「一時使用目的」として短期間で貸せるのはどのような場合ですか。
以前は「一時使用目的」の解釈バトルが流行ったのですが・・・今は廃れています。
誤解ありがち度 3(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る
↓ランキングはこうなってます↓
↓ このブログが1位かも!? ↓


↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑
A 「短期限定」ということについて客観的・合理的理由があることが条件です。
【一時使用目的賃貸借】
自動車展示場として土地を3年契約で貸しました。
賃借人が簡易な事務所を建てています。
借地として契約期間は30年となってしまうのでしょうか。
→「一時使用目的」として借地扱いにならない→3年契約として有効,と思われます。
土地の賃貸借契約の目的が「一時使用の目的」であることが明確であれば,借地借家法の適用はありません(借地借家法25条(借地法9条))。
つまり「借地」ということにはなりません。
そうすると,最低期間制限(30年)も適用になりません。
契約書で「3年」なら「3年間の契約」として有効となります。
[借地借家法]
(一時使用目的の借地権)
第二十五条 第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。
[借地法]
第9条 第2条乃至前条ノ規定ハ臨時設備其ノ他一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合ニハ之ヲ適用セス
【一時使用目的の判断基準】
どのような場合に「一時使用目的」となるのでしょうか。契約書に「一時使用目的」と書いておけば良いのでしょうか。
→「客観的」+「合理的」な理由が必要です。
借地借家法は,借主保護のための法律です。
仮に契約書の記載で簡単に「適用を排除」できるとすると,「適用排除」とする契約(書)が流行ってしまいましょう。
それでは意味がないので,借地借家法は契約(合意)で排除できないのが原則,とされています(強行法規性)。
つまり「一時使用目的」という目的がハッキリしている場合だけ,そのルールが適用されるのです。
<一時使用目的の適用条件>
短期間に限り賃貸借を存続させる,という合意について客観的・合理的な理由が存在する
<判断要素の例>
・土地の利用目的
・地上建物の種類、設備、構造
・賃貸期間
[最高裁判所第1小法廷昭和42年(オ)第666号請求異議事件昭和43年3月28日(抜粋)]
その目的とされた土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等、諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的な理由が存する場合にかぎり、右賃貸借が借地法九条にいう一時使用の賃貸借に該当するものと解すべく、(略)
【臨時設備・仮設建物所有に目的を限定したケース】
暫定的な建物が存在する場合,借地と扱われてしまうのでしょうか。
→背景事情等から,暫定的・一時的な建物,ということが分かる状態であれば,一時使用目的賃貸借となりましょう。
判例では,「医学就業中」限定という前提で土地を貸したケースについて,一時使用目的と認めたものがあります。
この事例においては,期間を3年としており,実際には更新や賃料(地代)増額もなされていました。
更新や賃料増額は,「契約期間を長期化する意図」があるという認定につながる方向です。
しかし,更新や賃料増額は一時使用目的を否定することにはならないと判断されました。
[最高裁判所第3小法廷昭和35年(オ)第1066号家屋収去土地明渡請求事件昭和37年2月6日(抜粋)]
而して、原審確定の右事実関係の下においては、被上告人の長男が医学修業中であり、卒業後本件土地にて医家の業務を開始することを予定して居つたので、地主であり、賃貸人である被上告人が、このことを考慮し、賃貸借の期間を右医業開始確定の時までとするため、本件土地上に建築せらるべき建物を戦災復旧用建坪一五坪のバラック住宅と限定し、特に条件を一時使用とする旨を契約書に明記してなされた本件土地の賃貸借契約は、たとえ右医家開業の時期が明確に定つて居らなかつたため、一応、賃貸借期間を三年と定め、その後医業開始に至らなかつたので、その期間を更新し或はその間に賃料を増額した事迹があつたとしても、これを一時使用のためのものとなすに妨げない。
【土地・建物売却時のリースバック】
土地を売却したば,そこに取り壊し予定の建物があり,旧所有者が使っているようなケースでは,「借地」となってしまうのでしょうか。
→一時使用目的賃貸借,と認められると思われます。
土地の売買契約後,実際に買主が土地を利用するまでにタイムラグがある,というケースもあります。
