共有物分割で競売にするってできるのですか。
法律の盲点。「決まってない」から予測に苦労します。
誤解ありがち度 5(5段階)
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A 競売を命じる判決を取ること自体は可能です。
ただ,競売申立後の扱いがやや不安定。
原則は,担保権者へ配当→担保抹消,なのですが。
例外もあります。
【形式的競売における担保権の処理】
住宅ローンが残ったままです。
共有物分割で競売になったらどうなるのでしょうか。
→売却代金から,優先的に担保権者(住宅ローン金融機関)に返済がされる運用が主流です。
担保権が付いた状態で共有物分割による競売が行われた場合の処理の問題です。
担保権に基づく競売であれば,当然,売却代金から担保権者への弁済(配当)が優先して行われます。
しかし,共有物分割請求訴訟の判決に基づく競売は,担保権者が回収を要請しているものではありません。
このような特殊性があるので,一般の競売と区別して「形式的競売」と呼ぶこともあります。
形式的競売の際の担保権の処理について,実は,明確・確定的な決まりは現時点ではありません。
というのは,民事執行法上,形式的競売についてのルールは,「担保権の実行」を流用するということだけしか規定されていないからです(民事執行法195条)。
考え方は2とおりあります。
<形式的競売の担保権の処理に関する説>
1 消除主義
担保権者への配当を行う。担保権は消滅する。
2 引受主義
担保権者への配当を行わない。担保権は存続する。
買受人が担保権の負担の付いた状態で購入する。
[民事執行法]
(留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売)
第百九十五条 留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。
(不動産執行の規定の準用)
第百八十八条 第四十四条の規定は不動産担保権の実行について、前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第三目の規定は担保不動産収益執行について準用する。
【消除主義と引受主義の選択(判決段階)】
ローンの付いたままで共有物分割→競売,となった場合,ローンは残るのでしょうか。それとも抹消されるのでしょうか。
→どちらの方式を採るかは,執行裁判所が判断する,ということになっています。
共有物分割請求訴訟で,代金分割(換価分割)という結論の判決が下されることがあります。
この場合,担保権が付いている場合,これを抹消する前提(消除主義)を採るか,存続する前提(引受主義)を採るかは,判決には書かれません。
その後,実際に競売の手続きを行うのは,判決を出した部署ではなく,別の部署です。
執行裁判所,と呼びます。
そして,肝心の,消除主義か引受主義か,どちらを採るかは執行裁判所が独自に判断をする,ということになっています(裁判例後掲)。
むしろ,判決では指定されない,という方が分かりやすいです。
[東京高等裁判所昭和60年(ネ)第343号建物所有権移転登記手続、預り金請求控訴事件昭和61年3月24日(抜粋)]
なお、民法258条の規定による換価のための競売については、民事執行法第一九五条により担保権の実行としての競売の例によるものとされているが、目的物件に設定されている抵当権が売却により消滅するものとすべきか否かは、本来、当該競売裁判所が同法の規定に基づき決定すべきものと解されるから、右抵当権の消滅を前提としたその余の部分は不相当であって取消しを免れず、その限り(原判決が認容できないこと)において本件控訴は一部理由がある
【消除主義と引受主義の選択(競売実行段階)】
実際に,共有物分割の競売を申し立てると,ローンはどのような扱いになるのでしょうか。
→担保権者への配当を行い,担保権は消滅(抹消)する,という消除主義が主流です。
少なくとも,東京地裁の執行センターでは,消除主義で運用されています。
勿論,これは条文などの明確なルールに基づくものではありません。
個別的事情,要請によって判断が異なる場合もありましょう。
実際に個別的事情を考慮して引受主義の採用を前提とした判決(裁判例)もあります(後掲)。
この裁判例においては,次のように考えられ,消除主義は採用されず,引受主義が採られました。
<引受主義を採った裁判例において考慮された特殊性>
1 被担保債権の債務者が被告であった
2 仮に形式的競売で担保権者への配当を行った場合(消除主義)の不都合性
ア 被告の債務が減る
イ 原告の配当が減る
→不公平
[京都地方裁判所平成21年(ワ)第909号共有物分割請求事件平成22年3月31日(抜粋)]
1 争点(1)(本訴請求が権利の濫用に当たるか,あるいは訴えの利益を欠くか。について
上記第2,1(4)(5)の事実によれば,本件土地のみについて共有物分割のための競売を申し立てたとしても,現時点の価格からすれば,競売手続が無剰余取消しとなる可能性がある(民事執行法195条,188条,63条1項2号,2項本文)。しかし,優先債権者である本件根抵当権者が同意をすれば手続は取り消されない(同法63条2項ただし書)し,原告らは本訴において本件土地について競売を命ずる判決を得たとしても,直ちにこれに基づく競売の申立てをすべき義務を負うものではなく,将来的には,被担保債権がFの弁済により減少し,あるいは不動産市況の変化により,剰余金を受け取る可能性が残されているのであるから,近時の状況からすれば前記の取消しの可能性があるからといって,本訴請求が権利の濫用に当たる,あるいは訴えの利益を欠くということはできない。
