不動産売買と過去の「自殺」~心理的瑕疵~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 住宅を購入後,過去「自殺」があったことが発覚しました。
  どのような対処法がありますか。


誤解ありがち度 3(5段階)
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A 説明義務違反や調査義務違反,瑕疵担保責任として損害賠償が認められる場合が多いです。



【「人の死亡」と「心理的瑕疵」】
≪不動産売買-瑕疵-人の死≫
過去,人が死亡したことがある,ということが「瑕疵担保責任」の対象になるのですか。

→「住み心地のよさ」も「心理的瑕疵」の1つだと解釈されています。

一般的に「瑕疵」というのは「平均的な性能を欠く」と解釈されています。
要は「欠陥」といえるもののことです。
建物については,構造上の物理的・客観的な性能は当然として,これに加え,「心理的な問題」も「性能」に含まれるのです。
これ自体は当然の前提として考えられています(裁判例後掲;この裁判は「原状回復請求権」に関するものですが,「瑕疵」について判断されています)。

[大阪高等裁判所昭和34年(ネ)第1554号原状回復請求控訴事件昭和37年6月21日]
売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであつて、右目的物が家屋である場合、家屋として通常有すべき「住み心地のよさ」を欠くときもまた、家屋の有体的欠陥の一種としての瑕疵と解するに妨げない。しかしながら、この家屋利用の適性の一たる「住み心地のよさ」を欠く場合でも、右欠陥が家屋の環境、採光、通風、構造等客観的な事情に原因するときは格別、それが、右建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景など客観的な事情に属しない事由に原因するときは、その程度如何は通常これを受取るものの主観によつて左右されるところが大であり、本件で控訴人が瑕疵ありと主張する右事由は正にこの種のものに該当することが明らかである。売買における売主の瑕疵担保責任は、売買が有償契約であることを根拠として、物の交換価値ないし利用価値と対価として支払われる代金額との等価性を維持し当事者間の衡平をはかることにあるから、右制度の趣旨からみると、前記後者のような事由をもつて瑕疵といいうるためには、単に買主において右事由の存する家屋の居住を好まぬというだけでは足らず、さらに進んで、それが、通常一般人において右事由があれば「住み心地のよさ」を欠くと感ずることに合理性があると判断される程度にいたつたものであることを必要とする、と解すべきである。

【不動産売買と過去の「自殺」】
≪不動産売買-瑕疵-人の死≫
住宅を購入後,過去「自殺」があったことが発覚しました。
どのような対処法がありますか。

→説明義務違反や調査義務違反,瑕疵担保責任として損害賠償が認められる場合が多いです。

「自殺」というのは,非常にショッキングなことです。
自殺があった建物に居住するのは,一般的に,精神的ダメーヂが大きいです。
裁判例では,自殺の時期が,購入の数か月前~約7年前というケースについて,売主や仲介業者の責任を認めています。
ただし,建物を建て替える前提であったケースについては,責任を否定しています。
建て替えた後まで,瑕疵(欠陥)として認めてしまうと,不動産の流通が過剰に制限されてしまう,ということも考慮されているのです。
以下,裁判例をまとめておきます。

<不動産売買と「自殺」に関する裁判例>
(後掲裁判例1)
責任の有無=売主の瑕疵担保責任(契約解除による売買代金返還)を肯定
売買物件=土地及び建物(戸建)
売主=言及なし
買主=個人
対象事実=契約締結時より6年11か月前に,当時の所有者が売買物件である建物に付属する物置内において農薬を飲んで自殺を図り,運ばれた病院で死亡していた事実
売主の認識=言及なし

(後掲裁判例2)
責任の有無=売主の瑕疵担保責任(損害賠償)を肯定
売買物件=土地及び建物(戸建と思われる)
売主=個人
買主=個人
対象事実=契約締結時より5か月前に,売主の親族(土地売主の父で建物売主の夫)が売買物件である建物内で首吊り自殺をしていた事実
売主の認識=あり

(後掲裁判例3)
責任の有無=売主の瑕疵担保責任を否定
売買物件=土地及び建物(戸建と思われる。建物は買主にて取り壊したのち,買主が建売住宅を新築して販売することが前提とされていた。)
売主=個人
買主=不動産業者
対象事実=契約締結時より1年から2年ほど前に,売主の母親が売買物件である建物内で首吊り自殺をしていた事実
売主の認識=あり

(後掲裁判例4)
責任の有無=売主の告知説明義務を肯定
売買物件=土地及び1棟のマンション(共同住宅。賃貸による収益物件。)
売主=不動産業者
買主=個人
対象事実=契約締結時より2年1か月前に,当時の居住者が売買物件から飛び降り自殺をしていた事実
売主の認識=あり

