借地終了と建物買取請求権~「誠実な借地人」だけ~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 借地契約が終わった際,借地人が「建物買取請求」を通知してきました。
  建物を買わないといけないのですか。


誤解ありがち度 3(5段階)
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A 自動的に「建物を買った」ことになります。

【借地終了時の建物買取請求権】
私の所有地は貸地となっていました。
更新拒絶の通知をしました。
借地人は,契約終了自体は認めていますが,「建物買取請求」を通知してきました。
古い建物なのですが,買い取る必要があるのでしょうか。

→「建物買取請求」の通知により,自動的に売買が成立,という扱いになります。

建物買取請求権は,借地借家法13条,借地法4条2項に規定されています。
借地契約が「更新されない場合」に,借地人から地主に請求できることになっています。
そして,厳密には「買い取って下さい」という「提案」ではなく,通知により売買が成立した(のと同じ状態となる)ものとして扱われます。
このような,一方的意思表示(アクション)で効果が生じるものを「形成権」と呼んでいます。
理論的には「拒絶する」ということはあり得ません。
ただし,現実の場面では,双方の意向を交換する,つまり「協議する」という方がむしろ多いです。

[借地借家法]
(建物買取請求権)
第十三条  借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
2(略)

[借地法]
第4条(略)
2 借地権者ハ契約ノ更新ナキ場合ニ於テハ時価ヲ以テ建物其ノ他借地権者カ権原ニ因リテ土地ニ附属セシメタル物ヲ買取ルヘキコトヲ請求スルコトヲ得
3(略)

【債務不履行解除と建物買取請求権】
「建物買取請求」を借地人がしてきても,買わなくて良い,ということはないのでしょうか。

→借地契約の終了の仕方が「債務不履行解除」の場合は,建物買取請求権は行使できません。

条文上,建物買取請求権が行使できるのは「存続期間の満了」で「更新がないとき」です。
そうすると「解除」の場合も,これと似ているので(類推)適用できそうな感じがします。
正確には,地代不払やその他の違反を原因として地主が「債務不履行解除」を行った場面です。
実際に,このような主張がなされ,最高裁まで行って,最終判断された判例があります(後掲)。
結論としては,「債務不履行解除の場合は建物買取請求権は行使できない」というものです。
理由をまとめると次のとおりです。
<最高裁で建物買取請求権が否定された理由>
この制度の趣旨は「誠実な借地人を保護するため」
→「債務不履行解除の場合,借地人に違反があったわけだから誠実ではない」
→適用されない

[最高裁判所第3小法廷昭和32年(オ)第840号建物収去土地明渡請求事件昭和35年2月9日]
借地法四条二項の規定は誠実な借地人保護の規定であるから、借地人の債務不履行による土地賃貸借解除の場合には借地人は同条項による買取請求権を有しないものと解すべきである(借家法五条についての昭和二九年(オ)六三七号同三一年四月六日第二小法廷判決、集一〇巻四号三五六頁、昭和三一年(オ)九六六号同三三年三月一三日第一小法廷判決、集一二巻三号五二四頁参照)。これと同一の見解に立つ原判決の判示は相当であり、所論は理由がない。

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