これは

「暁乃刻DVD制作班への抗議」

になるだろう

 

 

舞台『メサイア-暁乃刻-』のDVDが発売になった

信じられない!!

信じられない!!

暁乃刻DVDに

大千穐楽カーテンコールが

入ってないじゃねぇかっ!!!

それどころか、大阪公演の映像は何一つない

つまり、撮っていなかったのだな

信じられないよ、マジでっ!!

 

 

あれは

白崎護と悠里淮斗の

赤澤燈と廣瀬大介の

メサイアファンの愛に包まれた『卒業式』だったんだ

その記録が、残されなかった!!

余りの悔しさに、大千穐楽後に纏めたものを公開することにした

 

 

あれは

ふたりでひとつの壊れやすい卵が

ふたりで一羽の鳥になって飛び立っていく

『卒業』だったんだ…

 

 

注)『メサイア・プロジェクト』とは、高殿円著『MESSIAH-警備局公安特別五係-』を原案としたメディアミックス作品である

2011年に映画化されたが、その後キャストを一新し

現時点で舞台6本・映画3本・ドラマ1本が上演・公開済

「メサイア」とは、戸籍を抹消し、特別殺人権を持つスパイ(通称:サクラ)が、

養成学校(通称:チャーチ)でコンビを組んだ相手

サクラにとってメサイアだけが、ただひとりの「救世主」である

 

 

一緒に、暁を観よう           -悠里淮斗・追想-

僕たちはふたりでひとつの壊れやすい卵だ

いいかい?

護が壊れる時は僕も壊れる

だから、僕は護を死なせたりしない

 

 

『メサイア -紫微ノ章-』(舞台・2014年8月上演)

舞台3作目のこの作品からの登場した白崎護と悠里淮斗

ふたりはこの作品の最後にチャーチに入学、サクラ候補生となった

幼馴染で親友

後に、彼らは互いのメサイアとなる

このメサイアが誕生したその時から思っていた

このふたりの卒業ミッションは、颯真・柊介ペア、鋭利・珀ペアの比ではない

過酷かつ非情なものになるに違いない、と

何故なら、

「委ねられない」護と

「背負えない」淮斗

かつてない、見事なまでの「共依存メサイア」の誕生だったから

 

 

『メサイア -影青ノ章-』(連続実写テレビドラマ・2015年2月放映)

最初からすんなりペアになれたわけではない

このドラマでは、別々の相手と仮メサイアを組まされた

護は有賀涼と、淮斗は間宮星廉と

言い渡された直後に神北に抗議する淮斗、湧き上がる護への独占欲

淮斗自身、その想いは、

周りが感じる程「身勝手な我儘」とは思っていなかったろう

だって護は自分と一緒にいる「べき」なのだから、

護にはその「義務」があり、

自分にはそうしてもらう「権利」がある

……その「理由」を振りかざすつもりはないだろうが

 

そう思っていた事が伺える場面が『紫微ノ章』にある

刑務官殺しで護が裁かれるのを防ごうと、

必死にネットを使って真相を掴もうとしていたその時、

淮斗の幻想が作り出した『春斗』が言った言葉に、

淮斗の奥底の想いの吐露を感じるからだ

「僕はねぇ…護さんが死んでしまってもいいと思ってるよ」

そういう春斗の声色や表情、それはある種の「恨み」ではなかっただろうか

引き籠りの自分を引取り、

生活の全てを…食事の支度さえ賄ってくれる親友に

直接ぶつける事が出来ない

心の奥底にしまい込んだ強い「恨み」

 

淮斗の幻想が作り出した春斗には、

護に対する態度や言葉に何処か棘がある

そう表現させるのは、淮斗の深層心理

表層意識では気づきもしない、

春斗を、……弟を亡くすきっかけを作ったのは護だ、という消えない事実が、

幻想の春斗によって表されているように感じてならない

 

