『ジョン・ウィック』感想。キアヌは異世界で戦った。 | まじさんの映画自由研究帳

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「キアヌ・リーヴス完全復活」の看板に偽りなし!
ここんところ(Link☞)『47RONIN』など、めっきりヒット作がなく、鳩に餌撒いてるキアヌのダメ男姿が有名になりすぎて、その姿がフィギュア化されたりと、イイトコなしのアニキだった。
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しかし、この『ジョン・ウィック』で完全復活!僕らのキアヌが帰ってきた!!
『マトリックス』(Link☞)コンスタンティン』などで見せた、男のコが惚れるあんときのキアヌが復活した。全身真っ黒なスーツ姿で殺りまくる、そんなキアヌの殺人マシーン姿が拝める最高のアクション映画に仕上がっている。

引退した殺し屋が、飼い犬を殺された怒りから、封印していたチカラを解き放ち復讐のモンスターとなる王道の復讐劇である。「どうやらお前は、とんでもない奴を怒らせてしまったようだ」という、お決まりのシチュエーションを孕んだ、至ってシンプルなストーリーながら(でも、男のコはみんな大好きなヤツだ!)細かな描写に魅力を秘めた作品に仕上がっている。

キアヌが演じるジョン・ウィックは、ガンアクションとカンフーを合わせた「ガン・フー」という新たな格闘技を生み出し、流れるようなアクションで敵を始末して行く。
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ガンファイトをカンフーの様式で最初に見せたのはジョン・ウー監督『男たちの挽歌』であろう。現実的な銃撃戦ではなく、徹底的にカッコイイ銃撃戦を見せた。香港映画の様式を用いて、剣劇のようなガンファイトは、リアルではないが、映画として完成されたスタイルとなり、以降の映画にも大きな影響を与えて来た。バズ・ラーマン監督『ロミオ+ジュリエット』では、フェンシングの様な華麗なガンファイトに、ジョン・ウーの影響を見る事ができる。また『リベリオン/反逆者』では「ガン・カタ」が、ディストピア世界を統治する組織の、洗練された技として登場する。専用銃であるフル・オートのクラリックガンを使い、命中精度の低い筈の2丁拳銃に、正確無比の攻撃を可能にする説得力をカンフーの動きで見事に見せ付けた。「ガン・カタ」が歌舞伎の見栄を取り入れた、外連味を重視した演武であるのに対し「ガン・フー」はより実戦的な戦闘格闘技としてリアルなガン・アクションを作っている。戦闘の中で捉えた相手の動きを封じ、遠くの敵を仕留めてから最後に拘束した敵のトドメを刺す洗練された流れを、条件反射のようにこなしていく様は、実戦を戦って来た男の背負った十字架を表現しており、この作品の最大の見所となっている。しかも復帰戦らしく、狙いを外して撃ち直ししたり、残弾を数えず弾切れし、敵の目の前でリロードするなど、5年のブランクを表現したアクションも取り入れており、怒りイライラを抱えたフラストレーションMAX激情のガンファイトとなっている。

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かつて暗黒街で名を馳せた一流の殺し屋ジョン・ウィックは、不可能な殺しを成し遂げ足を洗った。えんぴつで3人の男を殺したと言うのが、裏社会での語り草となっている。彼が裏社会に顔を出せば、多くの人から声をかけられる。「久しぶりだな」「復帰したのか?」「また会えて嬉しい」など、裏の世界に彼を知らぬ者はいない。さながらハリー・ポッターがホグワーツに入学した時のような歓迎っぷりである。実際のキアヌも、スクリーンでメインを張るのも久しい訳で、彼の復帰を我々も喜ばずにはいられない。

脇を固めるウィレム・デフォーもいい味を出している。かつて裏社会をジョンと共に生きた顔なじみとして登場。プロフェッショナルな男の鋭い眼光は60歳になるとは思えぬ輝を放っていた。
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ロシアン・マフィアのボスを演じるのは、元祖『ミレニアム』三部作で主演した、スウェーデンの俳優ミカエル・ニクヴィスト。バカ息子を持った父親の苦悩と、ジョンの抹殺に尽力する組織のリーダーをデ・ニーロ級の貫禄で怪演していた。


ジョン・レグイザモも僅かな登場ながら、組織の一員で、ジョンと交流のあるジャンク屋を演じ、序盤のシーンを引き締める、味わい深い役を好演していた。今回も、裏社会の良心としての繊細な役を演じている。

この映画がキアヌ・リーヴスの復活作品として見事なのは、小道具や演出にもこだわりが見える。キアヌが使う銃も、そのほとんどに実戦的なカスタムが施され、闘い方に合った仕様になっている。銃身の先端に、ギザギザしたストライクプレートが付いたコンペンセイターが装着されているのは、近接戦に於いて打撃による攻撃力を高める為である。つまり、弾切れした銃は、無用の長物ではなく、殴る武器として使用する訳で、この映画にもそれを活用するシーンがちゃんと用意されていた。
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他にも取り回しなどを考えた銃の選択やカスタムパーツなど、ガンマニア垂涎のこだわりを見せてくれる。

また、キアヌが颯爽と操る車も素晴らしい。69年型フォード・マスタングBOSS429を始めとした、アメリカを代表する名車がピカピカに磨き上げられて登場する。
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70年型シボレー・シェベル、2011年型ダッチ・チャージなど、アメリカン・マッスルカーの唸りに、カーマニアも吠えまくる事請け合いだ。銃声だけでなくV8エンジンのサウンドにもこだわった音作りとなっている。

銃や車などには、もっと詳しいレビューが出ているようなので、これくらいにしておくが、別の小道具としては、オイラは金貨の使い方に注目したい。
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ジョンが銃と一緒に封印していた金貨は、裏社会で稼いだ報酬である事は一目瞭然だ。しかし、それを換金するのではなく、裏社会ではそのまま通貨のように使われている。金貨でコンチネンタル・ホテルに泊まり、地下にあるVIP専用のBarでは、入場料となっている。
その中には様々な裏稼業の者たちが飲んでおり、異言語で会話する者たちもいる。ここで登場するホテルの支配人ウィンストンは、ホテルのゲストをもてなすだけでなく、裏社会の「掟」を中立的に管理する番人としての役割を持っている。
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その彼を演じるのはファンタジー映画の常連と知られるイアン・マクシェーンである。まるでヴァンパイア種族を束ねる領主といった貫禄である。

また、裏社会の掃除屋もいい♡。呼べばどこでも現れ、金貨で死体を掃除してくれる。おそらく料金は1体につき金貨1枚数のようだ。

もうおわかりだろうが、この映画は現実世界の復讐を描いていながら、ファンタジーの構造を持っている。裏社会こそが異世界であり、金貨異世界への扉の鍵となり、奇妙な住人たちが、奇妙な仕事をして生きている。この世界では「殺しのスキル」こそが「魔法」であり、「ガン・フー」こそがフォースなのだ。実際、警察官死体が見えなくなる魔法をかけてたし。我々から見れば、裏社会は異世界であり、背中あわせの異世界を、表裏のある金貨にそれを暗示させているようにも見える。
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フィクションをリアルに魅せるのは、リアリズムではなくリアリティである。この作品では、ダーク・ファンタジーの要素を用いる事で「ガン・フー」をリアルな戦闘に見せる事に成功している。
現実世界のキアヌは、どことなく陰気だが、異世界ではそれがクールに見えるのが彼の魅力だ。

やはりキアヌには異世界がよく似合う。