「女性カットモデル大募集! 御礼10万円」
という広告がSNSから出てきた。
募集しているのは理容美容専門学校で、
「随時面接を行っています」
とか
「メールにて応募受付中です」
などとあった。そして最後に連絡先が書かれてある。
「ううむ、女性カットモデルか……」
その文面を佳代は背中まである長い髪を触りながら興味深そうに眺めていた。
「髪を綺麗にしてもらえるし、お金もこんなに貰えるのね。」
佳代は大学生だ、おしゃれもしたいし、パーマ代やシャンプー代も結構掛かる。だがカットモデルならタダで髪を綺麗にしてもらえる上にお金まで貰えるのだ。
「うーん、これいいかもね」



佳代は広告の連絡先に電話をして申し込みをした。そして3日後の日曜日に行くことになったのだった。
3日後、佳代はバスと電車を乗り継いで専門学校まで来た。そして受付で名前を告げると担当者がやってきて待合場所に通された。「ああ、あなたですか」
「はい、よろしくお願いします。」
佳代が案内されたのは美容師コースだった。今日はヘアカットの練習をするという事だった。
「じゃあ、まずこちらの椅子に座ってください」
促されて椅子に座ると、講師が鋏を取り出して佳代の髪を切っていった。髪を切るときのハサミの感触がとても気持ちよく、佳代はうとうとしてしまった。そしてしばらくして……
「はい、出来ました!」
講師が髪を整え終わると、佳代は満足げにそう言った。
「ありがとうございます!」
彼女は今までにない自分の髪型を鏡で見てとても満足そうな笑顔を浮かべた。
全体的にふんわりしており、毛先はウェーブがかかっり明るい色のメッシュが入ってる。かなり可愛くなっていた。
佳代は普通の大学生からエロカワの美少女へと生まれ変わったのだ。


これでタダで髪を可愛くして貰える上にお金まで貰えるのだ、カットモデルをやってからすっかり佳代はこのバイトが気に入ってしまった。
しかし、そんな美味しい話があるわけではなかった。
「佳代さん、次は理容師コースをよろしくお願い致します。」
「え?」
佳代は美容師コースの後は理容師コースのカットモデルをやることになっていた。
「ちょっと……」
しかし抗議する暇もなく理容師コースの授業が始まった。
「では、皆さん講義を始めます!」
理容師コースの生徒はみな男性だった。そしてこのカットモデルをやるのは女の子だとしり何やら話し合っていた。その光景を見て佳代は戸惑ってしまった。
「それでは始めます!」
と言って授業が始まった。
「それでは前回の続きの刈り上げについてモデルさんを使って実演します。」
そういうと理容師コースの生徒たちが佳代を椅子から立たせて床に座らせた。そして、準備が出来たら担当の生徒が佳代の髪を切り始めた。 
チョキ…チョキ…
ショッキン… ショッキン
ウェーブが掛かったメッシュ部分は切り落と佳代はボブヘアーになった。
生徒はバリカンのスイッチを入れ佳代のうなじに入れるようにしてバリカンを動かした。
「ひぃい、痛い!」
佳代は涙目になった。バリカンがうなじに当てられる度に、佳代の体がビクッと震える。しかしそんな声は無視して生徒は切り進んで行った。
ショリ……
そして生徒はバリカンで刈った髪を手で触って確認すると言った。
「まあまあですかね……」
そんな言葉に佳代は怒り出した。
「ちょっとこれはなんなのよ!!」
すると生徒が言った。
「いえね、今回は刈り上げの実習なんですよね。」
生徒は話し続けた。
「刈り上げは結構難しいんですよ……」
生徒はまたバリカンを起動させると、佳代の耳の後ろあたりの髪を持ちバリカンを当てた。そしてそれを一気に滑らせた。
ジョリジョリジョリ……
「いやあ、やめてえええ!!」
そんな悲鳴が部屋に響いたが生徒は気にせずバリカンを動かしていった。
ジョリ……ジョリジョリ……ショリ、ジョリジョリ
「ああ……」
佳代は涙目になりながら自分のうなじを触ってみた。するとうなじが刈り上げられているのがわかった。生徒は最後に頭を触ると確認をした。
「うーん、こんなもんですかね……」
そして理容師コースの生徒は鋏で佳代の髪を切りそろえていったのだった。最後に前髪を切りそろえると、生徒は満足したように言った。
「はい、こんな感じです
その一言と共に鏡を手渡された。
(…………)
自分で見た自分を見て佳代は衝撃を受けた。綺麗で可愛かったロングヘアーはすっかり無くなってしまい、うなじは虎刈り、眉毛と耳がむき出しのおかっぱ頭。


佳代はエロカワの美少女から、イモ女へと生まれ変わってしまった。
佳代はショックで泣きそうになった。すると、他の理容師コースの生徒が近づいてきた。
「まぁ、これでお金も貰えるんだからいいじゃん!」
「そうそう」
と他の生徒たちは口々に言ったが、佳代には慰めにはならなかった。
それどころか彼女の感情が爆発する。
「いいわけないじゃん! なんなのよ、これ!? なんでこうなるのよ!!もうこんなの……」
佳代は大声で泣いた。「あー、泣かないでよ。大丈夫だって。」
「なんでこんなことするのよ!これじゃ恥ずかしくて外に出られないわよ!」佳代は泣き叫んだ。理容師コースの生徒は困惑する。
「まぁ、確かに……これはひどいわね」
と一人が言った。すると、他の生徒たちも頷き始める。
「そうよ!どうしてくれるのぉぉ!!」
佳代はさらに叫んだ。そんな時、専門学校の校長が入ってきた。彼は教室の様子を見て驚いた様子だったが、すぐに冷静な表情に戻った。そして、生徒たちに向かって言った。
「皆さん、少し静かにしてください」
彼の言葉を聞いて生徒たちは少し静かになった。
「この事故は大変残念でしたね。でも、大丈夫ですから安心してください。」
校長は優しい口調で佳代をなだめた。しかし、その言葉には何の意味も感じられなかった。彼女は絶望していたからだ。彼女はただ泣くことしかできなかった。校長は生徒たちに向かって言った。
「みんなもショックなのは分かりますが、これ以上騒がないでくださいね。次の授業が始まりますから教室に行ってください」
生徒たちは校長の言葉を聞いて、渋々と教室を後にした。校長は佳代に近寄る。
「こんにちは。私は校長です。よろしければ、練習用として使ったウィッグを差し上げましょうか?」
佳代はしばらく考えていたが、他に方法は思いつかなかったため、彼の提案を受け入れることにした。「はい」と佳代は答えた。「わかりました。では、これを差し上げましょう」
と校長は佳代に御礼金10万円とセミロングのウィッグ渡した。佳代はウィッグを被り、自分の姿を見て少し安心感を覚えたが、それでも彼女の心は晴れなかった。彼女は肩を落とし、ゆっくりと学校を出たのだった。