例えば,土地上に古い建物があり,取り壊しまでの一定期間だけ売主が住んでいる,という場合です。
このような場合,土地の売買契約は先行させ,その後一定期間は,買主が売主に「土地を貸す」ということが行われます。
売却とは逆方向に賃貸借が行われるので「リースバック」と呼ぶことがあります。
この賃貸借契約により,売主が所有する建物の占有権原を確保することになります。
実際に,同様のケースで,判例では,建物が取り壊し予定となっていることを重視し,このリースバックについて,一時使用目的であることを認定しました。
【土地が長期利用不可能というケース】
区画整理の対象地であるため,土地を長期間利用することはできません。
そこで,換地までの間限定で,土地を貸した場合,後から「借地」となってしまいますか。
→「長期間の利用が不可能」→一時使用目的が明白,と考えられるでしょう。
区画整理など,公的なプロジェクトにより,長期間の利用が不可能であることが明白な土地があります。
このような場合は,その土地を賃貸しても,客観的に「長期間の利用は想定されていない」ということが明らかです。
原則として,「一時使用目的賃貸借」となります。
しかし一方,区画整理の具体的な内容によっては,土地の位置・形状が大幅には変わらないということもあります。
その場合,土地の賃貸借について「区画整理後も賃貸借が継続する」ということも想定できます。
そこで,一時使用目的とは認められず,その結果,借地として扱われる可能性もあります。
[最高裁判所第1小法廷昭和30年(オ)第297号建物収去土地明渡請求事件昭和32年2月7日(抜粋)]
原判決は、訴外Aと被上告人との間の判示旧宅地の賃貸借は一時使用を目的とするものであることを認め、右賃貸借は、昭和二三年六月二三日右土地につき換地予定地の指定通知がなされると同時に終了したものであり、従つて上告人が本件建物を競落した昭和二五年九月一二日当時、訴外Aは右土地の換地である本件土地について借地権を有しなかつたものであることを認定し、また、右建物の競売手続において、建物の敷地について借地権あるものとして手続が進行せられたものであることを認むベき証拠はなく、建物の売買取引において特に取毀ち売却する旨の条件なきときは常に必ず敷地使用権あるものとして売却せられたものと認むべき根拠もない旨を判示した。原審の右判断は、その挙示の証拠に照らし、これを是認することができる。
【地主側に具体的土地利用計画があるケース】
地主としては,一定期間後に土地を自分で使用する計画があります。
そこで,短期間だけ土地を賃貸した場合,後から「借地」という扱いになるリスクはありませんか。
→土地利用契約が具体化してあり,図面その他の資料で明らかであれば,一時使用目的ということは否定されないでしょう。
判例の理論では,短期間限定,ということが「客観的」であることが要求されています。
「地主側の計画」である場合は,これが具体化していて,かつ,賃借人も了解していることがポイントです。
逆に,賃借人が地主側の計画を知らなかった場合は,一時使用目的が認められないこともあります(最判昭和36年7月6日)。
要は,借地人サイドから見ると「後付けで利用計画を作った」ということになってしまうからです。
このようなケースにおいては,賃貸借契約締結当初より,一定期間後の土地利用計画を地主から賃借人に十分に説明し,かつ,賃貸借契約書にも,契約の概要を記載しておくとベストです。
このように,地主・賃借人が認識を共通にしていることが証拠になっていると,後から「知らない」などという見解の割れを防げるのです。
【裁判上の和解による賃貸借のケース(肯定)】
裁判で争った結果として,期間限定で土地を貸すことになりました。
この場合,一時使用目的と認められるのですよね。
→裁判上の和解であれば「一時使用目的」と認められる可能性が高いでしょう。
裁判上の和解は,裁判官が関与して条項を作成し,調書として完成します。
つまり,裁判官が内容をチェックしているのです。
ここで,短期間限定の賃貸借として成立させた以上,後から新たに起こされた裁判で「短期間限定」という部分が否定されることは通常ないと言えます。
考えてみれば当然でしょう。
裁判官が「短期間限定」として認めた判断を,事後的に別の裁判官が覆すのは整合性が悪いので。
[最高裁判所第1小法廷昭和42年(オ)第666号請求異議事件昭和43年3月28日(抜粋)]
本件賃貸借は被上告人の上告人に対する建物収去土地明渡請求事件についての裁判上の和解において成立したというのであり、また、右賃貸借において期間が一〇年と定められたのは、被上告人が右期間内に限り右土地を賃貸し、上告人がその期間内に限り、右土地を賃借し、その期間経過とともに地上建物を収去して土地を明渡すことを約したに基づくということを認めるに難くなく、右の事実、および本件賃貸借成立にいたる経緯に照らせば、本件和解当事者である上告人と被上告人は、期間の点につき借地法の規定の適用を受くべき契約を締結する意思がなかつたものと認め得るのである。しからば、本件賃貸借は一時使用のものであつたというべく
