賃貸建物競売→敷金を配当で回収~仮差押の活用~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 賃貸ビルに入居していました。
  オーナーが倒産し,そのビルの競売が行われました。
  抵当権の方が優先なので,退去しなくてはなりません。
  どのようにすれば,敷金返還請求権について,配当に加入することができるのですか。


誤解ありがち度 4(5段階)
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A 仮差押をすれば,配当要求が可能です。

【敷金返還請求権による配当要求】
当社のオフィスとして,賃貸ビルの1フロアを借りました。
多額の敷金をオーナーに預けました。
仮にオーナーが倒産した場合など,ビルが競売されることがあると思います。
既に抵当権登記があるので,売却された場合,新所有者から退去を要求されるでしょう。
敷金はどうなるのでしょうか。
≪敷金・原状回復≫≪抵当権と賃貸借≫≪建物賃貸借の対抗要件≫

→旧所有者に請求するしかないです。競売の配当に参加する方法もあります。

入居前に抵当権の設定登記があれば,「対抗要件」では抵当権が優先となります。
抵当権に基づく競売の買受人の方が,賃借人よりも優先,ということです。
結局,買受人(新所有者)から賃借人への明渡請求が認められます。
新所有者は「賃貸人」とはなりません。
当然,敷金関係を承継する,ということもありません。
そこで,賃借人としては,「賃貸借が継続できない状態になった」→賃貸借契約の終了,として,敷金返還を求めることになります。
ただし,競売をされるような状態であれば,通常,返還する原資が不足していることが多いでしょう。
最低限,この競売手続きにおける「配当」として返還を受けたいところです。
とは言っても,敷金返還請求権,というのは法律上,特別に強化されているわけではありません。
「不動産賃貸の先取特権」という制度はありますが,これは「賃貸人側」(=賃借人の債務)だけしか認められていません(民法312条)。
配当に参加するためには,一定の手続きが必要となります。

[民法]
(不動産賃貸の先取特権)
第三百十二条  不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。

【敷金返還請求権による配当加入の方法】
賃貸ビルに入居していました。
オーナーが倒産し,そのビルの競売が行われました。
抵当権の方が優先なので,退去しなくてはなりません。
どのようにすれば,敷金返還請求権について,配当に加入することができるのですか。
≪敷金・原状回復≫≪抵当権と賃貸借≫≪建物賃貸借の対抗要件≫

→仮差押をすれば,配当要求が可能です。

競売手続きにおいて,一般債権者(抵当権などの担保権を有しない者)のうち,配当要求ができる者は次のように決まっています。

<配当要求のできる一般債権者>(民事執行法51条1項)
(1)執行力ある債務名義の正本を有する債権者
(2)差押えの登記後に登記された仮差押債権者

順に考えます。

(1)執行力ある債務名義の正本を有する債権者
「債務名義」とは,主に「確定判決」のことです。
「敷金返還請求権」は,賃貸借契約終了→明渡完了,まで行って初めて現実化します。
とは言っても,それ以前から「請求権」自体は「存在」します。
そこで「将来給付訴訟」として,事前に請求すること自体は理論上可能です(肯定する判例後掲;ただし,この判例は確認請求)。
仮に,「(将来の)敷金返還請求」を認める判決を獲得したとしましょう。
それでも,現実に明渡を完了するまでは「執行文」(民事執行法27条)をもらえません。
執行文を欠く場合,判決は「執行力」を持ちません。
結局「執行力ある債務名義の正本を有する債権者」には該当しません。
配当要求終期までに明渡を完了しない限りは,配当要求はできない,ということになります。

(2)差押えの登記後に登記された仮差押債権者
敷金返還請求権は,退去するまでは「将来具体化する債権」です。
このような期限や条件付きの債権についても,(これを被保全債権として)仮差押をすることは認められています(民事保全法20条2項)。
もちろん,緊急性や必要性が認められ,かつ,一定額の保証金を預託して初めて仮差押ができることになります。
仮差押の登記が行われれば,配当要求が可能となります。
ただし,文字どおり「仮」の手続きです。
具体的に配当により現金が入手できるわけではありません。
配当金は一旦「供託」がなされます。
その後,「債務名義」(確定判決など)を取得した時点で,実際に現金として受領(供託金の還付)をすることができるのです(民事執行法91条1項2号)。
長期間でも「プール」(供託)されている,というのがポイントです。
なお,このように配当要求ができたとしても,配当の優先順位では,登記された担保権(抵当権)が優先です。
状況によっては,一般債権者(敷金)にまで配当が回るかどうかは別問題です。

[民事執行法]
(配当要求)
第五十一条  第二十五条の規定により強制執行を実施することができる債務名義の正本(以下「執行力のある債務名義の正本」という。)を有する債権者、強制競売の開始決定に係る差押えの登記後に登記された仮差押債権者及び第百八十一条第一項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。
2(略)

(配当等の額の供託)
第九十一条  配当等を受けるべき債権者の債権について次に掲げる事由があるときは、裁判所書記官は、その配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。
一  停止条件付又は不確定期限付であるとき。
二  仮差押債権者の債権であるとき。
三(以下略)

[民事保全法]
(仮差押命令の必要性)
第二十条  仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2  仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる。

[最高裁判所第1小法廷平成7年(オ)第1445号債権確認請求事件平成11年1月21日]
本件の確認の対象は、このような条件付きの権利であると解されるから、現在の権利又は法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けるところはないというべきである。また、本件では、上告人は、被上告人の主張する敷金交付の事実を争って、敷金の返還義務を負わないと主張しているのであるから、被上告人・上告人間で右のような条件付きの権利の存否を確定すれば、被上告人の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険は除去されるといえるのであって、本件訴えには即時確定の利益があるということができる。したがって、本件訴えは、確認の利益があって、適法であり、これと同旨の原審の判断は是認することができる。

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