東京・新宿歌舞伎町では、とある噂が拡がっていた。その噂とは、売り上げNo.1キャバ嬢の愛莉紗が引退する事だった。愛莉紗は、客からの指名が多く、リピーターも多かった為、新宿歌舞伎町での売り上げNo.1の座に君臨していたのだ。
その愛莉紗が引退をするという噂を聞き付けた常連客が、歌舞伎町へと来ていたのだ。そして、当の愛莉紗本人はと言うと……
「ねぇねぇ!本当に辞めちゃうの?」
「えぇ、本当ですよ」
「何で?この新宿歌舞伎町で1番人気なんだから勿体無いよ!」
「ん〜そうですね。確かに楽しかったですけど、最近新しい目標が出来まして……
それに、私より綺麗な人なんて山程居ますし」
「いやいや!愛莉紗さん以上の美人なんか居ないから!」
「そんな事ないですよ。それよりも、私なんかに構ってないで新しい人を探して下さいね?」
愛莉紗は常連客からの質問に対して嘘を付く事なく答えていた。そう、全て本心を話したのだ。この引退の裏にはとある理由があるのだが……

10年前、のちの愛莉紗となる、鮎原 梢は部活動であったバレーボールに熱中していた。
梢の高校は強豪校で女子バレー部全員の髪型は梢を含めて耳周りと後ろがスッキリと刈り上げられた長めの角刈り頭のだった。
上下関係が厳しく、先輩部員に出会えば大きい声で挨拶するのはもちろんのこと、合宿などでは先輩のコップの水が少なくなっていたら速やかに水を注ぐのもしなければならなかった。梢は理不尽な思いをする事も多々あったが、バレーが好きだったので頑張って身につけて来たのだ。
そして、梢が高校3年生になった時に全国大会へ出場を目指し、部員全員が張り切っていた。だが、梢はプレッシャーからかミスをしてしまい、全国大会に出場する事が叶わなかった。
梢のミスは相手校にとってチャンスだった為、勢いに乗り次々と点を取られていき、最終的に負けてしまったのだ。その敗北は、梢に強烈なトラウマを植え付けたのだ。
大学でも続けるつもりだったが、その事が原因で梢はバレーから遠ざかってしまった。

 

やがて高校を卒業し進学を試みるも何処も受からず浪人、気晴らしに新宿でふらふらしていた梢にある男が声をかける。
「君!私の店で働いてみないか?」
「えっ?私、ですか?」
「そうだ。君のような若い子は大歓迎だよ!」
その男はキャバクラのオーナーだったの
だ。
梢は大会後から髪を伸ばしていたのでベリーショートヘアー、目は大きな二重で、足が長く、アスリートにしては珍しく肌も綺麗だった。胸は小さく鼻は団子鼻だが、どちらかといえば美人の部類だった。
オーナーは梢の容姿を見て可能性を感じ、ぜひ働いて欲しいと声をかけたのだ。
最初はオーナーからの申し出に渋っていた梢だったが、試しにキャバクラでバイトをするうちに楽しくなっていった。
そして、キャバクラで働き始めてから3ヶ月が経った頃……
「お客様お待たせしました!」
「おっ!君が噂の愛莉紗ちゃんか!思ってたよりも美人で驚いたよ」
「ん〜ありがとうございます」
「いやいや本心だってば!」
「あははは……嬉しいです」
3ヶ月もすれば梢の髪はショートヘアーになっていた。浪人生の梢は、大学に入るかこのままキャバクラで働くか迷ったが、大学に入る目的も無かったので、キャバ嬢として働く事になったのだ。


