(つづき)
「エンプティ・チェア」のやり方を説明して、手前の椅子にBさんが座り、向かいの椅子にAさんが座っているイメージをしてもらいます。
Bさん:言い返せない人にだけ文句を言ってるけど、それって弱いものいじめと同じじゃない?
Aさん:そんなつもりはない。
私:なんで言い返す人には文句を言わないの?
Aさん:言い返す人に対しては文句がない。
私:仕事が完璧で、ミスもない?
Aさん:いや、ミスがある場合もあるけど…
私:じゃあなんで言わないの? 言い返されるのが嫌だから? 世間ではそれを”弱い者いじめ”って言うんだけど。
Aさん:自分では弱いものいじめしているとは思っていない。
そのとき、ふと気づきました。
ああ、その背景にあるのは、こういうことかも。
→自分に自信がない(自己否定が強い)
→だから言い返されると傷つく(自分を否定されたと思う)
→安全そうな人にだけ文句を言う
という、「インナーチャイルドの防衛システム」が働いてるのかも。
私:Bさん、Aさんに先日、注意・指摘された内容について、釈然としないって言ってたでしょ? そのことを伝えてください。
Bさんがそのことを伝えると。
Aさん:私は文句を言いたかっただけ。
私:なんで言いたかったんだろう? ストレスのはけ口にしてるんですか?
Aさん:そうだと思う。もう完全にそうだと思う。
私:いつもそうやって誰かを吐け口にしているの?
Aさん:いつもじゃない。自分がイライラしている時。イライラが溜まったとき。
私:でも、はけ口にされて、それが嫌でやめていく人もいるってこと、気づいている?
Aさん:気づいてない。その人が仕事ができなかったから辞めただけ。1ミリも自分の責任だとは思ってない。
私:イライラの吐け口を人に向けないことはできるのかな。
私たちの見解では、あなたには「インナーチャイルド」があるんじゃないかなと。
イライラを人に向けている自分のこと、好きですか?
Aさん:好きじゃない
私:うん、やっぱりそこなんだよね。
ここで休憩します。
私:Bさん、「エンプティ・チェア」って面白いでしょう?
相手のエネルギーにスポッとはまって答えがわかる。
Bさん:すごく面白いです!
Bさんが「この状況を責任者はどう思っているのかな? Aさんが原因で人が辞めていくことはわかってるハズなのに」と言うので、今度は責任者と対話をしてみます。
私:Aさんが原因で人が辞めていくことはわかっているんですか?
責任者:わかっている。
私:この状況をどうにかするつもりはないの?
責任者: そうだなぁ。でもね、Aさんは仕事ができるから。
適当に仕事しようとか、怠けがちな人もいるから。Aさんみたいな人が言ってくれることでみんなピリッとするし、そういう役の人も必要。
だから正直、ちょっと弱い人には、Aさんにお尻を叩かれて頑張って、うまく成長してもらいたいというのはある。
私:じゃあ、そこまで行けなくて次々と人が辞めていっても、それはしょうがないなと思っている?
責任者: しょうがないとは思ってないから、ちょっとチーム編成を変えたりとかはやってるけど。
私:Aさんにさりげなくアドバイスするとか、そういう気持ちはある?
責任者:言っても無駄だと思ってるし、それは怖い。
新しく入ってきた人が、頑張ってもそこまで仕事できないんだったら、やめてもらった方がいいっていうか。頑張って食らいついてくる人だったら一緒にやっていきたいけど。
(ここで終了する)
私:Bさん、どうですか? 責任者はこんなふうに思っているようです。
Bさん:うすうすそうかなとは思っていたけど。
私:じゃあ今度は、Aさんのインナーチャイルドと対話してみましょうか。
(インナーチャイルドを向かいの椅子に座わらせる)
私:同僚に文句を言っているAさんを見て、 どう思いますか? どうしたらいいと思う?
IC:彼女自身がもう自分でも制御できないんじゃない?
私:それは彼女の中に住んでいる「インナーチャイルド」から発生している。
自分のこと好きじゃないって言ってる。どうしたら好きになれる?
IC:褒めて欲しい
私:子供時代とかも、あんまり褒められなかったの?
IC:あまり褒められてない。
私:だからいつも頑張ってんだね。自分を褒めて、認めてほしくて。
やっぱりそこですよね。だから「 正論」ではダメなんですよ。
私:彼女は自分のことを好きになったら、きっと一緒に働く仲間のことも好きになって、文句を言わなくなると思う。
私:今は自分のこと、好きじゃないから人のことも好きじゃないんですよ。
だから平気でいろいろ言っちゃう。
この世界の原則は「エネルギーの共振共鳴」なので、
自分を好きでないと、
→「自分を好き」という発振ができない
→共振共鳴が起きない
→ゆえに人も好きになれない。
本当にいつも思うのですが、子育てで一番大切なのは、「人に愛される人」に育ててあげることじゃないかなって。
そしてそのためには、まず「自分を愛せる人」に育ててあげること。
そうすれば、
自分を愛せる
→人も愛せる
→だから人からも愛される
人に愛される力があれば、社会に出てからどんなことがあっても、きっと乗り越えていけるんじゃないかと。
Bさん:なんだかすっきりしました。
Aさんて、結婚してお子さんもいらっしゃるんですけど、ご主人が結構強いみたいなんですよ、話を聞くと。
子供に対しても強く言うし、子供の学校の先生とかにもなにかあったらすぐに言う。モンスターペアレントみたいなタイプの。
だからAさん、家庭内でのいろんなストレスを職場ではけ口にしてる気がします。
そのとき、私の意識に入ってきたのは、Aさんの意識です。
私:あれ……?
(つづく)