楽天市場は2014年11月13日より、順次楽天市場内での買い物における振込銀行を楽天銀行のみとする方針を打ち出しました。
理由としては「楽天市場の銀行決済の振込先を「楽天銀行 楽天市場支店」に限定することで、購入者が正規の店舗の口座だと確認しやすく、偽の店舗サイトを使った詐欺を防ぐため」と公表。ただ、一部の出店者はこの楽天の措置に反発し、楽天市場からの撤退を表明しています。
果たして、楽天銀行への振込の一本化は本当に買い物客や出店者のための措置なのでしょうか?
私自身はメガバンクの元行員として、振込の一本化でメリットを享受できるのは楽天のみではないかと感じています。
振込口座を一本化することにより、楽天銀行には流動性預金がどんどん貯まることにつながります。また、買い物客の中には振込手数料が無料になるからと楽天銀行に口座を開設する人も出てくるでしょう。加えて、代金が振り込まれた後は出店者が自由に資金を動かしてもいいとしていますが、資金を動かすこと自体手間がかかりますし、振込手数料も必要です。
つまり、この楽天市場の「楽天銀行」への一本化は、預金口座数の増加や流動性預金の積み上げ、振込手数料の獲得という楽天にとっては非常にうまみのあるビジネスモデルになるのです。
一方で買い物客はどうでしょう?
確かに振込先を「楽天銀行 楽天市場支店」に限定することにより、偽の店舗サイトを使った詐欺に遭わない可能性はあるかもしれませんが、それは事前にインターネットなどで店舗の評判を調べることなどで未然に防ぐことも可能でしょう。つまり、買い物客にとっては「楽天銀行 楽天市場支店」への振込が必ずしも必要というわけではないのです。
出店者にとっても、今回の措置で売上アップにつながれば、喜んで応諾するところでしょうが、前に述べた通りに事務の煩雑さが増すだけで何らメリットはありません。
今回の楽天の振込口座の一本化は、楽天によれば買い物客や出店者のための措置であり、「この施策によって楽天に収益があがるなどということはない」と説明しているようですが、もし楽天にメリットがないのであれば強制する必要は全くないのではないでしょうか?
特に買い物客や出店者にメリットがあるならば、強制せずとも自然に全員、全店舗が振込を「楽天銀行 楽天市場支店」に変更するはずです。これこそが、Win-Win-Winの関係といえるでしょう。
『驕れるものは者は久しからず』という言葉もありますが、今回の楽天の措置が、立場の弱い者を強引に従わせて自社の利益に誘導する目的ではないことを誰もが納得できるようにうまく説明できなければ買い物客や出店者の反発も避けられないかもしれませんね。