そして、梢が働き始めて2年が経とうとした。
「愛莉紗ちゃん!指名が入ったから行ってね」
「はい!行ってきます。」

いつも通り接客をする梢、成人して飲酒は可能、髪は背中まで伸びておりキャバ嬢らしく染めてウェーブをかけていた。胸は豊胸手術をして大きくなっていた。「いらっしゃいませ。愛莉紗です」
「よろしく」
梢が接客する客は、40代前半で少しぽっちゃりしているサラリーマンだった。この客は梢を指名してよくお店に来ているのだ。そして、指名をしてくれる人なので、梢の売り上げに貢献してくれていた。
そんな客が来店してから1時間後……
「それでね愛莉紗ちゃん!その部下のミスで仕事が遅れてね、本当に迷惑な話なんだよ!」
「大変ですね……でも、部下のミスは上司である貴方がカバーしなきゃいけないんじゃないですか?」
「そうだよ!でも、部下がミスしたせいで1時間も残業になっちゃってさ」
「それは大変だったんですね……」
梢は客の空いたグラスにお酒を注ぎ、自然な相づちを打ちながら客の愚痴を聞いてあげた。
梢の気配り上手は厳しい部活動の賜物だった。綺麗な容姿も相まってか、梢の接客は口コミで広がり指名する客が増えてきた。
そして、梢が働き始めて3年が経つと……
「愛莉紗ちゃん!指名が入ったから行ってね!」
「はい!行ってきます。」
この頃になると、梢は店No.1の座を勝ち取っていた。そして髪は腰まであるゴージャスなロングヘアーで、鼻筋は整形手術で細くなっていた。「いらっしゃいませ。愛莉紗です」
「愛莉紗さん!今日も綺麗だね!」
「ありがとうございます。こちらへどうぞ」梢は席を案内し、
相手のグラスに酒を注いだ。

「愛莉紗ちゃんは本当に綺麗だね〜」
「そんな事ありませんよ」梢は謙遜しながらも、客のグラスに酒を注ぎ続けた。「今日も来てくれてありがとうね」

「いやいや!こんな綺麗な子が接客してくれるんだ。来ない訳にはいかないさ!」

客と会話をしながら仕事をこなす梢は、この仕事が楽しくなっていた。高校時代の梢の夢は、バレーで日本代表になることだった、この夢は叶わなかったが、今度はキャバ嬢として働く事になり、新宿歌舞伎町No.1のキャバ嬢になる事だった。梢は目標が定まった事でモチベーションが上がり、仕事により一層打ち込んだ。梢を指名してくる客も増えて、給料も上がった。

 

 


それから、3年が経とうとしていたある日……「愛莉紗ちゃん!指名が入ったから行ってね」
「はい!行ってきます。」梢はいつもの様に接客を始めた。
「新宿歌舞伎町No.1の愛莉紗さん!今日も綺麗だね!」
(えっ何っ誰なのこの人……)梢は少し戸惑った。
いつものお客様と違うからだ。
「あっすみません…初めまして!愛莉紗さん!」
「どうも!初めまして……」梢は警戒していた。
「僕は、ナイトナビ編集部の金井です。よろしくね!」「えっ……ナイトナビ編集部?」
(嘘っ!どうして……)梢は動揺を隠せなかった。
「愛莉紗さん!まずは乾杯しようか!なぜなら愛莉紗さん、新宿歌舞伎町で売り上げNo.1になったんだから。」金井と名乗る男は、慣れた手付きでグラスに氷とウイスキーを入れ出した。
「あっ!ありがとうございます。」梢は少し動揺しながら答えた。「乾杯!愛莉紗さん!」二人はグラスを鳴らした。
「愛莉紗さん!ナイトナビ編集部って知ってる?」金井はいきなり、質問してきた。
「いえ……知らないです……」梢は少し驚きながら答えた。
「そっか!実はねナイトナビっていうのは、キャバクラの口コミやランキングを配信してるサイトなんだ!」金井は得意げに話した。
「へぇーそうなんですか?知らなかったです……」梢は少し戸惑った。
「うん!知らないのが普通だよ!でも、売り上げNo.1になったからには、ナイトナビは愛莉紗さんを取材したいって言うからさ!」
「えっ!それってどう言う……」
「うん!だから、新宿歌舞伎町で売り上げNo.1になった愛莉紗さんを、ナイトナビに載せたいって言ってるの!」
金井はドヤ顔で答えた。
「えっと……本当に取材させて貰えるんですか?」
「うん!もちろん!」金井は当然の様に答えた。
「ありがとうございます!」梢は少し安心した様に言った。
それから、金井は梢と少し会話をして帰った。
次の出勤日に、愛莉紗は店長に呼び出された。
「愛莉紗ちゃん!ナイトナビっていう雑誌知ってる?」
「はい!噂には聞いております!」梢は答えた。
「そのナイトナビが取材したいって言ってるんだけど……大丈夫?」店長は心配そうに尋ねた。
「大丈夫です!」梢は即答した。
「本当に大丈夫?ナイトナビだよ?」店長は念を押して聞いた。
「はい!大丈夫です!」梢は少し笑いながら答えた。
それから、取材当日……「愛莉紗さん!準備して」
「はーい!」梢は元気よく返事をした。
(いよいよ始まるんだ!)と胸を躍らせていた。
梢が歌舞伎町のキャバクラに向かうと、多くの記者やカメラマンがいた。「おはようございます!ナイトナビ編集部の金井と申します!」
「愛莉紗です。今日はよろしくお願いします。」梢は笑顔で挨拶をした。
「では、早速取材を始めさせていただきます!」金井が元気よく言った。
それから、インタビューが始まり記者やカメラマンから色々と質問された。

