元夫は「もう20歳越したから養育費はないんだよ」と言っています。
本当にそうなのですか。
誤解ありがち度 4(5段階)
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A 杓子定規に言えば「養育費」は請求できない,となります。
しかし「類推適用」や「扶養料請求権」で解決です!
【20歳以上の子の「養育費」】
私(妻)は(元)夫と離婚しました。
子供は私が引き取りました。
子供は20歳になりましたが,まだ大学生で経済的に独立したわけではありません。
元夫に養育費の請求はできるのですか。
→杓子定規に考えると請求できません。
「養育費」というものは,未成年の子の監護権が父母のどちらか一方となっている場合,に生じます。
あくまでも「監護」とセットになるものです(民法766条)。
正確に言えば「養育費は,監護者自身の権利」ということになります。
次に,「監護権」は,「親権」の内容の1つです(民法820条)。
「親権」の対象となるのは「成年に達しない子」です(民法818条1項)。
「成年」とは「年齢20歳」です(民法4条)。
まとめて等式で表します。
20歳未満=未成年=親権・監護権の対象=養育費の対象
逆に言うとこうなります。
20歳に達した=「監護」対象ではない=「養育費」対象ではない
以上はあくまでも純粋な理論操作の話しです。
[民法]
(成年)
第四条 年齢二十歳をもって、成年とする。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
2(略)
(親権者)
第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2(略)
(監護及び教育の権利義務)
第八百二十条 親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
【20歳以上の子の生活費負担】
私(妻)は(元)夫と離婚しました。
子供は私が引き取りました。
子供は20歳になりました。
元夫に子供の生活費の請求はできなくなるのですか。
→「子供からの扶養料請求」が認められます。また「養育費」を認める見解もあります。
理論を杓子定規に当てはめると,20歳以上の子について「養育費」は成立しません。
「監護」(民法766条)の対象ではないからです。
しかし,現実的には,大学生など,経済的に独立をしていなくて,「サポート」が必要な状況というのは存在します。
その場合は,「母親を通して」ではなく,「子供自身の権利として」生活費を請求することができます。
素朴に,年齢に関わらず,親子間では「扶養」の義務があるからです(民法877条1項)。
ただ,このような解釈も,考えてみれば,窮屈な感じがします。
そこで,端的に,「監護」とニアリーイコール,つまり「(民法766条の)類推適用」によって「養育費」として認める,という見解もあります。
[民法]
(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2(略)
【養育費の終期の記載例】
私(妻)と夫は離婚することにしました。
子供の養育費を決めて書面に調印しておこうと思います。
20歳までは「養育費」,20歳以上は「扶養料」として記載すべきでしょうか。
→理論上はそのとおりですが,一般的には「養育費」として合意します。
確かに,子供の生活費の負担については,理論上,20歳前後で,適用条文が変わります。
20歳未満→「監護」の一環→「養育費」
20歳以上→子供自身の扶養請求権(=扶養料)
そして,父母が「子供の生活費」について見解が異なって,紛争となっている場合には,「理論の闘い」も生じます。
しかし,父母で金額について合意して納得している,という場合は,「理論の闘い」は通常生じません。
父母が納得している以上「養育費」で統一しても問題は生じません。
実際に,一般的な離婚協議書においては「養育費」として子供が何歳までかを記載します。
具体的には,次のような規定にすることがよくあります。
<養育費の終期についての記載例>
・「20歳に達する日の属する月まで」
・「大学を卒業する日が属する月まで」
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