遺言による財産移転のタイミング→「遺産分割」の扱い;形式論~遺言と異なる内容の遺産分割~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
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Q 遺言によって,遺産が確定的・最終的に移転するタイミングはどのようなルールになっているのでしょうか。
  また,このタイミングによって,その後の遺産分割協議ができるのか,関係していますか。


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A 遺言による財産移転が確定的,最終的かどうか,が,遺産の種類によって異なります。

【遺言による財産移転のタイミング→「遺産分割」の扱い;形式論】
Q遺言によって,遺産が確定的・最終的に移転するタイミングはどのようなルールになっているのでしょうか。
また,このタイミングによって,その後の遺産分割協議ができるのか,関係していますか。

A遺言による財産移転が確定的,最終的かどうか,が,遺産の種類によって異なります。

遺言による財産移転の性格は,遺言内容によって異なります。
「その後の遺産分割協議が可能かどうか」について,理論的な結論を以下,示します。
ただし,実際には裁判例において,ある程度柔軟な解釈が主流となっています。
あくまでも解釈論の基本,として説明します。

<遺言による財産移転の性格;遺言と異なる内容の「遺産分割」の扱い(形式論)>
1 相続分の指定→「あ」
2 遺産分割方法の指定→「い」
3 遺贈
(1)特定遺贈→「う」
(2)包括遺贈→「あ」;民法990条

「あ」
 →遺言では割合だけが指定されている=遺産共有=その後の遺産分割協議で具体的承継内容が特定する
 →その後の遺産分割協議は遡及効あり(民法909条)
「い」
 →遺言により確定的・最終的に財産の移転が完了する(判例後掲;最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)
 →その後の遺産分割の性質=新たな取引(契約)≠民法上の「遺産分割協議」(※注1)
「う」
 →「遺贈の放棄」がなされた場合は遡及的に遺贈が効力を生じない(民法986条)
 →その後の遺産分割の性質=「遺贈の放棄」+「遺産分割協議」=「遺贈がなされない状態での遺産分割協議」

※注1
裁判例においては,この理論を柔軟に解釈し,「遺産分割協議」とみる解釈が主流となっています。

[民法]
(遺産の分割の効力)
第九百九条  遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
(遺贈の放棄)
第九百八十六条  受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2  遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(包括受遺者の権利義務)
第九百九十条  包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

[平成 3年 4月19日 最高裁第二小法廷 平元(オ)174号 土地所有権移転登記手続請求事件]
被相続人の遺産の承継関係に関する遺言については、遺言書において表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきものであるところ、遺言者は、各相続人との関係にあっては、その者と各相続人との身分関係及び生活関係、各相続人の現在及び将来の生活状況及び資力その他の経済関係、特定の不動産その他の遺産についての特定の相続人のかかわりあいの関係等各般の事情を配慮して遺言をするのであるから、遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合、当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば、遺言者の意思は、右の各般の事情を配慮して、当該遺産を当該相続人をして、他の共同相続人と共にではなくして、単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではない。そして、右の「相続させる」趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は、前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって、民法九〇八条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも、遺産の分割の方法として、このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって、右の「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。そしてその場合、遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても、当該遺産については、右の協議又は審判を経る余地はないものというべきである。もっとも、そのような場合においても、当該特定の相続人はなお相続の放棄の自由を有するのであるから、その者が所定の相続の放棄をしたときは、さかのぼって当該遺産がその者に相続されなかったことになるのはもちろんであり、また、場合によっては、他の相続人の遺留分減殺請求権の行使を妨げるものではない。

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