「この仕事はいつから始めたのですか?」と一人の記者が尋ねた。
(この仕事は……)と梢は少し考えた後答えた。「高校時代から、この仕事に憧れていたので、高校卒業後すぐに始めました!」
「売り上げNo.1になれた要因はなんだと思いますか?」ともう一人の記者が尋ねた。
(私の成功要因は……)梢は少し考え答えた。
「私は、スタッフにも恵まれていて、毎日楽しく仕事ができているからだと思います!」
「お金に困ることはないと思いますが、どうやったら稼げるようになるのですか?」
「私は、常にお客様のおもてなしを心がけています。お客様が楽しく過ごせるように工夫しています。」と梢は答えた。
「今後の目標は何ですか?」一人の記者が尋ねた。
(私の目標は……)梢は少し間を置いて答えた。「よりお客様が楽しく過ごせるようにします。」
「最後に、読者に一言お願いします。」と一人の記者が質問した。
「皆さんのおかげで、私はここまでこれました。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします!」梢は満面の笑顔で答えた。
取材後……「愛莉紗ちゃん!お疲れ様」店長が労いの言葉をかけた。「ありがとうございます。」梢は丁寧にお礼を言った。
「愛莉紗さん!取材は上手くいったみたいだね!」金井が話しかけてきた。
「はい!お陰様で、上手くいきました!」と梢は笑顔で答えた。
それから数日後、ナイトナビに取材内容が載った。
その記事にはこう書かれていた。------新宿歌舞伎町No.1キャバ嬢!愛莉紗さんが語る成功の秘訣とは!?------


梢は長年の夢であったキャバ嬢の頂点にたったのだった。
ナイトナビの記事が出回ってから、さらに梢の人気に拍車が掛かった。口コミが広がり、新規客が増え指名も増えていった。梢は毎日忙しく働きながらも充実した日々を送っていた。
プライベートでも、高層マンションにすみ、部屋の中は客からもらったブランド品で溢れていた。梢は誰もが憧れる生活を送っていた。そんなある日……

梢は仕事から帰った後、テレビをつけた。
テレビからは、あるニュースが流れていた。---バレー女子日本代表、キャプテン早川 緑---
「えっ!」梢は驚いた。
早川は梢と高校の同級生で、梢の親友だった。梢と同じバレー部に入っていたが、体が小さく、補欠ではなかったもののレギュラーではなかった。
「どうして……」梢は動揺した。
テレビから早川のインタビューが聞こえた。「早川さん。日本代表に選ばれた意気込みは?」と記者が尋ねた。
「はい!私の役割は、チームの雰囲気を明るくし、チームを引っ張っていくことです!頑張ります!」と早川は答えた。
「バレーの五輪で金メダルは取れると思いますか?」別の記者が質問した。
「いえ……オリンピックのような大きな大会で結果を残すのは難しいです。私は常にチャレンジャーとして全力で挑みたいと思います!」と早川は答えた。
「よろしくお願いします!」そう言って、番組は次のコーナーに移った。
「なんで……」梢は動揺が止まらなかった。

