先日の外来の事です。

 

ある女性患者さんから

「なんだか気持ちが晴れないんです。これで私はいいんでしょうか?」

「子育て(幼稚園児)はしているけれど、仕事もしていないし・・・。」

「夫は働かなくていいって言ってくれているんですが・・・。」

 

毎日、なんとなく不全感があるようです。

お話を聴いていると、こんな特徴が見えてきました。

 

昔から、他人の目を気にして、良く思われたい。そうしないといけないと思いがち。

完璧に物事を行わないと、なんだか不安。

生きていることに対して、あまり肯定的になれない。

 

今風に言うと、「自己肯定感が低い」という言葉になるのでしょうか。

 

 

生活状況を確認させてもらうと

夫は出張などが多く、家を空けがち。夫はとても理解がある。

子供との二人の時間が、生活の大部分。

友人などとは、あまり連絡をとれていない。

図書館などには出向いて本を読むが、主に自己啓発本。

 

 

こういった場合は、お薬はあまり効果がありません。あくまで補助的なものです。

治療としては、診察に来ていただき、ご自身の気持ちを吐露していただくことが大切です。

なかなか言いにくいことも、治療者に吐露することにより、少しだけ軽くなることもあります。

 

 

 

集団生活を営む「ヒト」が、孤独に過ごすことは、そもそも本来的にストレスになるのです。

他者に存在を認識してもらうことで安心につながったりします。

だからといって極端に「他者のために」と頑張りすぎたりの自己犠牲はいけませんが。

何ごとも程度が大事です。いい塩梅です。

 

 

 

一人でこもっていると、必然的に自己の内面に目が向き、大体は悪いほうに突き進みます。

 

 

自己啓発本についていえば、一時期私も読み漁りました。何か答えが欲しくて。

読んだ直後は、なんとなく「そうか!」みたいな感覚になります。でもすぐ忘れます。

その程度のものだと思います。それでいいんです。それが効能です。

 

人生とか、生きるとか、そういったものを言語で論理的に理解しようとして、書いてあるように生きようと努力するのはお勧めしません。かえって自分を追い詰めますよ。人それぞれだし。

 

 

大事なのは感情です。だからたまには息抜きに、自己啓発から全く離れた本も読んでみてください。

感情を揺さぶられるような本がいいかもしれませんね。あまり論理的でないやつ。

 

 

仕事や趣味もおすすめです。

自分の外側に注意が向き、無心になれるからです。社会との接点も生まれます。

人付き合いが苦手な人は、何か作業をするのもおすすめです。

手を動かしたり、目の前のことに集中するのは、意識が内面から外に向いてくれるので、楽になりますよ。

 

運動もおすすめです。

「心」以外の部分の、運動機能の方に意識が向き、余計なことを考えることが減ります。

 

 

このような悩みを抱く原因はわかりません。が、程度の差こそあれ多くの人はこういった悩みを持つでしょう。

別に病気ではないと思います。

 

生物学的に不安を感じやすい体質なのか、幼少期に無償の愛を得られなかったからなのか、何らかの理原因はあるのかもしれませんが、でも大事なのは原因ではなく、「いまをどうするか」だと思います。

 

別に性格を変える必要もないです。

こちらから考え方を変えなさいとももちろん言いません。

でもちょっと行動様式を工夫してみたらどうかなとは思います。

 

あなたにはあなたの良さがあります。

あなたという存在は、あなただから、何者にもなろうとしなくていいです。

確実に存在していて、機能しているんです。

 

自分を見つめなおすことも、時には必要かもしれませんが、そればっかりではいけません。

もし見つめなおしたいときは、他者という「自分を映す鏡」があったほうが理解しやすいかもしれません。

実は一人だけで自分を見つめるというのはとても難しいのです。

 

 

ご主人が安心して出張に行くことができるのも、あなたがお家を守ってくれているから。