主役を食う演技とかではない。脚本が、まさしくそうなっているのだ。バディムービーではなく、共感しずらい変な奴の視点で描かれているため、アーミー・ハマーのキャラクターを殺してしまっているのだ。
唯一、注目すべきは、いつも線の細いインテリ役のウィリアム・フィクトナーが、骨太の悪役をこなしている所だ。やはり彼は才能ある俳優だと確信した。
しかしながら、このリメイクはひどい。誕生編が余りに長すぎて、ダレてしまった。
本来、ローン・レンジャーがバンバン撃ちまくる銀の銃弾は、自分が撃った事を示す大切な証なのだが、今作では大事に大事に作られた、たったの一発しか出て来ない。撃ちまくってこその西部劇ヒーローなのに、なんとこのローン・レンジャーは、銃はキライだとか抜かす!開拓時代の無法地帯に、銃を持たないなんてあり得ないでしょ。オイラは、そこで何を見に来たか、よくわからなくなったよ。
とにかく撃たない!撃たないローン・レンジャーに、ずっとモヤモヤした。最近のヒーローはみんな、銃がキライだとか抜かす腰抜け野郎ばかりだが、西部劇のヒーローはそうでは困る。現代の価値観をねじ込むリメイクなら、やらない方がマシだと思った。
トントに至ってた「キモサベ」を連呼するが、悪霊ハンターとか余計な設定が加わり、共感しにくいキャラになっていた。トントの名セリフ「インディアン嘘つかない」は言わないし…。
だが、最後のアクション・シーンだけは良かったと思う。軽快な「ウィリアム・テル序曲」に乗せて、テンポの良いブラッカイマーお得意のアクションが冴えていた。ここだけは気持ちが良かった。でも、前半のモヤモヤのおかげで、そこまでテンションは上がり切らなかった。
平日の昼間に鑑賞したので(?)高齢者が多くいらっしゃった。まさにローン・レンジャー世代!それまで、隣りで「トントが何だか変だわ」とかブツブツ呟いてたおばぁちゃんが、ラストの「ハイヨー、シルバー!」で、「わぁー♡」って、黄色い声を上げた!!そしてトントの「二度とやるな」で、“高齢者のみ”一斉に爆笑!
…コレには打ちのめされた。
あの世代にとって、ローン・レンジャーは特別な、ヒーローなのだ。
そう。アレは梅沢富美男であり、杉良太郎であり、里見浩太朗だったのだ!
原作から何十年も経って、新しい技術でカラー映画としてリメイクされただけで、高齢者の方たちにとっては嬉しい事。あの、とって付けたような「ハイヨー、シルバー!」でも嬉しいシーンなのだ。
…だけど、オイラにはソレがわからんのですよ。世代じゃないもん。
物凄いアウェイを感じた鑑賞だった…。