 

(私はバレーをやめた。そして、キャバ嬢として成功した……でも、早川さんはずっとバレーを続けていて日本代表に選ばれている……)梢は複雑な気持ちだった。(なんで……なんで……私はバレーをやめたの?)梢は自分を責めた。その夜、梢は眠れなかった。

 

「愛莉紗さん!指名が入りました」店長の声が店内に響いている。

「はい」と私は答えた。

(今は仕事に集中しなきゃ……)そうして、梢は気持ちを切り替えて接客を続けた。

その日の帰宅後、梢はスマホで調べていた。

バレー社会人選手募集に目が止まった。

(私はもう一度バレーをやりたいかもしれない……)

そう思い、梢は練習着やシューズを買い揃えた。次の日から、梢は体育館を借りて自主練習に打ち込んだ。

 

長年のブランクから最初から上手くいかなかったが、徐々に回復していった。梢にとって幸せな時間だった。(私……バレーが好きだな)梢は改めて思った。

 

「愛莉紗さん!お疲れ様。」店長が声を掛けてきた。

「お疲れ様です!」梢は笑顔で答えたが少し戸惑いながら、

「店長少しお話が…」

と梢は切り出した。

「うん?どうしたの?」

「実は、お店を辞めたいんですけど……」梢は少し自信なさげに答えた。

「えっ!本当に?」店長は動揺を隠せなかった。「はい……実は……」と梢が言いかけると、店長は梢の手を握ってきた。「うん!分かった。愛莉紗さんが決めた事だから私は反対しないよ」そう言って店長は微笑んだ。

それから数日後……「愛莉紗さん!お疲れ様」と店長が声を掛けてきた。

「店長……お世話になりました。」梢は深々とお辞儀をした。

「こちらこそ、今までありがとう!」と言って店長は笑顔で答えた。

長きに渡って新宿歌舞伎町のトップに君臨していた愛莉紗は今日を持って引退した。

 

梢はとある床屋に訪れた。高校時代に刈り上げショートヘアーにしてもらっていた床屋だった。「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか?」
「あっ、予約していた者です」
「こちらのお席にどうぞ」
梢は案内された席へ座り

「あっ、あの……」
「はい、どうしました?」
「バレー部員の刈り上げショートヘアーにして下さい。髪も黒く染めてください」
「こ…こんな長い髪を刈り上げにしてしまうのですか!?」
「はい、覚悟を決めて来ました」
店員は梢の注文を見て驚いていたが、梢の覚悟を確認し、バリカンのスイッチをいれた。
ヴィィィィィイン ジャリジャリジャリ
バリカンが通ったところは青白く刈り上げられていた。剥ぎ取られた長い髪が床に落ちる。

落ちた髪を見つめながらキャバクラで働いていた思い出が走馬灯のように蘇り、梢の目に涙が溜まっていた。
「お客様……大丈夫ですか?辛いのであれば辞めて頂いても大丈夫です……」
「大丈夫です!続けさせてください!」

梢は歯を食いしばりながら答えた。その姿を見た店員はそれ以上何も言う事な梢の襟足にバリカンを入れた。

ヴィィィィィイン ジャリジャリジャリ

梢はその瞬間にキャバ嬢の思い出が走馬灯のようにフラッシュバックし叫びそうになったが、必死に耐えていた。
バリカンを使った後はハサミで短く切り揃え、サイドも刈り上げにバリカンを入れていた。

ゴホッゴホッ

梢は完全に泣いていた、大粒の涙を流しながら咳もしてしまった。
「お客様……大丈夫ですか?もし辛くて辞められないのであれば辞めて頂いても大丈夫ですからね」
「大丈夫ですから…続けて下さい…」