(後掲裁判例5)
責任の有無=瑕疵には該当するが,売主の調査説明義務を否定(売買代金額の1%の損害賠償義務は肯定)
売買物件=土地及び1棟のマンション(主に事業用賃貸物件)
売主=不動産業者
買主=不動産業者
対象事実=契約締結時より1年11か月前に,当時の居住者が睡眠薬自殺を図って病院に搬送され,2,3週間後に病院で死亡した事実
売主の認識=なし

(裁判例1)
[東京地方裁判所平成6年(ワ)第10903号売買代金返還請求事件平成7年5月31日]

まず、太郎が農薬を飲んで自殺行為に及んだ物置は、売買の対象である本件土地の上にあり、本件建物に付属しているものであるから、死亡した場所が病院であったとしても、右自殺が本件土地及び建物と無関係であるとする被告の主張は理由がない。
 次に、売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであり、目的物が通常有すべき設備を有しない等の物理的欠陥がある場合だけでなく、目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥がある場合も含むものと解されるところ、本件土地上に存在し、本件建物に付属する物置内で自殺行為がなされたことは、売買の目的物たる土地及び建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥といえる。
 本件土地及び建物は、山間農村の一戸建であり、その建物に付属する物置内で自殺行為がなされ、その結果死亡した場合、そのようないわくつきの建物を、そのような歴史的背景を有しない建物と同様に買い受けるということは、通常人には考えられないことであり、原告も、そのようないわくつきのものであることを知っていれば絶対に購入しなかったものと認めることができる。このことは、訴外飛鳥物産が、原告の依頼を受けて本件土地及び建物の売却の仲介をしようとしたところ、自殺の事実を知らされた客のすべてが購入を辞退したことからも明らかである。
 原告は、平成四年六月以降、本件建物に月に一、二度泊まったことはあるが、当時は自殺の事実について知らなかったのであるから、泊まったことがあるという事実から、本件土地及び建物に隠れた瑕疵はないとすることはできない。
 なお、本件売買契約は、自殺後約六年一一月経過後になされたものであるが、自殺という重大な歴史的背景、本件土地、建物の所在場所が山間農村地であることに照らすと、問題とすべきほど長期ではない。
 以上の事実を総合すれば、本件売買契約には契約の目的を達成できない隠れた瑕疵があり、瑕疵担保による解除原因があるというべきである。

(裁判例2) 
[浦和地方裁判所川越支部平成8年(ワ)第506号損害賠償請求事件平成9年8月19日]

1 証拠(甲1、12、14、乙1、2、4、原告本人、被告乙村一郎本人)によれば、被告らは、本件建物で乙村丙太が自殺していたところから、仲介業者に対しては、右出来事については伏せたまま、目的物件について、本件土地を主眼とし、建物は未だ十分使用に耐えるものであったが、古家ありと表示する程度の付随的なものとして売却するよう仲介を依頼したこと、原告は、夫婦で老後をおくる閑静な住居を求めていたが、仲介業者から本件不動産の紹介を受け、その立地、環境に加え、本件建物が僅かの修理で十分居住に耐える点にも魅力を感じて本件不動産を購入する決心をしたこと、本件不動産は売地と表示して代金七五六〇万円で売りに出されていたところ、原・被告ら間の交渉の結果代金七一〇〇万円で売買が成立したが、本件売買契約締結に当たり原・被告ら間で取り交わされた売買契約書には、売買目的物件として本件土地及び建物が共に表示され、特約として売主は、本件建物の老朽化等のため、本件建物の隠れた瑕疵につき一切の担保責任を負わないものとする。と記載されたこと、右交渉の過程において、被告らから原告に対し、右出来事を示唆するような言動は一切なかったことが認められる。
2 右事実によれば、被告らは、本件不動産売却に当たり、右出来事を考慮し本件建物の価格は殆ど考慮せずに売値をつけ、本件建物の隠れた瑕疵につき責任を負わない約束のもとに本件不動産を原告に売却したのではあるが、本件売買契約締結に当たっては、本件土地及び建物が一体として売買目的物件とされ、その代金額も全体として取り決められ、本件建物に関し右出来事のあったことは交渉過程で隠されたまま契約が成立したのであって、右出来事の存在が明らかとなれば、後記のようにさらに価格の低下が予想されたのであり、本件建物が居住用で、しかも右出来事が比較的最近のことであったことを考慮すると、このような心理的要素に基づく欠陥も民法五七〇条にいう隠れた瑕疵に該当するというべきであり、かつ、そのような瑕疵は、右特約の予想しないものとして、被告らの同法による担保責任を免れさせるものと解することはできない。
そして、本件売買契約の性質上、被告らの債務は不可分債務と解するのを相当とするから、被告らは不可分に、原告に対し、本件売買契約に基づく瑕疵担保責任を負うものと解すべきである。

(裁判例3) 
[大阪地方裁判所平成10年(ワ)第6061号違約金等請求事件平成11年2月18日]

