには,他人のために事務の管理を始めること,すなわち,他人の事務を処理することが必要である。数人の者が同順位で割合的に義務を負う場合,その義務に関する事務は共同の事務であり,そのうち1名がそれを処理したときは,自己の事務の処理であると同時に,自己の負担部分を超える限度では他人の事務の処理でもあることになる。共有者の1人が共有物の管理費用を立替払したような場合はこれに当たる(大判大8.6.26民録25輯1154頁参照)。例えば,共有不動産に係る修繕費は,共有物の管理の費用であるから,共有者がそれぞれの持分に応じて負担すべき義務を負い(民法253条1項),共有者の1人が自己の負担部分を超えて修繕費を支払った場合,他人の事務の処理として事務管理が成立することは異論のないところと思われる。
 また,本件では上告審における審理の対象とならなかったが,固定資産税については,賦課期日(毎年1月1日)における「所有者」(登記簿等に登記又は登録されている者であって,必ずしも真実の所有者と一致するとは限らないが,所有者として登記等されている者が賦課期日前に死亡しているときは,同日において当該土地等を現に所有している者をいう〔地方税法343条2項〕。)を納税義務者として課されるものであるから,Y管理不動産の登記簿上の名義人が被相続人(亡父又は亡母)のままであったとすれば(この点は1,2審判決からは明らかでない。),Yが固定資産税を支払うことは,自己の負担部分を超える限度では他人の事務を処理することとなって,事務管理が成立すると解される。仮に,登記簿上はYの単独所有名義であったとすれば,固定資産税の納税義務者はYであるから,その納付を他人の事務ということはできないが,この場合,真実の所有者(共有者)であるXは,固定資産税の納税義務の負担を免れることによって利得を得ているから,Yは,Xに対して不当利得返還請求をすることができると解される(最三小判昭47.1.25民集26巻1号1頁,判タ274号151頁参照)。

[判例タイムズ主要民事判例解説 別冊32号 108頁](最判H22.1.19の解説)
(事務管理)
事務管理が成立するためには,①管理者に法律上の義務がないのに,②他人のために,③他人の事務の管理を始め,④本人の意思と利益に適合する方法により管理がなされることが必要とされている(民法697条)。そして,共有者は,それぞれの持分に応じて,共有物に関する管理費用等を負担すべき義務を負い(民法253条1項),共有者の1人が,共有者各自の負担に帰すべき費用の全部を支払ったときは,他の共有者の負担部分について,他人のために事務を管理したものとして事務管理が成立し,費用償還請求権が発生することとなる(大判大8.6.26民録25輯1154頁参照)。

[平成22年 1月19日 最高裁第三小法廷 平21(受)96号 不当利得返還請求事件](参考)
所得税は,個人の収入金額から必要経費及び所定の控除額を控除して算出される所得金額を課税標準として,個人の所得に対して課される税であり,納税義務者は当該個人である。本来他人に帰属すべき収入を自己の収入として所得金額を計算したため税額を過大に申告した場合であっても,それにより当該他人が過大に申告された分の所得税の納税義務を負うわけではなく,申告をした者が申告に係る所得税額全額について納税義務を負うことになる。また,過大な申告をした者が申告に係る所得税を全額納付したとしても,これによって当該他人が本来負うべき納税義務が消滅するものではない。
 したがって,共有者の1人が共有不動産から生ずる賃料を全額自己の収入として不動産所得の金額を計算し,納付すべき所得税の額を過大に申告してこれを納付したとしても,過大に納付した分を含め,所得税の申告納付は自己の事務であるから,他人のために事務を管理したということはできず,事務管理は成立しないと解すべきである。このことは,市県民税についても同様である。

[平成24年 8月22日 東京地裁 平23(ワ)38676号 共有物分割等請求事件、共有持分管理費用立替金反訴請求事件]
(民法253条1項)
被告住友は,本件固定資産税等額合計524万4000円を支払っているから,本件土地の共有持分権者(持分5分の2)である原告は,民法253条1項に基づきそのうちの5分の2である209万7600円及びこれに対する催告後の日である平成24年3月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

