表題部登記~「所有者」は対抗力ないが重要~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 表示の登記とはどんなものなのですか。
  「所有者」という欄が気になります。


本年もラストの日になりました。
本ブログをご愛顧いただいた皆様,大変ありがとうございました。
12年も引き続きよろしくお願い致します。

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A 表示の登記とは,不動産の物理的状況の登記です。
  「表題部」に記録(登記)されます。
  「所有者」は対抗力はないのですが,重要な意味を持つこともあります。


【表示の登記(表題部登記)】
表示の登記とはどのようなものですか。

→土地・建物についての物理的な状況の登記のことです。

不動産については登記システムによりいろいろな情報が記録→公開されることになっています。
登記される情報を分類してみます。
<登記事項の分類>
表示に関する登記
 →物理的状況の情報です。
  「表題部」に記録されます。
  「表題部登記」ということも「表示の登記」ということもあります。
権利に関する登記
 →所有権や担保権(抵当権等),用益権(地上権等)の情報です。
  所有権は「甲区」,その他の権利は「乙区」に記録されます。

【表題部登記事項】
表題部には,具体的にどのような情報が記録されるのですか。

→表題部は物理的状況に関するデータが登記されます。「所有者」も登記事項です。

表題部は物理的状況を記録するところです。
<主要な表題部登記事項>
土地
 所在,地番,地積,地目,所有者
建物
 所在,家屋番号,床面積,構造,所有者

権利関係は甲区,乙区に登記されます。
表題部は権利関係を記録するセクションではありません。
しかし,「所有者」の欄はあり,登記することになっています。

【表題部所有者の意味】
表示の登記に記録される「所有者」はどんな効力があるのですか。

→表題部の「所有者」登記は「対抗力」はありません。しかし,所有者が誰か,不明確なケースではヒントの1つとなります。

登記上の「所有者」というのは多くの場合,所有権の強力な裏付けとなります(対抗力;民法177条)。
現実に,不動産売買で代金と交換に登記を移転するのが一般的です。
ここでの「所有権の登記」は,あくまでも「甲区」のものです。
表題部の「所有者」は「所有権の登記」ではありません。
ただし,まったく無意味かというとそんなこともありません。
実際に,甲区の登記がなされていないケースや,甲区に所有権登記がなされていても,不正であると思われるようなケースにおいては,紛争となり,所有権の証明が必要となります。
こんな場合は,「表題部所有者」が証明の有力な証拠として使われることになります。
逆に言えば,「表題部所有者」となっているだけでは所有権の証明として成立しない可能性もあります。
また,甲区に正式に所有権の登記(保存登記)を行う場合は,原則として「表題部所有者」だけが申請できることになっています(不動産登記法74条1項1号)。
なお,借地上の建物に,表題部所有者が登記されていれば,「借地権」の対抗要件になるという判例もあります。

[民法]
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

[不動産登記法]
(所有権の保存の登記)
第七十四条  所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
一  表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
二  所有権を有することが確定判決によって確認された者
三  収用(土地収用法 (昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律の規定による収用をいう。第百十八条第一項及び第三項から第五項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
(略)

【表示登記申請時の「所有者」の裏付資料】
表示の登記の「所有者」は自由に設定できるのでしょうか。

→表題部の登記を行う場合,「所有者であること」について「簡易的な資料」が必要とされます。

通常,表示の登記を新たに行うのは,新築建物の場合です。
この場合,所有者であることの一定の裏付けとして次のような資料が必要とされます。
<建物新築の表示登記申請の必要書類(例)>
・建築確認申請書
・確認済証
・検査済証
・工事完了引渡証明書
・火災保険の保険証書

【登記上の所有者と真の所有者の齟齬】
表示の登記の「所有者」が実際の所有者と違っているとどうなりますか。

→事後的に,「所有権の所在」が不明になり,紛争になったり,意図的に不正な登記をしたとして公正証書原本不実記載等の罪に該当したりします。

実際に,表題部所有者が,実際の所有者とは異なる場合は実在します。
親族間や借地の場合で,形式的に名義を貸す,といったケースです。
このような場合,後から,複数の者が「実際の所有者である」と主張して紛争になることがあります。
当初は仲が良くても,長期間が経過したり,相続で代が変わった時に問題が発生することが多いです。
また,意図的に真実とは異なる登記をした,として公正証書原本不実記載等の罪(刑法157条1項)が成立する可能性もあります。
なお,「実際の所有者と登記上の所有者の食い違い」については次のような例外があり,これらは合法的です。
<形式的な登記上の所有者の例>
・譲渡担保
・所有権留保
・仮登記担保

[刑法]
(公正証書原本不実記載等)
第百五十七条  公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(略)

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