1 右各主張に共通する点は本件建物内において被告らの母親が平成八年に首吊り自殺した事実が本件売買契約においていかなる意味を有しているか否かである。
2 原告が自認するように本件土地及び建物を買い受けたのは、本件建物に原告が居住するのではなく、本件建物を取り壊した上、本件土地上に新たに建物を建築して、これを第三者に売却するためであり、現に甲第三号証によると、遅くとも平成一〇年五月一二日までに本件建物は原告によって解体されている。したがって、本件売買契約における原告の意思は主として本件土地を取得することにあったものと考えられるうえ、現在本件建物は存在しないのであるから、問題は、解体して存在しなくなった本件建物において、被告らの母親が平成八年に首吊り自殺したという事実が本件土地の取得においていかなる意味を有するかという点になる。
3 確かに継続的に生活する場所である建物内において、首吊り自殺があったという事実は民法五七〇条が規定する物の瑕疵に該当する余地があると考えられるが、本件においては、本件土地について、かつてその上に存していた本件建物内で平成八年に首吊り自殺があったということであり、嫌悪すべき心理的欠陥の対象は具体的な建物の中の一部の空間という特定を離れて、もはや特定できない一空間内におけるものに変容していることや、土地にまつわる歴史的背景に原因する心理的な欠陥は少なくないことが想定されるのであるから、その嫌悪の度合いは特に縁起をかついだり、因縁を気にするなど特定の者はともかく、通常一般人が本件土地上に新たに建築された建物を居住の用に適さないと感じることが合理的であると判断される程度には至っておらず、このことからして、原告が本件土地の買主となった場合においてもおよそ転売が不能であると判断することについて合理性があるとはいえない。
 したがって、本件建物内において、平成八年に首吊り自殺があったという事実は、本件売買契約において、隠れた瑕疵には該当しないとするのが相当である。
4 同じく、右事実が隠れた瑕疵に該当しない以上、右事実について、被告らに説明義務を認めることはできず、また、本件売買契約について、原告に要素の錯誤があるともいえない

(裁判例4) 
[東京地方裁判所平成17年(ワ)第20687号売買代金返還等請求事件平成20年4月28日]

(略)飛び降り自殺があった物件であることは,価格にも一定の影響があることは明らかであるから,相手方がこれを購入するか否かを検討する際に告知,説明しておく必要のある事柄であることも明白である。したがって,被告には,本件売買契約の約2年前に本件建物から居住者が飛び降り自殺する本件死亡事故があったことを知っていた以上,不動産を取り扱う専門業者として,当該不動産を売り渡そうとする相手方である原告に対し,当該事実を告知,説明すべき義務があったというべきである。

(裁判例5)
[東京地方裁判所平成19年(ワ)第30753号損害賠償請求事件平成21年6月26日]

2 被告の調査説明義務違反の有無(争点2)について
(1) 原告は,本件建物には本件自殺という瑕疵が存在することを前提とした上で,被告が宅地建物取引業等を営んでいることから,売主として本件自殺という事実の有無を本件売買契約以前に調査し,買主であった原告に説明すべき義務があったとして,被告には,債務不履行があると主張している。
(2) しかしながら,以下の理由により,これを採用することはできない。
ア これまで認定したとおり,本件においては,本件不動産を訴外会社に売却した相続財産管理人のE弁護士も,訴外会社も,その際の仲介業者であるGもCも,本件自殺のことは何も知らず,敷地内の稲荷神社の撤去の際にも何の話も出なかったというのである(乙1,7号証)。
イ また,後に,Cが平成18年12月7日ころからいろいろ調査を開始して,結果的に同月22日ころ,隣のD精肉店の夫婦が事情を知っていることが判明したものの,Cが調査した上で確認するまではD精肉店の夫婦も事実を明らかにしていなかったこと,さらに,翌19年1月中旬ころから元所有者の次女に事情を確認するため接触を試みたものの,同年2月1日には詮索しないでほしいとして協力が得られなかったというのであるから(甲14号証),本件自殺の事実は,本当に限られた者だけが知っていた事実で,誰も公になるのを望まなかったため,いわば秘密に近い事実であったと考えるのが相当である。
ウ 上記の諸事情を勘案すれば,本件売買契約当時において,被告だけが本件自殺について当然に知り得たとするのは妥当ではなく,被告において調査義務違反や説明義務違反があったとする原告の主張を採用することはできない(原告自身も不動産の賃貸借や売買やその仲介を業とする会社であり,しかも,その資本金の額は被告の6倍以上で,被告よりは手広く不動産取引を行っている会社であるから,被告だけを非難するのは,その意味からも相当ではない。)。
(3) そうすると,本件において,被告に債務不履行はないというべきであるから,本件売買契約書(甲5号証)16条1項に基づく違約金の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。

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