【裁判上の和解による賃貸借のケース(否定)】
裁判上の和解で土地の賃貸借を決めておけば,後から「借地」とされることは一切ないのでしょうか。
→裁判上の和解による一時使用目的賃貸借が,後から別の裁判で覆された例があります。
この判例で,一時使用目的を否定した決め手は「期間が長い」ということです。
契約期間が22年とされていたのです。
さすがに長いので「短期間限定」という意図は見えない,と判断されたのです。
一般論として,裁判上の和解内容の効力が,事後的に否定されるということはレアケースです。
[最高裁判所第3小法廷昭和44年(オ)第1141号請求異議事件昭和45年7月21日(抜粋)]
土地の賃貸借が借地法九条にいう一時使用の賃貸借に該当し、同法一一条の適用が排除されるものというためには、その対象とされた土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に、短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的理由が存することを要するものである。そして、その期間が短期というのは、借地上に建物を所有する通常の場合を基準として、特にその期間が短かいことを意味するものにほかならないから、その期間は、少なくとも借地法自体が定める借地権の存続期間よりは相当短かいものにかぎられるものというべく、これが右存続期間に達するような長期のものは、到底一時使用の賃貸借とはいえないものと解すべきである。けだし、本来借地法の認めるような長期間の賃貸借を、右にいう一時使用の賃貸借として、同法一一条の規定を排除しうべきものとするならば、その存続期間においては同法の保護に値する借地権において、更新その他個々の強行規定の適用を事前の合意により排除しうる結果となり、同法一一条の適用を不当に免れるおそれなしとしないからである。
したがつて、本件のように、賃貸借期間が二〇年と定められた場合においては、それが裁判上の和解によつて定められたとか、右契約締結前後の事情いかんなどは、賃貸借期間満了の際、更新拒絶の正当事由があるか否かの判断にあたり、その一資料として考慮するのは格別、それらの事情のみから、右賃貸借を一時使用のためのものと断ずることはできない。
【当事者の強い合意による一時使用目的】
地主も賃借人も,借地借家法の適用は絶対に主張しないという前提で賃貸借契約を締結しました。
この場合,一時使用目的,として借地借家法の適用を排除できるのでしょうか。
→当事者の合意,がいかに強くても,意思だけでは「一時使用目的」とは認められません。
実際に,契約書に「一時使用目的」ということが明記されているけれど,現実的な「短期限定の必要性・特殊性」が一切ない,というケースがあります。
このような場合は,短期限定という客観的・合理的理由がない,ということになり,一時使用目的とは認められません。
契約開始当時は,地主・賃借人ともに意向は合致しているのでトラブルになることはないでしょう。
しかし,長期間が経過し,気持ちが変わってきたり,また,相続により当事者に変更が生じると,「借地権の主張」が不意に飛び出すこともあります。
土地の賃貸借があり,賃借人が土地上に建物を建てる,という場合は,十分に慎重に契約内容・契約書の確認・検討を行っておくべきです。
具体的には,現在は,定期借地契約,が整備されています。
この方式で契約すれば,後から解釈が割れるリスクを避けることができます。
逆に「一時使用目的賃貸借」は,利用する場面が一挙に減っています。
<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら
無料お試し版は→こちら
<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ
特集;高次脳機能障害
↓ランキングはこうなってます↓
↓ このブログが1位かも!? ↓


↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑
不動産に関するすべてのQ&Aはこちら
震災特例法に基づく被災者(会社)の負担軽減策。税金の還付請求など。by国税庁
弁護士による不動産の法律相談
個別的ご相談等のお問い合わせは当事務所にご連絡下さい。
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号(土日含めて朝9時~夜10時受付)
0120-96-1040
03-5368-6030