最高裁上告棄却決定への異議~歴史を振り返る~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

ホリエモン裁判で最高裁が上告棄却。ホリエモンは異議を出すとか。
国策捜査のニオイします。
例によっては,案件内容には踏み込まず。

上告棄却に対する異議 の話し。

3審制のラストなのに,さらに次があるの!?

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↑のような疑問が以前から持たれていました。

ターイムスリップ!
昭和26年に到着!

時はまだ,世界初の実験的原子炉にて原子力発電の試運転がなされた@シカゴ大学,という時代。
ちなみにこの実験炉の出力は1kw!そう,1000w。1000wのストーブつけたら終わり。
さらにちなみにF1こと福島第一原発は,1号機46万kw,2~5号機が78.4kw,6号機は110万kw。「110万キロ」言うくらいなら「1.1テラ」と言って欲しい。単位統一せんと比べにくいのか・・・
ちなみに3号炉はプルトニウムを用いている,いわゆるプルサーマル運転。MOX燃料とか言って。呼称はすべて,「プルトニウム」という恐怖イメーヂを隠蔽するためとか・・・
脱線失礼。話し戻して。昭和26年。

昭和26年12月26日最高裁
上告申立に対する異議について「そもそもそんな制度ないよ。不適法!だから棄却」と言われました。
実際には最高裁では法廷はほっとんど開かれず,書面が郵便で届くだけですが。
「特別送達」という書留の高級版みたいなやつで。
で,後から話しますが,これがまた「ノリ」で棄却しちゃったのです。
代理人弁護士ではなく被告人本人が嘆願風のお手紙を最高裁に出したのです。(末尾引用)
普通に弁護士が裁判所へ提出する書面を作る場合,根拠条文として,「刑事訴訟法第**条*項に基づき」とか,明示します。
ところがこの方は,そのような「しきたり」を知らなんで,情緒豊かに達筆で書きあげました。
かろうじて「刑事訴訟法の条文に基き」と書いてありました。
後は,「窃盗ではなくて拾ったのです。いや,拾って着服したわけでもございません。貸借です(借りたのです)」という趣旨のことが書いてありました。
最高裁は,「こんな感情そのまま書きなぐったものは認められるはずないやろ!」と考え棄却にしました(と,私は妄想します)。

時は流れて4年後。
昭和30年2月23日
世界初の原子力発電所がソ連(当時)に建設された翌年・・・やめときます。

似ていることが起きました。
最高裁が上告棄却決定を出したら,これに対して「訂正申立」がなされました。

ここで最高裁は考えました。
「前回似てるのがあったな。なんか感想文みたいなやつ。あれと同じように・・・
 ん?この申立書には条文が書いてある。
 刑事訴訟法414条,386条2項(即時抗告の準用)・・・
 素直に読むと『異議申立』できるように読める・・・
 前回はまちごうたかな。
 あっ,今回の申立,良く見たら棄却(の送達日)から4日以上が経っている!
 良かった!即時抗告の期間が過ぎている,という理由で棄却しよう」(←つぶやき部分は妄想です)

言いたかったのは,決定書の「理由」の部分で,↓のようなカッコ書きで「前回の決定を変更する」とコメントしたカッコ悪い(?)とこでした。

(昭和二五年(す)第二五七号同二六年一二月二六日当裁判所大法廷決定、集五巻一三号二六五四頁はこれを変更する)

最後まで読んでくれてありがとうついでに。

最高裁の上告棄却決定に対する異議の期間は,
決定の送達後3日間。郵便で決定書が届いてから3日,ということ。届いた翌日を「1」と数えます。
すごく早いのです。
郵送で異議申立書を出すのもOKなのですが,到着が遅れたら大変なので普通,直接足で(手で)提出します。
東京地裁・高裁・家裁・簡裁の集まっている霞が関からちょっと離れたとこにドカンを建っています最高裁。
中は入り組んでいて「ラビリンス」と呼ばれています。私から。

で,異議申立に対する最高裁の決定は。
決まりはないので,直近の例。
鈴木宗男氏の収賄事件では,申立後5日に「異議申立棄却決定」がなされました。
例によって,法廷での言渡しではなく,決定書郵送なので,届いたのは翌日ですが。


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<昭和26年12月26日最高裁決定>
 主   文

 本件申立を棄却する。

 理   由

 本件は当裁判所第二小法廷がさきに、本件申立人がした上告の申立について、その上告趣意は刑訴四〇五条各号所定の事由に該当しないものとして、同四一四条、三八六条一項三号により右上告を棄却した決定に対し、別紙のごとき理由により異議を申立てるものであるが、右のごとき当裁判所の決定に対し、異議の申立を許す規定は存在しないのであるから、本件申立は不適法として棄却すべきものである。
 よつて、全裁判官一致の意見により主文のとおり決定する。
(別紙)
 異議の申立の理由
私は窃盗、横領被告事件に依りまして昭和二四年三月一九日以来東京拘置所に勾留中の者でありますが、昭和二五年七月一〇日確定致しました言渡しに対して刑事訴訟法の条文に基き上告棄却の言渡しに異議の申立を致します。私は昭和二五年四月四日提出致しました上告趣意書並びに昭和二五年六月二四日提出致しました上申書記載の通り事実に相違なく、東京地方裁判所における窃盗事件の如きは通行中発見せしものにして申し上げ且つ横領の如きは被害者の申述べました通りの貸借関係にて、両者共正直よりの自白にして前記窃盗の証拠はこれなきと信じます。又小岩警察署★志★茆巡査の如きは実に憲法に規定せられし人権を害したものと思わざるを得ません。現在未た裁判の事実は判決文なき為詳しきことは申上げられませんが、刑法規定並びに同訴訟法におきましては本人の自白は証拠云々と謳われております。私は自己のなせし事に付きましては一切を申上げてますが、自己に対する人権をもおかされる必要は認められないと思います。依つてこれ正しければかかる犯罪は少いのです。他の窃盗事件においては御迷惑をおかけ致しましたことを衷心よりお詫び申上けます。何卒再審理賜わりたく再度御多忙中にもかかわらず御手数をわずらわして詢に申訳ありませんが、何卒一日も早く御裁判下され御寛大なる御裁決を仰ぎたいと存じます。