離婚成立よりも前に,共有物分割で解消できないのですか。
ちょっとだけ込み入っています。
誤解ありがち度 4(5段階)
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A 原則「財産分与」です。
特殊事情下で「共有物分割請求」で行くとしても「権利濫用」の伏兵に注意!
【財産分与と共有物分割】
夫婦で共有となっている自宅があります。
離婚の話とは別に共有の解消を進めることはできますか。
→原則として,離婚とは関係なく,共有物分割請求(訴訟)が可能です。
理論上,離婚や離婚に伴う財産分与,と,共有物分割請求は別の手続きです。
どちらを先にすべき,というルールはありません。
(この点,遺産分割と共有物分割,の2つの手続きでは,遺産分割が優先するという判例があります。注意が必要です)
ただし,夫婦間で共有物分割請求をする,ということは夫婦間の関係が相当悪化しているはずです。
このような背景を考えると,「離婚,財産分与を優先すべきだ」とも思えます。
しかし,状況によっては,「共有物分割を優先すべき」ということもあり得ます。
そこで,財産分与,共有物分割には優劣を付けないと考えることになります(裁判例後掲)。
<財産分与と共有物分割の優劣>
→原則として,どちらが優先,ということはない。いずれの手続き利用も可能。
[東京地方裁判所平成20年(ワ)第17730号共有物分割請求事件平成20年11月18日(抜粋)]
1 被告は,夫婦共同財産についての清算は,財産分与の審判の申立て又は人事訴訟手続によるものであって,夫婦が共有持分を有する共有財産がある場合にも共有物分割請求訴訟を提起することは許されないと主張するが,そのように解すべき法律上の根拠はなく,被告の主張は採用することができない。
【財産分与・共有物分割の選択】
離婚・財産分与という手続きと,共有物分割請求という手続きのどちらを選ぶかはどうやって決めれば良いのでしょうか。
→通常は離婚・財産分与の手続きを取るべきです。
一般的には,夫婦の関係が悪化している場合,夫婦間の全体的な清算(=離婚)を優先させる方が解決として妥当です。
夫婦共有財産(実質的な共有財産)のすべてについて,協議や審理が行われ,その処理が決められることになります。
仮に共有物分割請求を先行させた場合,対象となる財産は特定の財産(不動産)のみです。
それ以外の財産については,改めて財産分与が必要となるからです。
しかし,仲が悪くても離婚できない,という場合があります。
典型例は「有責配偶者が離婚を求めていても他方(相手方)が離婚を拒否している」というようなケースです。
この場合には,離婚請求自体が認められないのが原則となります。
当然,離婚が前提となる財産分与もなされないことになります。
そこで,共有物分割請求だけ先行させる,というニーズが生じるのです。
【権利濫用による共有物分割請求の棄却】
夫婦仲が険悪で離婚したいと思っています。
夫婦共有の財産に妻が住んでいます。
私(夫)から,共有物分割請求を提訴できるのでしょうか。
→原則として,提訴可能です。しかし,状況によっては,権利濫用として認められないこともあります。
財産分与,共有物分割請求はどちらも選べる,というのが原則です。
しかし,共有物分割請求を選択することが,著しく不当と言えるようなケースでは,権利濫用として共有物分割請求自体が認められないこともあります(請求棄却;裁判例後掲)。
この裁判例では,個別的な事情から,ということが考慮されています。
<裁判例において権利濫用の根拠とされた事情と判断>
・妻・長女を対象不動産に置き去りにしている
・妻は収入に乏しい
・長女は精神疾患である
・夫が妻に支払っている婚姻費用分担金がゼロまたは少ない金額である
・抵当権が設定されている→形式的競売によって得られる金額は多くない(消除主義が前提)
→「負債整理」という夫の主張は不合理
↓
・夫から妻への攻撃的な意図がある
・共有物分割を認めた場合,妻(・長女)を苦境に陥れることになる
<まとめ>
夫婦間の共有財産
→財産分与(離婚)によるべき。
離婚請求ができない特殊事情があれば,共有物分割請求を選択すべき。
しかし,「権利濫用」を慎重にケアすべき。
[大阪高等裁判所平成17年(ネ)第279号共有物分割請求控訴事件平成17年6月9日(抜粋)]
四 権利の濫用の主張の当否(争点(3))について
