■ 曲がり角を迎えた『餃子の王将』
『餃子の王将』が曲がり角にきています。
同社はバブル期に手を出した不動産投資や「いけすの王将」など事業の多角化に失敗。
2000年には470億円もの有利子負債を抱え、倒産の危機に直面します。
この危機によって辞任した社長を継いだ新社長は背水の陣で経営改革を断行。
まずは本業の中華料理以外の事業から撤退し、経営資源を本業に集中させます。
それから赤字の不採算店を閉店し、キャッシュの流出を食い止めることに力を注ぎます。
一方で、赤字でお金がないにも関わらず、全国から店長を集め業績不振によるリストラは行わないこと、そして店舗運営については各店長の裁量に委ねることを伝えたのです。
このような施策が次々に実り、低価格でボリュームのある料理がデフレ時代の消費者ニーズとマッチし、テレビなどへのメディア露出戦略と相まって、不況にもかかわらず王将は奇跡的な復活を遂げ、11期連続で増収を続けてきました。
ただ、利益面を見ると、コスト増の影響で減益の傾向にあり、2010年3月期からは営業減益が続いています。
顧客数も既存店ベースでは前年割れが続き、これまで成長を支えてきた「やすい」「うまい」「はやい」というビジネスモデルでは立ち行かなくなってきたのです。
このような状況で、あなたがもし王将の経営者であればどのようにして会社を再び成長軌道に乗せるでしょうか?
■ 『餃子の王将』は、顧客の変化に対してどう変わっていくのか?
外食産業では、最近の度重なる食に関する不祥事で消費者は“価格”よりも安全・安心という“価値”を求めるようになりました。
つまり、消費者はもはや安いだけでは見向きもしなくなり、「本当に安全かどうか」「安心して口にできるかどうか」、その価値を見極めてからでないと、購入を決定しなくなったのです。
王将は相次ぐ原材料の問い合わせからこの消費者のトレンド変化を察知し、使用する素材を一部を除いてすべて国産にすることを決定し、顧客の要望に答えていきます。
ただ、問題は国産に切り替えることによって上昇するコスト。
従来の価格では採算が合わない水準までコストが上昇してしまったのです。
そこで王将は10月1日から23年ぶりに値上げの実施に踏み切ります。
メニューの大半にわたって、5%から10%もの大幅な値上げを断行したのです。
◎ 王将の戦略1(プロダクト戦略):消費者が安さより安心安全を重視する流れの変化を察知して食材をすべて国産に切り替えた。
◎ 王将の戦略2(プライス戦略):材料費や人件費の高騰に対して大胆な値上げを実施した。
また、王将はこれまでの若者主体の顧客層だけでなく、資金的に余裕のある中高年層にターゲットを合わせた新たメニューも投入しました。
7月から通常メニューよりも3、4割高い本格的な中華「極王」シリーズの提供を始め、本物志向の中高年層の取り込みを図ったのです。
加えて、今後は2020年の東京オリンピックの開催に伴い、官民挙げての推進策で、訪日外国人が2000万人と現状の倍程度の規模に拡大する見込みのため、フランス料理やトルコ料理の要素を取り入れたメニューを開発し、日本への旅行客にまで顧客層を拡大することを目論んでいるのです。
◎ 王将の戦略3(ターゲティング戦略):従来の主要顧客層に加えて新たな顧客層の開拓を目指す。
◎ 王将の戦略4(プロダクト戦略):新たな顧客層に対して求められるメニューを開発する。
さすがに中華料理店でフランス料理やトルコ料理を提供することはビジネスの軸がぶれて長期的な顧客離れにつながるリスクが高いと思われますが、顧客の変化に応じて変わろうとする王将の戦略は見事成功につながるのでしょうか?
注目して結果を追っていくことにしましょう。