その殻を内側から破り、護を助けるために外へ飛び出して行った時

幻想の春斗は微笑んで見送っていた

淮斗もまた、自らの殻に閉じこもる事で、

春斗を死なせた自分を罰していたから

 

だが、護は僕と共に居るべき、それは淮斗にとっての不文律

だからそれを阻むものが居るなら相手が神北であっても食い下がる

拒否権がない事など問題ではない

当然そんな我儘が通用するはずはなく、

その苛立ちを組まされたメサイア・間宮にぶつける

 

ここで不思議なのは、

護のメサイアに指名された有賀に対してほぼ何の突っかかりも見せないこと

自分のメサイアである間宮には理不尽なほどに当たっているに

「誰かが護の隣にいる」事より

「護が自分の隣にいない」事の方が我慢ならない

 

それは多分、引き籠りだった頃、

外で働く護の隣には相棒の高野優太がいたし、

それを否定する理由もなかったから、ある意味慣れていたのかもしれない

だが「自分の隣に護がいない」事には耐えられない

、そこは護の場所だ、お前がいるのが耐えられない、とばかりに

間宮に当たりまくる

言葉で、態度で、間宮が最も大切にするヴァイオリンにまで

 

しかし任務中に助けられ、「だって仲間だし…メサイアだから」と言われ、

自身の駄々っ子ぶりを反省し、

共に任務に臨む仲間として間宮と寄り添い始める

また護は、

敵側の人間ではないかと疑われる有賀が何の弁明もしないのが気にかかり

彼を信じるために、彼の過去を調べようとする、

……その姿に不安が募る淮斗

「護、僕と……組みたくないのかな?」

途端に、捨てられた子犬のようにしょんぼりしてしまう

せめてもの救いは、その感情を間宮にぶつけなくなった事だろうか

 

サクラ候補生になるまで、淮斗の世界は狭い自室の中だけだった

そこには春斗とドア越しの護しかいない

どちらも自分から離れていく事はあり得ない

守られてばかりじゃいられない、誰かを守れるようになりたい

大切な人を二度と失わない為に、その為にこのコートを着たのに

預けて貰った筈の護の背中が遠くなる…

 

淮斗にとって護は世界へ繋がる窓だから、

その背が遠ざかれば世界との繋がりも薄くなる

だが、それでは誰も守れない

 

「僕が護を助けるんだ……僕が助けるんだ…!」

『紫微ノ章』で自ら扉をこじ開けて世界へと踏み出した、あの決意が無駄になる

 

ホログラムがハッキングされたのに気づき、

操られたふりをして単独で事態の収拾に走り、

途中合流した候補生たちと共に新型ウィルスを奪還する事に成功

この経験が、淮斗の世界が広がるきっかけとなり、

他の候補生たちとも繋がれるように

 

『影青ノ章』でのミッションを終え、漸くメサイアになったふたり

しかしここから、共依存メサイアの本領が発揮される

 

 

『メサイア -翡翠ノ章-』(舞台・2015年5月上演)

淮斗たち同期組にとって、海棠営利と御津見珀は、

あんなふうになりたい、いつかは越えていきたい理想のメサイア

でも自信がある、僕と護の絆は誰よりも強い、

護とならきっと鋭利・珀ペアを超える事が出来る

模擬戦闘訓練も実に楽しそうだ

だって僕たちほどメサイアにふさわしいふたりはいないのだから

 

いつか離れ離れになったとしても一番深い処で繋がりあっている、

そんな関係になりたいと、

いや、

絶対になれると疑いもしない

 

『翡翠ノ章』での鋭利・珀ペアは、互いにメサイアの存在意義を理解し、

その在り方を見せつけて卒業していった

見送る淮斗は「自分たちもあんな風に」といった笑顔で護に寄り添い、

見送った

 

自分たちが鋭利・珀ペアのようになる為に、

絶対に越えなければならない高い高い壁がある事に、

未だ気づかぬまま

 