店主はバリカンを入念に這わせた後、残ったトップの髪を四角くなるように切った。

店主はバリカンを置き、シェービングクリームを手に取るとそれを梢のもみあげとうなじに塗った。「あぁん…暖かい……」
あまりの気持ちよさに声を上げるが、すぐに店主の手により頭を固定されてしまう。そして彼女のキワから生える髪を剃り始めた。「あぁん…」
首筋から刃が入りぞわぞわとした感覚が梢を襲う。
もみあげはテクノカットに真っ直ぐ剃り落とし、襟足は首筋に合わせてM字に剃り落とした。

鏡を見た梢は、ゴージャスなロングヘアーから大変身を遂げていた。その姿は高校時代の髪型である、黒髪で耳周りと後ろが青々と刈り上げられ前髪は額に少しかかるぐらいの長めの角刈りとなっていた。

これで常連客も愛莉紗だと気づかない。

「お客様、お疲れ様でした、髪をお渡しします。」

店主は切られた長い髪束を梢に渡した。
「ありがとうございました……」
梢は店を出て家路に着いた。
そして、マンションに着き部屋に入ると、真っ先に服を脱いで洗面台へ向い、鏡で自分の姿を見たのだ。
高校時代の髪型に戻ったが、完全に当時の姿ではなかった。鼻筋も細く、胸が大きくなっていた。

「あぁ……やっぱし、あの時が一番楽しかったな……」
梢は、キャバ嬢を辞めた後悔の気持ちが溢れてしまった。

だが後戻りはできない。梢は刈り上げた理由はあの世界に戻らない決意だった。

 

3ヶ月後、梢は社会人向けのバレーチームにて練習していた。
髪型は角刈りを維持しており、チームメイトからは、刈り上げ部分をジョリジョリ撫でられたりする事もあるが、梢は頑なにこの髪型を維持していた。
そして、社会人バレー大会が始まり、梢は全国大会へ向け必死にプレーしていた。
そして、大会は終わり梢率いるチームは全国3位の結果を収めたのだ。その喜びをチームメイトと分かち合っていた。
梢はついにバレーボールを辞めた過去を乗り越えていたのだった。

1ヶ月後、梢は新宿歌舞伎町の美容院に来ていた。
「お久しぶりです梢様、いや…愛莉紗様、復帰をお待ちしておりました」
「お久しぶりです。またお世話になります」
「では、愛莉紗様の要望通りに仕上げてます。準備ができましたら、お呼びください」
そう言うと美容師は奥の部屋に入った。
梢は椅子に座り、ドレスに着替え化粧をした。
ドレスは胸元大きく開き、背中も露出しており、スカートもスリットが長く入っていた。

化粧もアイラインを太く強調し、目を大きく見せていた。
刈り上げ頭以外はキャバ嬢の時の姿だった。
それから梢は美容師を呼び出した。
美容師は両手に大きな箱を持ってきた。その箱を開くと引退前の髪型を再現した、ウィッグが入っていた。ウィッグは梢が断髪した時に床屋の店主からもらった髪が使われていたものだった。

美容師は箱からウィッグを取り出し、梢に被せた。透明で肌に貼り付く構造の生え際部分は青々とした刈り上げ部分を覆った。
完全に外見がキャバ嬢時代に戻った梢に美容師が、
「愛莉紗様、とても綺麗ですよ」
「はい……ありがとうございました」梢は再びキャバクラへ戻る事になったのだった……
美容院を後にし、愛莉紗は勤めていたキャバクラへ出勤したのだった。
「皆さんお久しぶりです」
『愛莉紗さん復帰おめでとうございます!!』
「ありがとうございます」
『あの……キャバ嬢を復帰した理由って聞いてもいいですか?』
「そうですね……皆さんに最高の思い出を作ってあげたいからですかね……」

梢にとってキャバ嬢愛莉紗はもう一人の自分であり誇りだった。
昼は刈り上げ頭でバレー選手の梢であり、夜はロングヘアーでキャバ嬢の愛莉紗なのだ。