(略)
2 争点(2)(全面的価格賠償の方法による共有物分割の適否)について
(略)
このように考えると,共有物分割の対象となる不動産の価格を検討するに当たって,その不動産に設定されている被担保債権額をどのように考慮するかについては,第一に,その被担保債権に係る債務者の無資力のリスクの程度を検討すべきであり,考慮すべきリスクがあるとすれば,それを共有者の間でどのように負担させるのが公平であるかという点からの検討も必要であるというべきである。
これを本件についてみると,本件根抵当権の債務者はFであり,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,Fは,順調とはいえないまでも,本件根抵当権の被担保債権に係る債務の弁済を継続しており,直ちに無資力に陥る状況にあるとは認められない。また,Fが無資力になるリスクがあるとしても,Fは被告らの同族会社というべきものであって,そのリスクは被告らが負うのが公平であり,原告らに負わせるべきではない。
【オーバーローンと形式的競売】
住宅ローンがオーバーローンとなっています。
この状態で共有物分割での競売ができるのでしょうか。
→原則として,無剰余差押の禁止に抵触し,競売できないと思われます。
担保権者にも配当し,担保権が消滅するという前提(消除主義)の場合,オーバーローンだと,ローン債権の全額が弁済(配当)されません。
ローンの一部が残ることになります。
逆に,共有者で分配する原資がゼロとなります。
「不動産だと分けにくいので現金化して分けよう」という換価分割の意味がなくなります。
民事執行法上も似ている趣旨のルールがあります。
オーバーローンの物件については,配当を受けられる担保権者は申立ができますが,配当を受けられない(と予想される)債権者は差押が禁止されています(民事執行法63条)。
結局,オーバーローンの場合は,共有物分割による形式的競売でも原則的に,「無剰余差押」として,競売申立ができない,ということになります。
[民事執行法]
(剰余を生ずる見込みのない場合等の措置)
第六十三条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第四十七条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
一 差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
二 優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。
2 差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。
一 差押債権者が不動産の買受人になることができる場合
申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
二 差押債権者が不動産の買受人になることができない場合
買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供
【オーバーローンでも形式的競売が可能な場合】
オーバーローンでも競売できるという例外はないのでしょうか。
→消除主義を採用しない,担保権者の同意を取り付けた,という場合であれば競売申立ができます。
オーバーローンのため無剰余差押の禁止に抵触するのは,あくまでも消除主義を前提とするものです。
引受主義が採用されれば,理論上,競売申立はできるということになります。
担保権はそのまま存続する,つまり,純粋に所有者だけが変更する,ということになります。
ローン残債の金額は,他に影響を与えないということになるのです。
つまり,引受主義の場合,民事執行法63条は適用されないと考えられます。
次に,消除主義であったとしても,担保権者の同意を得れば,無剰余差押の禁止の規定は適用されません(民事執行法63条2項但書)。
「担保割れ確定」という不利益を受ける債権者が同意すれば問題ないからです。
(担保権者は元々オーバーローンでも競売申立ができます)
【引受主義での形式的競売の特殊性】
担保権が残る前提で競売になったら一体どうなるのでしょうか。
買い手が付くのでしょうか。
→引受主義で換価分割(代金分割)がなされたと仮定すると,共有者のうち1人が入札し,安く買い取るチャンスです。
共有者の1人が安く不動産全部を取得できる可能性が高いと言えます。
このようなケースでは,入札する者の立場としては,非常に不確定要素が多いです。
実質的な負担が未確定です。
仮に,被担保債権のうち大部分が返済されないことになれば,競売で強制的に不動産を失い,手に入る剰余金も僅かかゼロとなることになり得ます。
ですから,入札者は関係者以外では居ないか,居ても入札額は著しく低いことになりましょう。
元々共有者であった者くらいしか入札しない,ということも十分に考えられます。
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