(1) 民法二五六条の規定する共有物分割請求権は、各共有者に目的物を自由に支配させ、その経済的効用を十分に発揮させるため、近代市民社会における原則的所有形態である単独所有への移行を可能にするものであり、共有の本質的属性として、持分権の処分の自由とともに、十分尊重に値する財産上の権利である(最高裁判所大法廷昭和六二年四月二二日判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)。
しかし、各共有者の分割の自由を貫徹させることが当該共有関係の目的、性質等に照らして著しく不合理であり、分割請求権の行使が権利の濫用に当たると認めるべき場合があることはいうまでもない。
(2) 以上の観点に立って本件について、被控訴人の分割請求権の行使が権利の濫用に当たるか否かについて検討する。
控訴人が指摘するとおり、本件不動産は、被控訴人が控訴人との婚姻後に取得した夫婦の実質的共有財産であり、しかも現実に自宅として夫婦及びその間の子らが居住してきた住宅であり、現状においては被控訴人が別居しているとはいえ、控訴人及び長女春子が現に居住し続けているものであるから、本来は、離婚の際の財産分与手続にその処理が委ねられるべきであり、仮に、同手続に委ねられた場合には、他の実質的共有財産と併せてその帰趨が決せられることになり、前記認定に係る、資産状況及び控訴人の現状からすると、本件不動産については、控訴人が単独で取得することになる可能性も高いと考えられるが、これを共有物分割手続で処理する限りは、そのような選択の余地はなく、被控訴人が共有物分割請求という形式を選択すること自体、控訴人による本件不動産の単独取得の可能性を奪うことになる。
そして、前記認定のとおり、被控訴人は、離婚調停の申立て自体は経由しているものの、いまだ離婚訴訟の提起すらしておらず、現に夫婦関係が継続しているのであるから、本来、被控訴人には、同居・協力・扶助の義務(民法七五二条)があり、その一環として、控訴人及び病気の長女春子の居所を確保することも被控訴人の義務に属するものというべきである。ところが、被控訴人は、病気のために収入が減少傾向にあるとはいうものの、依然として相当額の収入を得ているにもかかわらず、これらの義務を一方的に放棄して、控訴人や精神疾患に罹患した長女の春子をいわば置き去りにするようにして別居した上、これまで婚姻費用の分担すらほとんど行わず、婚姻費用分担の調停成立後も平成一六年九月以降は、月額わずか三万円という少額しか支払わないなど、控訴人を苦境に陥れており、その結果、控訴人は、経済的に困窮した状況で、しかも自らも体調が不調であるにもかかわらず、一人で春子の看護に当たることを余儀なくされている。その上、本件の分割請求が認められ、本件不動産が競売に付されると、控訴人や春子は、本件不動産からの退去を余儀なくされ、春子の病状を悪化させる可能性があるほか、本件不動産には前記認定のように抵当権が設定されているため、分割時にその清算をすることになり、控訴人と春子の住居を確保した上で、二人の生計を維持できるほどの分割金が得られるわけでもないし、控訴人は、既に満六〇歳を過ぎた女性であり、しかも原田病や神経症のため通院治療を受けていて、今後、稼働して満足な収入を得ることは困難であるから、経済的にも控訴人は一層苦境に陥ることになる。
これに対し、被控訴人は、現在、進行した前立腺癌に罹患し、その治療などのため、収入が減少傾向にあり、借入金の返済が徐々に困難になっていることから、余命を考慮して、負債を整理するため、本件不動産の分割請求をしているものである旨主張している。
被控訴人の病状からして、上記のような考えを持つこと自体は理解できないでもないが、前記認定事実によっても、その主張自体からも、現時点で、金融機関から競売の申立てを受けているわけでもなく、直ちに本件不動産を処分しなければならないような経済状態にあるとは認め難いし、仮に、そのような必要があるとしても、事務所不動産を先に売却して、事務所自体は他から賃借することも考えられるのであって、どうしても負債整理のために本件不動産を早期に売却しなければならない理由も認められない。また、上記のような困難な状況にある妻である控訴人や子供らの強い反対を押し切り、控訴人らを苦境に陥れてまで負債整理を行わなければならない必然性も見出し難い。
(3) 以上の諸事情を総合勘案すると、被控訴人の分割の自由を貫徹させることは、本件不動産の共有関係の目的、性質等に照らして著しく不合理であり、分割の必要性と分割の結果もたらされる状況との対比からしても、被控訴人の本件共有物分割請求権の行使は、権利の濫用に当たるものというべきである。
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