賃貸しようと思いますが,賛成してくれない人が居ます。
多数決で貸しちゃうのは可能ですか。
単純そうで奥が深い!余すことなく披露します!
誤解ありがち度 5(5段階)
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A 「管理」行為として過半数でGO!です。
しかし,そのプロセス,賃貸借契約書の表記は慎重に。
また,賃料がどうなるか,弁護士でも知らない人が大半です。
【共有物の賃貸借契約】
兄弟ABCが3分の1ずつの持分で共有している土地があります。
友人が資材・機材を置く場所として貸して欲しいと言っています。
ABは賛成なのですが,Cが反対しています。
貸してあげることはできないのでしょうか。
→過半数持分権者の賛成があれば賃貸借契約締結は可能です。
賛成のABの持分合計は3分の2です。
持分割合が過半数に達しています。
そこで,共有土地の賃貸借契約締結は可能です。
ただし,期間が5年まで,ということになります。
民法602条の期間(山林以外の土地は5年)を超える賃貸借契約は「変更」として,共有者全員の同意が必要となってしまうからです(民法251条;東京高裁昭和50年9月29日)。
逆にこの期間を超えない賃貸借契約は,「管理」行為として持分割合過半数で決定することができるのです(民法252条本文)。
【「管理」としての賃貸借契約の期間】
5年後までしか資材・機材置き場として使えないということでしょうか。
→賃貸借契約の期間満了時に改めて持分の過半数が同意すれば賃貸借契約を更新(再契約)することができます。
初回の賃貸借契約期間満了時に,再度5年間の賃貸借契約を締結することができます。
条件としては,初回の場合と同様に,持分割合の過半数の同意,です。
結果的に,賛成派が持分割合の過半数を持っていれば,延々と賃貸借契約を継続することが可能です。
【共有者間での意思決定プロセス】
具体的に,Cへの説明や連絡はどのように行ったら良いのでしょうか。
→Cには最低限通知しておくべきです。賃貸借契約の「賃貸人」はABC全員を明記するとベストです。
共有不動産について賃貸借契約を締結する,ということは「管理行為」に該当します。
条文上,過半数で決する,ということだけしか規定されていません。
この点,特に協議や意見表明の機会を与えることすら不要,という考え方が主流です。
しかし,紛争の種を極力排除するために,次のような内容の通知をCにしておくと良いでしょう。
<使用方法決定の通知内容>
ABの同意によって,(ABC全員名義で)賃貸借契約を締結することにしました
さらに,決定する前の段階で,意見を聞くプロセスを書面で行っておくとベストです。
<意見を聞く書面の例>
共有土地について,Dとの間で,期間5年とした賃貸借契約を締結しようと考えています。
共有者全員から意見をうかがい,過半数で決定することにします。
Cの意見をn月m日までに書面でAまでお送り下さい。
勿論,結果的に,Cが反対の意思を書面で送ってきたとしても,ABが賛成である以上,「過半数」は達成→合法的に賃貸借契約締結が可能,となります。
【共有不動産の賃貸借契約書】
共有者間の意思決定はしっかりとプロセスを踏んだとして,賃貸借契約書はどのように作れば良いのでしょうか。特に賃貸人をどうするのかが気になります。
→賃貸借契約書には賃貸人として共有者全員(ABC)を明記しておくとベストです。
仮にCが反対していたとしても,「ABC全員の意思決定として」賃貸借契約締結を実行する,ということは了解していることになります。
まさに「過半数で決する」としている民法252条本文のルールそのものです。
賃貸借契約書にはABC全員を記載しておくべきです。
ここで,反対しているCを除外すると,次のような解釈が生まれるリスクがあります。
<共有者の一部を除外した賃貸借契約書のリスク>
共有者間での意思決定プロセスを欠いている,と解釈されるリスク
共有者の一部が独断で契約締結を実行した,と解釈されるリスク
なお,当然ですが,ABC全員を明記しても,署名・押印はABだけ,となります。
いわば,「貸主はABC全員です。だけど,代表として締結手続という事務作業についてはABが行います」という趣旨です。
より明確化を徹底するために,ABの署名には,「共有者ABC代表」と冠しておくとより良いでしょう。
【反対する共有者の対抗措置】
共有土地を賃貸することに反対している者(C)としては,何か対抗策はないのでしょうか。
→賃料(のうち持分割合分)の請求,共有物分割請求などの法的対抗策が考えられます。
Cの立場からは,「賛成してもいないのに,賃貸を強行され,自分が使えない」という見方になりましょう。
勿論,法律は不公平を放置するわけではありません。
自分の持分が活用できない分,金銭の請求ができます。
理論的には,Cも「賃貸人」の1人に入っています。
そこで,賃料のうち共有持分割合分(この場合3分の1)を受け取る立場にあります。
例えば既にAが賃料を受け取っている場合は,Aに対し,不当利得返還金として請求することになります。
また,根本的に共有関係から離脱する方法として,共有物分割請求(民法258条)があります。
さらに,無償でも良いので共有から離脱する方法としては,共有持分の放棄(民法255条)も挙げられます。
[民法]
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
(略)
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
【賃料債権の可分性】
共有物の賃貸人の1人として,Cは賃借人に対して直接賃料を請求することはできないのですか。
→共有持分割合分だけを賃借人に請求できる考え方もあります。ただし,賃貸借契約の条項によっては直接請求ができない可能性もあります。
共有者の1人は,賃貸借契約の対象となっている共有物の賃料について,自らの持分割合を直接賃借人に請求できる,という解釈があります(最高裁判所平成17年9月8日;後掲)。
これは,賃貸人が複数→賃料債権は可分→共有持分割合で各共有者が賃料債権を「分けて持っている」という解釈です。
しかし,この判例は,「元々賃貸借契約が存在→相続により旧賃貸人が死亡+新賃貸人が複数になった」というものです。
最初から賃貸人が複数存在する場合は,「賃貸借契約によって賃料支払方法が指定されている(優先される)」という解釈がされる可能性があります。
仮にCが賃借人に「賃料の3分の1相当額」を請求した場合,賃借人としては,そのとおりにすべきか否か,迷う状態になります(解釈が画一的ではない)。
そこで,賃借人は「債権者不確知」を原因として賃料を供託すべき状態となりましょう。
[最高裁判所第1小法廷平成16年(受)第1222号預託金返還請求事件平成17年9月8日(抜粋)]
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。
【賃料債務の不可分性】
話は変わりますが,仮に賃借人が複数,という場合はどうなりますか。
(※「共有不動産」ではないですが,比較のためこの項目に配置します)
→オーナー(賃貸人)が単数,賃借人が相続により複数になった,という事例では,「各相続人(賃借人)は賃料全額の支払義務を負う」ということになります。
ちょっと古い判例ですが,結論として次のように解釈されています。
<判例の解釈>
オーナー(賃貸人)は複数の賃借人のうち,いずれに対しても全額の賃料請求が可能
(大判昭7.6.8,大判大11.11.24)
理由としては,「貸す」という債務が不可分→その対価である「賃料支払」も不可分,というものです。
簡単に説明を加えます。
オーナーからすれば,対象の不動産を賃貸人の人数分に切り分けて,それぞれの小エリアを各賃借人に貸すわけではありません。
そこで,逆に賃借人の債務である「賃料支払」についても切り分けることはしない,ということです。
結果的に,賃料債務は不可分である→誰に対しても全額を請求できる,ということになります(民法430条,432条)。
[民法]
(不可分債務)
第四百三十条 前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。
(略)
(履行の請求)
第四百三十二条 数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
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