遺言内容と相続人による処分の抵触;遺言執行者~遺言執行者を付けるメリット~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 父が亡くなりました。
  遺産の不動産の一部を第三者(A)に売却しました。
  その後,遺言が発見されました。
  遺言には別の第三者(B)にその不動産を遺贈する,と書いてありました。
  もう登記もAに移し終わってあります。
  遺言執行者がいる場合はどちらが優先になるのですか。


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A 遺言上の承継者(B)が優先となります。

【遺言内容と相続人による処分の抵触;遺言執行者】
父が亡くなりました。
遺産の不動産の一部を第三者(A)に売却しました。
その後,遺言が発見されました。
遺言には別の第三者(B)にその不動産を遺贈する,と書いてありました。
もう登記もAに移し終わってあります。
遺言執行者がいる場合はどちらが優先になるのですか。

→遺言上の承継者(B)が優先となります。

遺言執行者がいない場合は,民法の大原則である対抗関係(民法177条)が適用されます。
しかし,遺言執行者がいる場合は,例外です。
「遺言執行者による遺言の執行」は最大限保護されています(民法1013条)。
具体的には「遺言執行者がある場合」には,「遺言の執行を妨げるべき行為」が「できない」とされているのです。
解釈としては,遺言内容(執行内容)と抵触する行為は「無効」となる,とされています(判例後掲)。
そして,このルールは,対抗関係(民法177条)よりも優先とされています。
つまり,不動産については,仮に先に登記を得た人が居ても,その後,遺言執行者が遺言を執行する際はキャンセルされる(無効として扱われる),ということです。

[民法]
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条  遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

[最高裁判所第1小法廷判決/昭和61年(オ)第264号昭和62年4月23日]
民法一〇一二条一項が「遺言執行者は,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定し,また,同法一〇一三条が「遺言執行者がある場合には,相続人は,相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定しているのは,遺言者の意思を尊重すべきものとし,遺言執行者をして遺言の公正な実現を図らせる目的に出たものであり,右のような法の趣旨からすると,相続人が同法一〇一三条の規定に違反して,遺贈の目的不動産を第三者に譲渡し又はこれに第三者のため抵当権を設定してその登記をしたとしても,相続人の右処分行為は無効であり,受遺者は,遺贈による目的不動産の所有権取得を登記なくして右処分行為の相手方たる第三者に対抗することができるものと解するのが相当である(大審院昭和四年(オ)第一六九五号同五年六月一六日判決・民集九巻五五〇頁参照)。

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