[平成22年 1月 7日 東京地裁 平20(ワ)32088号 立替金請求事件]
(民法253条1項)
結局原告は,前記(5)の平成15年1期分から平成21年4期分までの固定資産税合計本169万6100円のうち,平成15年1期分から4期分までの固定資産税合計25万2300円の弁済分について,共有物に関する負担として,民法253条1項により,Bに対し,その10分の4に相当する10万0920円につき,その負担金の支払請求権を取得した(略)

[平成22年11月15日 東京地裁 平21(ワ)31413号 不当利得返還請求事件]
(不当利得返還請求権)
3 争点3(被告らが,原告らに,保守修繕費及び改修費相当の不当利得返還請求権を有するか。)について
  (1) 各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,Cは次のア~クのとおり,被告らは次のケのとおり支出したことが認められる。
   ア 平成19年1月29日 202号室塗装工事,木工事(フロアー張り),畳工事,水道工事 17万6000円(乙3号証の1,2の各証,同11号証)
   イ 同年3月17日 201号室水道設備工事 5000円(乙3号証の3)
   ウ 同年4月27日 202号室水道設備工事 3万8000円(乙3号証の4)
   エ 同年5月 1階自宅便所改修工事 15万7000円(乙3号証の5の各証)
   オ 同月14日 桝補修工事 6000円(乙3号証の6)
   カ 同年7月4日 1階自宅便所改修工事 19万円(乙3号証の7)
   キ 同年9月21日 階段屋根改修工事 3万円(乙3号証の8)
   ク 平成20年7月28日 水道設備工事 2万5500円(乙3号証の9)
   ケ 平成21年8月18日 排水桝,排水管工事 13万6500円(乙3号証の14の各証)
  (2) 各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,Cは,本件建物1階を有限会社日東ランドリーに賃貸するに当たって,次のとおり支出したことが認められる。
   ア 平成19年4月19日 粗大ゴミ処分料 2万5000円(乙3号証の13)
   イ 同年5月7日 金庫引取処分代 3万1500円(乙3号証の12)
   ウ 同月20日 改修工事 90万2000円(乙3号証の10の各証,同12~同15号証の各証)
   エ 同年6月5日 電気工事 43万3000円(乙3号証の11の各証)
  (3) 原告らは,上記(1)ア,カ,キ,(2)ウの支出先が柴田工務店(被告Y2)であることから,内輪における金銭の移動にすぎない旨主張するが,上記のとおり工事等が行われたことが認められるから,支出の実体を欠くということができない。
 また,原告らは,上記各費用が,共有物である本件建物の「管理の費用」(民法253条1項)に当たらない旨主張する。しかし,上記(1)ア~ウ,オ,キ~ケ,(2)ア~エの各費用は,原告らの請求する本件建物の賃借人の賃料が発生するために負担することが必要なものであり,その性質上「管理の費用」に当たるというべきであり,少なくとも,上記費用負担を前提に発生した賃料を請求する原告らにおいて,民法252条本文の過半数の同意がないことを理由に上記費用の負担を免れることは,許されないというべきである。
 他方,上記(1)エ,カの費用は,Cの居住部分の便所を洋便器(ウォシュレット)に取り替えたものであって,居住者が負担すべきであり,原告らが負担すべきものではない。
  (4) したがって,被告らはそれぞれ,各原告に対し,上記(1)ア~ウ,オ,キ~ケ,(2)ア~エの各費用の合計180万8500円の12分の1の2分の1の7万5354円の不当利得返還請求権を有する。

<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら
無料お試し版は→こちら

<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ

↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

不動産に関するすべてのQ&Aはこちら
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号;受付時間9:00~22:00(土日・祝日も受付)
0120-96-1040
03-5368-6030