遺留分減殺請求→納税額の変動;更正請求+修正申告~遺留分減殺請求×税務~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
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Q 遺言に従って遺産を承継して,不動産の移転登記,相続税の申告と納税を済ませました。
  その後,遺留分減殺請求がなされ,最終的に,不動産を別の相続人に移転する登記を行いました。
  税金はどうなるのでしょうか。
  例えば不動産譲渡所得税などがかかるのでしょうか。


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A 税務上「新たな取引(契約)」として扱うことにはなりません。相続税の枠内で「やり直す」,つまり修正申告や更正の請求を行うことになります。

【遺留分減殺請求→納税額の変動;更正請求+修正申告】
Q遺言に従って遺産を承継して,不動産の移転登記,相続税の申告と納税を済ませました。
その後,遺留分減殺請求がなされ,最終的に,不動産を別の相続人に移転する登記を行いました。
税金はどうなるのでしょうか。
例えば不動産譲渡所得税などがかかるのでしょうか。

A税務上「新たな取引(契約)」として扱うことにはなりません。相続税の枠内で「やり直す」,つまり修正申告や更正の請求を行うことになります。

遺留分減殺請求による財産の移転,については「相続後の新たな取引」として譲渡所得として扱われるわけではありません。
民法上も,相続時に遡って遺留分減殺請求の効果が生じる,ということになっています(民法1031条,判例後掲)。
相続税法上も,遺留分減殺請求による,事後的・最終的な財産の帰属が確定したことは,「修正申告」や「更正の請求」の対象として明記されています(相続税法32条1項3号)。
まとめると次のようになります。
<遺留分減殺請求→最終的な相続が確定時の相続税の処理>
相続税法30条,31条,32条
・「承継する遺産が減る方=遺留分減殺請求を受けた方」
 →更正の請求
 →過納付額の返還を受ける
・「承継する遺産が増える方=遺留分減殺請求を行った方」
 →修正申告または期限後申告を行う
 →増額した遺産を前提に納税する

[民法]
(遺贈又は贈与の減殺請求)
第千三十一条  遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

[相続税法]
(期限後申告の特則)
第三十条  第二十七条第一項の規定による申告書の提出期限後において第三十二条第一項第一号から第六号までに規定する事由が生じたため新たに第二十七条第一項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなつた者は、期限後申告書を提出することができる。
2  第二十八条第一項の規定による申告書の提出期限後において第三十二条第一項第一号から第六号までに規定する事由が生じたことにより相続又は遺贈による財産の取得をしないこととなつたため新たに第二十八条第一項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなつた者は、期限後申告書を提出することができる。

(修正申告の特則)
第三十一条  第二十七条若しくは第二十九条の規定による申告書又はこれらの申告書に係る期限後申告書を提出した者(相続税について決定を受けた者を含む。)は、次条第一項第一号から第六号までに規定する事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができる。
2  前項に規定する者は、第四条に規定する事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、当該事由が生じたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第百十七条第二項 (納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に修正申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
3  前項の規定は、同項に規定する修正申告書の提出期限前に第三十五条第二項第五号の規定による更正があつた場合には、適用しない。
4  第二十八条の規定による申告書又は当該申告書に係る期限後申告書を提出した者(贈与税について決定を受けた者を含む。)は、次条第一項第一号から第六号までに規定する事由が生じたことにより相続又は遺贈による財産の取得をしないこととなつたため既に確定した贈与税額に不足を生じた場合には,修正申告書を提出することができる。

(更正の請求の特則)
第三十二条  相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があつた場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求(国税通則法第二十三条第一項 (更正の請求)の規定による更正の請求をいう。第三十三条の二において同じ。)をすることができる。
一~二(略)
三  遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと。
四~九(略)
2(略)

[論点体系判例民法10相続;461頁]
減殺によって遺留分を侵害する贈与の効力は,判例の形成権=物権説によるとその限度で遡及的に消滅し,受贈者は無権利者となるので,(略)

[昭和41年 7月14日 最高裁第一小法廷 昭40(オ)1084号 所有権移転登記手続請求事件]
遺留分権利者が民法一〇三一条に基づいて行う減殺請求権は形成権であつて、その権利の行使は受贈者または受遺者に対する意思表示によつてなせば足り、必ずしも裁判上の請求による要はなく、また一たん、その意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生ずるものと解するのを相当とする。

[昭和51年 8月30日 最高裁第二小法廷 昭50(オ)920号 持分権移転登記等請求事件]
遺留分権利者の減殺請求により贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者又は受遺者が取得した権利は右の限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するものと解するのが相当であつて(最高裁昭和三三年(オ)第五〇二号同三五年七月一九日第三小法廷判決・民集一四巻九号一七七九頁、最高裁昭和四〇年(オ)第一〇八四号同四一年七月一四日第一小法廷判決・民集二〇巻六号一一八三頁、最高裁昭和四二年(オ)第一四六五号同四四年一月二八日第三小法廷判決・裁判集民事九四号一五頁参照)、(略) 

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