 

『メサイア-鋼ノ章-』(舞台・2015年9月上演)

公安四係が任務に関わっているのを知ると、高野の存在が気にかかる淮斗

何度も、嫌みなほどに護を問いただすほどに

勿論、護は気にしている、かつての相棒だ、

生死さえわからぬ状態で別れたままなのだから

だがそれを認めたら、

淮斗の意識が任務から離れてしまう

だから認めない

考えているのは敵の事だ、と

 

護は優しすぎる、そしてヒトの生死に敏感過ぎる

ターゲットを仕留める事の正否と任務の間で心を揺らす、

殺す必要はあるのか?と

たがら、その部分を担うのが公安五係の仕事だ、と淮斗

自分の血に染まった手が本当に正義なのかを考え続けたい、という護

護は皆の正義の味方だと信じてる、どれだけの罪を背負っていたとしても

「僕が守って見せるよ、皆の正義の味方を、それが、僕が僕であるこの証明、僕が、護のメサイアであることの証明なんだから」

 

俺だってそうだという護に微笑む淮斗、……僕らの絆は揺るがない、

そう信じて

だから自信に満ちた声で言い切る

「背中は僕に任せて」と

 

しかし、核と内通者とクアンタムキャットに翻弄され、

罠にはまり爆発に巻き込まれ護が大怪我をした時、

鳴りを潜めていた淮斗の、護への執着が剝き出しになる

 

「冷静ですよ、僕は」

いや、誰の目にもうっすらと狂気じみた様子がうかがえる

「僕の力すべてを使ってでも白崎を傷つけた奴を許さないつもりです、僕は裏切り者を許すつもりはありません」

「見つけたんです、今回の作戦の情報を流したクアンタムキャットのスパイを」

「スパイはチャーチの中にいる」

畳みかけるように言うとデータが入ったカードを志倉に渡し、

あとはお任せします、と

「僕は裏切り者に近づかないようにします、あったらすぐにでも殺してしまいそうだから」と

そのセリフのどこが冷静だというのか

 

証拠…それは有賀がスパイである事を証明する動画だったが、

実はそれもねつ造された敵の罠だった

 

本来の淮斗なら、加工された映像など簡単に見破れるはずである

護が傷つけられたという猛烈な怒りで視界も判断も曇りまくる

有賀のメサイアである間宮にも当たり散らし

「どうして見抜けないかな?一緒に寝起きを共にしてるっていうのに」

「君みたいに信頼されてなかったら無理だよね」と嘲笑し

何かの間違いだという間宮に

「間違い…?護は間違いで大怪我をしたっていうんだ!」とキレる始末

そしてねつ造された証拠映像を「確実な証拠を手に入れた!」と、

その経緯を、毒を吐くように間宮にぶつける

……まるで間宮の監視が足りないからだと言わんばかりに

 

そんな時、核が使われ、怪我をおして護が現場に戻ろうとする

「この生命を捨ててでも守りたいものがあるんだ」と

止めようとしても聞き入れない

「そんなこと言わないでくれよ……護が生命を簡単に捨てるっていうなら僕に闘う理由はなくなるんだよ!」

そう言って縋るが護の目を観て黙り込む

 

護が観ているのはこの国を守るための正義……志倉のいう「鋼の意志」

護は…、皆の正義の味方だと、淮斗自身がそういったのだ

自分の視界が護への想いで曇っていたのでは、と気づく淮斗

だから確かめた、あの証拠映像が間違いないものなのかを

するとやはり、ねつ造された痕跡を見つけた

 

やはり自分は冷静じゃなかった

視界が狭まり状況を見誤った

認めざるを得ない、

……有賀ははめられた、それに自分は手を貸した

それを確かめなければ、有賀に謝らなければ…!

 

「僕と護…僕たちほどメサイアにぴったりなふたりはいないって思ってた、だけど違うんだ、僕護のことになると…!」

「メサイアを大切にするは、当たり前のことだ」

吐露した護への執着について、有賀は明確に肯定してくれた

 

「サクラになれば離れなきゃならない、離れても繋がってる、それがメサイアだって事は分かってる…だけどそんなのは詭弁だ!僕は護と一緒じゃないと…!」

「同じ……景色を観たいとそう望めばいい、自分のメサイアと」

有賀自身、間宮に対してそう思っている事を、

間宮との出逢いを、間宮の音楽に救われた事を、

そのとき何が起こったのかを話してくれた

 

「僕の観たい景色…、護の観たい景色…」

噛み締めるように言いながら、気づいたのではないだろうか

 

僕は護を観ていたかった

護に僕を観ていて欲しかった

でもそれでは……、同じ景色は観られない!

 

淮斗はバカではない

自分の執着の強さも、有賀に言われた事の意味も、本当はわかってる

それでも護への執着を拭い去れないのは……、甘えだ、子供じみた我儘だ

護が命を捨ててまで守りたいものがあるのなら

その背中を守るのは、メサイアである自分にしか出来ない事だ

分かってた、ずっと分かってた

そのためにこのコートを着たのだから

 

淮斗が「背負う」覚悟を決めたのはこの辺りだったろう

背負えるか背負えないか、ではなく、その覚悟を決めたのだと

僕か僕であること、僕が護のメサイアである為に

護の守りたい正義を、護ごと守る!と

護と同じ景色を観る為に護から視線を外す、そうしなければ守れない

 

そうできるきっかけを与えてくれた有賀に、明確な仲間意識が湧く

頭で理解していたサクラの役割が、心に、身体に降りてくる

それを象徴するのが終盤の戦闘シーン

「過去も今も、ちゃんと決着がつけられるといいね」

間宮と同じ景色が観たいと言っていた有賀をそう送り出せたのは

自分もその想いを、しっかりと固めたから

彼らの決着が間宮の死による別離になっても、同じ景色を観て欲しい、と

 

戦闘中、ふと微笑む護が

「あとどれくらいこうやって背中を合わせて戦えるのかと思って」と感傷に浸ると

「ずっとだよ」

力強く

「たとえ僕たちが離れ離れになったとしても、僕たちが、互いのメサイアである限り!」

そう言い切った

「あぁ、そうだな」と言った護は、その場の返事として受け取ったのだろう

離れ離れになる事は、今はまだ現実味のない事だから

 

だが淮斗は

淮斗は、いつか来る別離の時を覚悟しただろう

迷いなく、鋼の意志を貫いてターゲットを射殺した護を観て

その決意は、よりしっかりとした覚悟になったはずだ

 

 

『メサイア-深紅ノ章-』(映画・2015年10月上映)

有賀が新入生の加々美いつきとメサイアを組むことになる

自信家で問題行動の多い加々美に腹を立てる護を、淮斗は冷静に観ていた

大人になったというか、声を荒げて非難したりする事もなく

以前の起伏の激しさは感じさせなくなっていた

鬼ごっこの時も、有賀が毒に侵された時も、冷静に判断し

有賀を救出に向かった際に有賀に(実際は変装したハングドマンだったが)にかけた言葉には

仲間を思う気持ちに溢れていた

 

中盤で爆発に巻き込まれて怪我を負った際、護に手当てされている時は久々に甘えるような、嬉しそうなそぶりを見せたが

ハングドマンとの戦闘中に切り付けられた時、心配する護に

「大丈夫!かすり傷」ととっさに答えているあたりにも成長が見えた

終盤、自力で脱出した有賀の姿を見つけた時の安堵の表情

淮斗は護に寄り掛かる事なく、独りで立てるようになっていた

その成長が、彼の最期の選択の礎となったのだろう

 

 

そして

 

 

『メサイア-暁乃刻-』(舞台・2017年2月上演)


続く